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ファンタジーの最高峰『氷と炎の歌』からテイラー・スウィフトの泣けるラブソング「Death By A Thousand Cuts」まで、4年ぶりにオフ会したら、みんなのお薦めが積み上がった

推しの作品を持ち寄って、まったり熱く語り合うオフ会、それがスゴ本オフ。

本に限らず、映画や音楽、ゲームや動画、なんでもあり。なぜ好きか、どう好きか、その作品が自分をどんな風に変えたのか、気のすむまで語り尽くす。

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SF、愛、ホラー、お金、食など、その時その時のテーマがあって、そのテーマに沿ったお薦めならなんでもOKになる(テーマ一覧)。今回は4年ぶりの開催ということで、「久しぶりにお薦めしたい作品」、要するにノンテーマで集まった。

推しへの熱量にアテられて、思わずこっちも身を乗り出す。知らない作品を身近に感じ、思わず手に取って見たくなる。自分のアンテナがいかに狭いかを思い知る。読みたい本、観たい映画、聴きたい音楽、行きたい展覧会ばかりで、次のアクションへとつながってくる。

作品を知るというよりも、行動(範囲)を広げるオフ会なのだ。

渋谷にあるHENNGEさんのラウンジをお借りして、30人で4時間、たっぷり語り合ったので、その一部をここで紹介する。実況ツイートは[togetter]にまとめた。

徹夜しても絶対に終わらない作品

まず私から。

あまりの面白さに「寝食を忘れる」という言葉があるが、徹夜しても絶対に終わらない作品を2つ紹介した。

ひとつはジョージ・R・R・マーティン『氷と炎の歌』だ。ファンタジーの皮を被った冒険活劇であり青春&恋愛小説であり、歴史・紀行文学であり、陰謀と戦争が詰まった傑作になる。いろいろ読んできたが、ファンタジーの最高傑作と断言していい。

気を付けるべきは、作者は物語を面白くするなら何でもする。エログロなんでもあり、平気で読み手の心を折りに来るので、情緒がもみくちゃにされる読書になる。「ゲーム・オブ・スローンズ」というドラマの原作でもある。詳しくは [ここ] に書いたが、熱く語らせてもらう。ちなみに邦訳されている12巻を放流(プレゼント)した。

もうひとつはSwitchのゲーム『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザキング』なり。

これも化け物レベルの面白さで、いつまでやっても、どこまでやっても終わることが無い傑作なり。魔物が蔓延る王国で、行方不明のゼルダ姫を探さなければならないのに、しない。代わりに、カブトムシを探したりトンボを捕ったり、宝石を掘り出したり料理をしたり、地底や天空を探索したり、困っている人を助けたりするのに忙しい。ゼルダ姫を放置してひたすらハイラルで遊ぶ、そういうゲームなり。

音読で実践する独学大全

ヨシオカさんが紹介する、『独学大全』の実践もスゴい。

学ぶことで人生を変える、いわば「独学の百科事典」ともいうべきスゴ本で、中でも第12章の「読む」にブッ飛んだという。60歳を過ぎて、本の読み方なんて変わるはずがないと思いきや、思いっきり変わった。

この「読む」という章に、13通りの読み方が紹介してあり、「刻読」や「指読」など、聞いたこともないものもあった。面白い、スゲーと思いながら、自分でできそうな「音読」を実践してみた。

ちょうどコロナが広まり始めたころ、Clubhouse(クラブハウス)という音声型のSNSが流行っていた。それに乗っかって、クラブハウスで読書会を開いてひと月かけて独学大全を全ページ音読した

学校で先生に指名されて音読したことはあるけれど、大人になって、自分の意思で音読するという経験は初めて。音読すると、黙読したときとは異なり、初めて読む感覚になる。文字を目で見て自分の声を聞いて頭の中で再構成してまた読む体験は新鮮で、音読して初めて、全然読めていないことに気づいた。

それ以降、重要なものは音読するようになった。大学のレポートで読む論文をはじめ、トルストイ『戦争と平和』やアリストテレスの『二コマコス倫理学』を声に出して読むことで、理解の深さが点や線ではなく、面積で広がった。

順徳天皇を憑依させる

藤原さんの『順徳院』もスゴい。

800年前の鎌倉時代、佐渡に流された順徳院を描いた自著を紹介する。歌を詠み、楽人を育て、恋を知る、誰も書かなかった24年間の物語になる。

自分自身が順徳院になりきって書くために、執筆時間は雑念のわかない午前中に限定した。集中していくと、「降りてくる」という感覚があり、筆が乗って滑るように書くことができた。さらに、隠岐に流された後鳥羽院が降りてきて、また書くことになった。

後鳥羽院が流されたとき、そのお世話をした村上家の末裔がまだ存在したため、本を送ったところお会いすることができた。話が盛り上がっていつまで経っても終わらず、また隠岐に行ってお話をすることになっている。

装丁は、スゴ本オフ常連のデザイナーである加藤京子さんの手によるもの。オフ会をきっかけに、本を書き上げて出版する熱量がスゴい。

マニアトラップを回避する

お次はウツミさんイチオシのゲーム『ストリートファイター6』。ウツミさん曰く、「朝から晩までどっぷりやっている」そうな。寝る前に目を閉じると情景がうかぶくらい。

格闘ゲームである「ストリートファイター」、シリーズの歴史は長く、30年以上になる。普通、バージョンを重ねていくと、様々な技や機能が追加され、複雑になっていく。そうすると初心者が入りにくくなる。ゲームシステムはシリーズをやり続けた熟練者にウケるものになってしまい、そのゲームのプレイヤーは必然的に先細る。

