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本に呼ばれる技術

世の中には、面白い本が沢山ある。しかも、タイトルや著者すら知らない、けれども超面白い本がある。

amazonが薦めてくるのもいいけれど、たいていはメジャーで無難なヤツが多い。そして、そういう作品は、読んでいるか、少なくともタイトルぐらいは知ってるはず。話題作とか人気作は、目や耳に入ってくるから。

そうじゃなく、もっと<私>に寄った、私好みのヤツがいい。それも、私が見たことも聞いたことも無いようなスゴいやつ。そういう作品があるということは知っている。偶然に出会った未知の作品に、心撃たれることがあったから。

人はそれを、「本に呼ばれる」と言う。

書店を物色していたり、だらだらネットを見てるとき、ふと目に留まり、手に取って、「コレだ!」と直感する。ほとんど運みたいなものだ。本好きが行きつけの書店に通うのは、本が好きだからだけでなく、「本に呼ばれる」確率を増やすためだと思う。

では、どうすればその確率を増やせるか?

その具体的なやり方は、私の本に書いてある(PR)。ここでは、なかでも最も使える「本を探すのではなく人を探す」方法を紹介する。

使う本は一冊だけ、『本棚探偵』という本だ。

『本棚探偵』の特徴

『本棚探偵』とは、作家・編集者・書評家など、読書家たちの「本棚」を紹介する本だ。いわば「本の本」になる。

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ユニークなのは、書棚を「写真」ではなく、「イラスト」で表現している点だ。

ふつう、このテのものは本棚を撮影した画像になる。

本が沢山あるほど、一枚に収まりきらず、引いて撮ることになり、背表紙の文字が小さくて読みづらくなる。「壁一面の書棚」の写真だと、文字は潰れてしまい、蔵書を知る愉しみが無くなってしまう。

一方、本書では、書棚はイラストで表現されている。引いた図では本棚がどれくらいの大きさで、どんな感じの本が並んでいるかが分かる。一方、気になる棚はクローズアップして、そのタイトルが分かる形で表現されている。

「書棚の一部分だけのイラストだと、全部が見えない」と、ツッコミたくなる。だが、各人のインタビューによると、書棚は基本的にカオス状態で、整理されているものは少ない。床、ワゴン、階段、トイレに積んでるのを、かろうじて書棚に収めている場合が多い。

そんなカオスの中で、比較的「まとも」なものがイラスト化されているといえる。本棚を公開する側も、全部だと人に見せられる

人から本を探す

お気に入りの作家が読んでいる本、気になるでしょ?

本書では、総勢37人の書棚を眺めることができる。

今村昌弘(小説家)
あさのあつこ(小説家)
宇佐美まこと(小説家)
加納愛子(お笑い芸人)
川内有緒(ノンフィクション作家)
結城真一郎(小説家)
安田峰俊(ノンフィクションライター)
若松英輔(批評家)
木村紅美(小説家)
藤井太洋(SF作家)
酒井順子(エッセイスト)
モモコグミカンパニー(作家)
王谷晶(小説家)
池波正太郎(小説家)
荻上チキ(ジャーナリスト)
榊原紘(編集者)
永井紗耶子(小説家)
春日太一(映画史研究家)
中村憲剛(元サッカー選手)
小川仁志(哲学者)
佐々木チワワ(ライター)
澤村伊智(小説家)
柴崎友香(小説家)
長井短(俳優)
中山祐次郎(医師・小説家)
背筋(小説家)
室井滋(俳優)
牧野伊三夫(画家)
朝倉かすみ(小説家)
一木けい(小説家)
町屋良平(小説家)
伊藤亜和(エッセイスト)
青葉市子(シンガーソングライター)
岩崎う大(お笑い芸人)
村井理子(翻訳家・エッセイスト)
石井千湖(書評家)
飛鳥部勝則(小説家)

