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「若い頃の自分に教えたいこと」を集めた名言集『他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え』

他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え

40~60代のおっさん達に、「もし若い頃の自分にアドバイスができるなら、何を伝える?」と聞きまくって集めた名言集。

聞いた場所も、東京なら赤羽・上野、大阪なら新世界、名古屋なら栄の飲み屋街に限定してる。出てきた答えは、下品で下世話で下半身ネタだらけだけれど、心底その通り!と言いたくなる名言ばかり。

誰も教えてくれなかったけれど、長いこと生きてきて、ようやく身に沁みて分かった、何気ない一言が集められている。職場呑みの宴席とか、独りで入った飲み屋のカウンターで、こっそり教わる人生の教訓だ。

わかる人には痛いほどわかるやつで、分からない人は、きっと、幸せな人生だと言えるだろう。

人は、傷ついた分だけ、性格が悪くなる

ラブソングとかで、「傷ついた分だけ、人は優しくなれる」というフレーズがある。手垢にまみれまくっているが、これはウソ。

あんなの心地いいだけで、タワゴトです。真実は真逆で、傷ついた分だけ、性格が悪くなる―――という会社員(40代)の名言。

これは分かる。相手のことを思いやるために必要なのは想像力。「これ言ったらアカンなぁ」という言葉や、「こう伝えると呑んでもらえそうかも」という言い方は、コミュニケーションする相手がどのように感じるかを想像できる能力に尽きる。

そして、想像力と、「自分がいかに傷ついたか」は、これっぽっちも関係がない。この会社員さんの義理の兄がまさにそれで、かなり酷い目に遭って、性格がねじ曲がったとのこと。

イヤな目に遭っても、優しくなれるのは聖人君子であって、普通の人はイヤな奴になるのがオチだそうな。

不安はほとんど的中しない

ほんこれ。

私自身がそうだった。仕事を進めていくときに、「こうなったらどうしよう?」「ああなったら終わりだ」とあれこれ心配事が噴出してきて、不安に押しつぶされそうになった。

特に、夜寝る時がサイアクで、悶々と悩むあまり寝られなかったり、ムリヤリ眠るために深酒したりしていた(もちろん翌日は頭が働かない)。今から考えるとバカなことをしたと思う。

東京の公務員のおっさんはこう言う。

心配性の人に教えてあげたいのは、今まで「あー、やっぱり不安が的中した」って経験がありますか?雨が降るとか転ぶとか、小さいことではなく、重病になるとか、予期せぬトラブルになるとか、ないでしょう?どうせ当たらないのなら、不安で眠れないなんて、もったいないですよ。寝なさい。

私が若いころ、こう言ってくれる人は居なかった。

なので、「悩みごとメモ」を1年間記録して、翌年、振り返ってみたら、見事に心配は的中していなかったことを確かめた。ほぼ日手帳を使った具体的なやり方は、「ITエンジニアのメンタルを守る4冊」に書いたので、試してみるといい。

人生の最後の楽しみは美食だから歯だけは大事にしろ

最近、わりと、ひしひしと感じているのがこれ。

60代の自営業のおっさんに言わせると、セックスの愉しみや、酒を呑んで騒ぐ楽しみも、そのうち飽きて、面倒くさくなる。

早い人だと40代で、性欲は急速になくなっていき、釣りとか旅行とか、そういう趣味みたいなものも興味が失せていく。もちろん人によりけりだけれども、ワクワクするものが減っていくのはホントのこと。

それでも、「食事が楽しい」という気持ちは残っていく。

そうすると、食に対するモチベーションは、(他の趣味とは違って)相対的に高くなっていく。入れ歯になると不便になるだけでなく、食事がまずくなる。老いてくると、たくさん食べられなくなる。本当に美味しいものを、少しだけ食べる。これが美食の喜びなんだけれど、これが楽しめなくなるのは悲しい。

めっちゃ分かる。

40歳で吉牛特盛が食いきれなくなって、若くないことを知ったし、天下一品こってりで胸焼けするようになって、老いていることを知った。ビールはロング缶を買わなくなって久しい。歯と胃腸と肝臓は大事にして、できるだけ長いこと「美味しい」を維持していかないと。

女は、お前の意見など、求めてはいない

これも分かる。若かりし頃の自分に、100回ぐらい言いたい。

女から相談をもちかけられたとき、どのように対応するのがベストか?