いわゆる「マニアトラップ」という問題だ。

ところが、『スト6』では、このトラップを回避するための工夫が随所に凝らされている。例えば、モードを分けたところ。複雑な動作で細かい操作ができる「クラシックモード」と、ボタン1つで状況に応じて適切な技が繰り出せる「モダンモード」がある。このおかげで、格闘ゲームを全くやったことがない初心者でも、それなりに遊べるようになっている。

eスポーツ大会を定期的に開催するなどプロモーションも充実しており、初動セールス200万本に達したという(ちなみに優勝者には1億円の賞金)。

「女の子という概念」の視覚化

ハルカさんが紹介した『江口寿史美人画集 彼女』が濃ゆい。

本当はお父さんが発表する予定だったのだが、ご都合により欠席、代わりにハルカさんがお父さんの原稿を元にプレゼンすることになった。

お父さんの原稿によると、こんな感じ。

……江口寿史の描く女性像にはもちろん、個別にモチーフがあるのだが、個別のパーソナリティを描いているにもかかわらず、「女の子」という種族の持っている、かわいらしさの概念そのものが視覚化されている。

「女の子」という概念の視覚化のため、どんな女の子のどんなストーリーでもそこに代入が可能となる。従って江口寿史の女性像は非常に「自分ごと化」のハードルが低くなっており、自分ごと化を促しているとさえ思える。

「自分ごと化」とは、その女の子の物語を自分自身の物語に寄り沿わせてゆくことであり、江口アートの特徴であるポップなファッションやガジェット、リアルな街の描写が、アナログARの役割を果たしている。その結果、江口アートが二次元から三次元へ越境してゆき、実際、展覧会の帰りの京王線では、周囲の女性たち皆が江口寿史の絵に見えてしまうという経験をした……

熱量ありすぎの原稿に、ハルカさん曰く「私にもよく分かりません」とのことwww(好きだという気持ちは伝わったなり)。

総合力で勝つアイドルグループ

あんどうさんの推しアイドルグループ「CROWN POP」もアツい。

歌もダンスも上手くて、ビジュアルもいいのに、ももクロの妹分で一番売れていないという。総合力ではどこにもひけを取らないのに、どういうわけか売れない。なぜか? ファン同士で交流して色々話して出た結論が、「尖ったところが無い」ところになる。

20年くらい前、インターネットに乗せたコンテンツがバッと広まった時期、こうした掴みどころのない「良さ」を共有できる世界がやってくると考えていた。そのはずなのに、現在はインスタントな強みを持ったものばかりが注目を集め、その生き残りが勝ち上がっていく世界になってしまった。

そういう分かりやすい尖った強みよりも、オールラウンドに良いものは良いと言い切りたい。

他にも、700ページ越えの上下2段組みのハードカバー『世界終末戦争』(マリオ・バルガス=リョサ)や、エロスと文学が混交する宇能鴻一郎傑作短編集『姫君を喰う話』、ミもフタもない橘玲『もっと言ってはいけない』、やすゆきさんイチオシのテイラー・スウィフトまで、気になるものが大量に見つかったなり。

スゴ本オフに参加するたびに、新しい世界が見つかる感覚に陥る(それだけ自分が井のなかにいたんだろうけれど)。

次回のスゴ本オフは「音読」をテーマにするぞ。この肝心の一行は、声に出して読みたい(読んで欲しい)作品や、このセリフの掛け合いは、配役を割り当てて聞くといった、音読して推したい作品を持ち寄ろう。

日程などはfacebookにUPするので、ふるってご参加あれ。

「お久しぶり」の回の推し作品

  • ジョージ・R・R・マーティン『氷と炎の歌』
  • Nintendo Switch『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザキング』
  • 読書猿『独学大全』
  • 藤原真由美『順徳院』
  • ハーラン・コーベン『WIN』
  • CAPCOM『ストリートファイター6』
  • 神山 理子『女子大生オナホを売る』
  • J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』
  • 江口寿史『江口寿史美人画集 彼女』
  • ジェラルド・ダレル『虫とけものと家族たち』
  • マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』
  • 川口雅幸『幽霊屋敷のアイツ』
  • 荒川弘『百姓貴族』
  • 戸田真琴『そっちにいかないで』
  • 津村記久子『水車小屋のネネ』
  • 津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』
  • 盛口満『めんそーれ!化学――おばあと学んだ理科授業』
  • 竹内早希子『巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ』
  • 劉慈欣『円』 劉慈欣短篇集
  • 宇能鴻一郎『姫君を喰う話 宇能鴻一郎傑作短編集』
  • サトシ・カナザワ 『知能のパラドックス』
  • 橘玲『もっと言ってはいけない』
  • 前野ウルド 浩太郎 『バッタを倒しにアフリカへ』
  • エイブラハム・フレクスナー『「役に立たない」科学が役に立つ』
  • ショーン・タン『いぬ』
  • アイドルグループ「CROWN POP」(クラウンポップ)
  • (アニメ版)『北斗の拳』
  • Taylor Swift “Death By A Thousand Cuts”




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