「自分は大丈夫」という人に『だます技術』
大学を卒業したてのころ、詐欺にひっかかった。
手口はこうだ。
まず、私宛に郵便が来る。
- あなたの年金保険料に未納があり、受給できなくなる
- 〇月✕日までに、未納分(4万円ぐらい)を振込め
- 不明点は、XX-XXX-XXXX(担当者名)まで連絡すべし
宛先の住所氏名は合ってるし、ちょうど親から「4月から社会人なんだから、保険料は自分で払え」と言われたばかりだった。さらに、引っ越しの準備で切羽詰まっていたので、「早く振り込まないと給付資格が失われる」と焦って振り込んでしまった。
なぜ詐欺なのか分かったのかというと、ホンモノの督促状が来たから。引っ越しのドタバタで郵便物や振込控えは失われており、あきらめるしかなかった。
4万円の授業料は高くついたが、このおかげで、「自分はそんなものにひっかかるわけない」と思っていた人生から変わった。
つまり、私の人生には、「詐欺にひっかかる」という選択肢があると思うようになった。そのため、郵便物、メール、美味しい話、個人情報の入力、口座決済、明細や控えなどを、「騙されているかも?」という目でチェックするのが自然になった。
もし、あなたの人生において「詐欺にひっかかる」ことがあるならば、それはどのような選択肢になるのかを解説したのが『だます技術』だ。
- AIで音声や顔を変えて有名な投資家になりすます
- 「サッカーの代表試合をリアルタイムで見たいのに間に合わない人」を狙う
- 期間限定・場所指定で「お得なチラシ」と思わせる
- ワンタイムパスワードでも騙せるやり方
本書には、24の詐欺の手口が紹介されている。エッセンスだけ抜き出しているから、「こんなのに騙されるわけがない」と思うかもしれない。だが、リアルではもっと巧妙で複雑で、様々なテクを組み合わせて仕掛けてくる。
あるいは「騙されるほどカネ持ってないし」と思うかもしれない。だが、大金ではなく僅かな金額を少しずつ騙し取られていくこともある。「騙されている?」という目で見ないと分からないようにカモフラージュしてくる。
さらには、あなたではなく家族が狙われることがある。どんなにあなたが注意深く気を付けていても、家族から攻略されるなら、防ぎようがない。
そんな現実に、予防保全として本書が役に立つだろう。おそらく、本書で紹介される詐欺の手口はニュース等で知っていることが多いかもしれぬ。だが、騙される側がどのように考えているかは、発見があるはずだ。
生成AIやスマホアプリといった、現代的なものもあるが、基本的な詐欺の手口は変わらない。詐欺チームは、あなたの感情に訴えかけ、認知を歪ませ、判断を誤らせるプロフェッショナル集団だ。巻頭に折り込みがあって、24の詐欺の例が書かれている。キリトリ線で切り取って、家族の目につくところに貼るだけでも、魔除けになるかもしれぬ。
「詐欺にひっかかる」という選択肢が人生に現れたとき、「これ進研ゼミでやった」と言えるようになりたい。

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