 1. 相談された内容に応じて、適切なアドバイスをする

 2. ひたすら話を聞く(アドバイスしてはいけない)

この記事を読む方なら、正解は言うまでもない。

だが、私は不正解ばかりを選んできた。もっと言うなら、今でも嫁様の話に不正解を選ぶときがある(あれほど酷い目に遭ってきたにも関わらず!)。ひょっとすると、私は、適切な解答をしようとするあまり、学習能力が無いバカかもしれぬ。

40歳の会社員曰く、

女としょうもない口喧嘩をする原因は、女の話に「そうだね」が言えない自分にある。昔の俺もそうだったんだけど、女の質問にマジで答えてはダメなの。例えば女が「あの映画、面白かったよね」って聞いてきたら、「あの映画はああでこうで」と返しちゃダメなの。女は別にこっちの意見など求めていないのだから、単に同意してほしいだけなんだから、いい関係と続けたいなら、「そうだね」を貫くべし。

これ、ハタチぐらいの私に聞かせたかった。

ただし、これは女に限らず、人間全般に言えるかもしれぬ。

弁護士や医者ではなく、他ならぬ私に「相談したい」というのであれば、そこに求めているものは、専門的なアドバイスではない。「相談する」ことそのものが、したいことなんだ。

「いま抱えているものを吐き出すことで、ラクになりたい」という動機かもしれないし、「モヤモヤを言葉にすることで、少しは客観視したい」のかもしれない。「私というサンドバックを相手に言葉をぶつけて反応を確かめたい」もある。

そこで求められているのは、適切なアドバイス云々というよりも、いい塩梅での相槌とか、一通り聞いた後の短いコメント程度に過ぎない。話すのでいっぱいいっぱいなので、サンドバッグの話なんぞ聞いちゃいないのが真実だろう。そしてこれは、女も男も関係ないはずだ。

そして、どうしても「適切なアドバイス」がしたいのであれば、それは、話を聞いているその場ではなく、後日にしたほうが吉だろう。

「〇〇って、アナタと似てる」という女は、脈あり

これは知ってた。だが、知らない男がいるかもしれないので、念のため書いておく。40代会社員の名言だ。

女の知り合いから「〇〇てアナタと似てるよね?」って言われた経験ない? 別に芸能人だけじゃなくて、絵画に描かれてる人物とか、アニメのキャラとかなんでもいいんだけど。もしそういう経験があるのなら、そのコ、かなりの確率でキミに好意を持ってるよ。

事実として知っていたけれど、この40代会社員の方は、その理由まで説明してくれる。

そのコは誰かの顔を見て、キミの顔を連想したことになる。これは、日ごろから「キミの顔」を意識していないと、そういう連想に至らない。

そして、最も重要なことに、実際はその〇〇〇とキミが似ていなかったときには、ほぼ確実に惚れられていると言える。なぜなら、キミのことを強く意識しているだけに、そんなに似ていなくても、似ているようにみられているから……という理屈だ。

これ、「流れ星が消えるまでに願い事を3回唱えると叶う」と通じるものがある。

流れ星が輝くのは一瞬で、「あっ流れ星!」で終わってしまうくらい短い。でも、常日頃から願い事を考えているのであれば、そんな一瞬でも間に合うだろう。そして、それくらい片時も忘れず強く願っているのであれば、その実現方法も色々と考えるだろうし、いずれ自分のチカラで叶えてしまう……というやつ。

あるいは、ルミネの宣伝コピーの「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う」にも近いかも。(女性が)服を選ぶときに、誰かのことを思い浮かべるということは、その人のことが頭の片隅にあるわけで、「服を選ぶ」という自分の好みを反映する瞬間に、片隅から出てくるヒトは本命なのだ。

こんな感じで、飲み屋のオッサンの半分グチ、半分自分に言い聞かせの名言(迷言?)が並んでいる。

正直「?」となるようなものもあるけれど、そのオッサンの半生を知ると、なるほどな、とうなずきたくなる。「他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え」なんてまさにそう。20代から30代にかけて、周りが急に「結婚しました」とか「彼女ができました」とか言い出して、ちょっと孤独を感じた夜は、牛丼を腹いっぱい食べるといい、というアドバイスだ。

  • 贅沢して、遊ぶべきは、老後じゃなくて今
  • ハメ撮りする際は、自分を映しても、しゃべっても、いけない
  • ローションオナニーは、やめておけ
  • 合コンで狙うのは「バッグぱんぱん女」
  • 巨乳は、すぐに、飽きる

人生を通じて学んだオッサンの箴言を見ていると、私も何か言いたくなる。どこにも書いて無さそうで、若い人によく言っているのは、銀行口座の話だな。

入社ほやほやの若い連中に、必ず伝えているのは、「給料の振込先の銀行は一生つきあうつもりで選べ。そして変えるな」というやつ。

なぜなら毎月の振込実績が、その銀行からカネを借りるときの評価基準になるから。家なり子の教育なり親の介護なり、ローンを組むときが必ず来るから。これ、『ナニワ金融道』で教わったけれど、同じことを先輩から教わった(入社ほやほやの頃)。

聖人君子や偉人たちの名言集よりも、こっちのほうがしっくりとクる。タイムマシンが発明されたら、若いときの自分に渡したい名言集。

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