知っている作家が意外な作品を読んでいたり、逆に、知らない人が私の好きな本を持っていたりする。

例えば、『オービタル・クラウド』で日本SF大賞・星雲賞を獲った藤井大洋の本棚。SF作家だからハヤカワ系が充実しているのは予想できるとして、レイチェル・カーソン『沈黙の春』や島尾敏雄『死の棘』、 メルヴィル『白鯨』があるのがちょっと意外だった。涼宮ハルヒの「消失」だけあるのも良き。

この本棚から、クリストファー・プリースト『魔法』やドストエフスキー『二重人格』が気になる。書店で目にしたことはあったかもしれないが、「藤井大洋の本棚」という視点で気になってくる。

あるいは、哲学者・小川仁志の本棚。商社マン、フリーター、公務員、プリンストン大学研究員という異色の経歴で、非常に多作家だ。その思索の源泉ともいえる棚がこちら。

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古典や哲学者、思想家の語録や名言をキーワードとして、自分の本のテーマに広げるという。いわば種本の書棚になる。早速『思想家たちの100の名言』をゲットしてみた。ブログのネタに困ったら活用してみよう。

本から人を探す

次は、自分の知っている作品から、趣味の合いそうな人を探す。

冒頭に紹介した、「柴崎友香の本棚」が、私の趣味に近い。

ガルシア=マルケスなら『百年の孤独』ではなく『族長の秋』を推しているところや、漱石の隣にサン=テグジュペリがあるところ。雨月物語とカフカとラテンアメリカ文学の短編が仲良く並んでいるのも好きだし、ゼーバルト・コレクションとボラーニョ・コレクションがほぼ揃っているのも素敵。彼女の支離滅裂さには方向性があり、そのベクトルが私と同じ方向を向いている感じがする。

柴崎友香の作品に手を出してみよう(『寝ても覚めても』あたりから)。また、彼女の書棚にあるソルニット『ウォークス』、平石貴樹編『アメリカ短編ベスト10』も読みたい。

あと、芸人の「岩崎う大の本棚」が面白かった。

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本棚は1台だけなのに、そこに詰まっている蔵書の選書が好き。ジュースキント『香水』とテッド・チャン『あなたの人生の物語』が並んでいるのが良いし、カポーティなら『冷血』、カズオ・イシグロなら『日の名残り』と、選び方が私と似ている。何よりも、新井英樹『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』全巻を揃えており何度も読み返しているのが好き。

趣味が合いそうなので、この人が推しているトニ・モリスン『ソロモンの歌』に手を出してみよう。あと、演出家・劇作家としても活動しているようなので、『サラリーマン大喜利』を読んでみよう。

あと、趣味全開の「王谷晶の本棚」が良き。ジェイムズ・エルロイやチャック・パラニューク、テネシー・ウィリアムズを推している時点で私のアンテナと重なる。

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下段の真ん中あたりにある、平山夢明『ダイナー』が、「岩崎う大の本棚」にもあったことを指摘したい。気になる人の本棚にある本のANDを取って、重なるのであれば、それは間違いなく面白いヤツになる。ちなみにこれ、オフ会で強力に薦められ、積読山に刺さっているヤツでもある。

周波数の近い人の本棚を眺めていると、「本に呼ばれる」可能性は格段に上がる。面白い本に出合うのは偶然から必然になる。

本を介して人を知り、人を通じて本に会う。これこそが、私の知らない(けれど)面白い本を見つける極意だ。

そしてこの極意をタイトルにしたのがこのブログになる。


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コメント

本棚探偵おもしろいですよねー。
イラストで本棚というと、内澤旬子がたしか書斎の本を書いてた気がするけど、これはカラーでだいぶ似せてて楽しみました。
本は1冊で完結しないで、ながいチェーンのようにつながっていくと感じてます。
1冊読むと5冊くらい読みたい本が増える。
ほんとこまっちゃう。

投稿: 美崎薫 | 2026.03.08 17:55

>>美崎薫さん

『センセイの書斎』でしょうかね。これも人ン家を覗き見する感覚で楽しめるやつ。読むと読みたい本が増えるやつですね!

投稿: | 2026.03.09 11:46

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