BRUTUSのホラーガイド444を使って最も怖い作品を探す
【自分にとって】一番怖い、最恐のホラー作品に出会える方法を紹介する。
まず、どんな話が怖い?
恨む怨霊? マスクを被った殺人鬼? 走れるゾンビ? 見ると呪われるビデオ? 暴走したAI? 全員狂っている村?
次に、どんなメディアで怖がりたい?
ホラー映画? ネット怪談? 怖いマンガやアニメも沢山あるよね。心臓に悪いホラーゲームも浮かぶし、怖い話専門のYoutubeもある。
これだけホラーが満ち溢れている中で、自分に合ったメディアで、自分にとって怖いストーリーを探すのは一苦労だ。
そんなときにお薦めなのが、まず①既知の作品を取っ掛かりに人を探す。次に②その人のお薦めする未知の作品に手を出す。そうすることで、未見の最恐に出会うことができる。
BRUTUSのホラー特集を例に実践する。
2023/9/1号では、「めくるたびに怖くなるホラーガイド444」と銘打って、怖いものマニア14名が集めてきた究極のホラーガイドを紹介している。
しかも、集めた444作品の恐怖度を数値化している。あんまり怖くない作品は1.0ポイント。次が1.1ポイント……で、最も怖いものが5.0ポイントになる。そして、怖くない順に並べて紹介している(「めくるたびに怖くなる」というのはつまりそういう意味)。
怖さの波長の合う人を探す
怖いものマニア14名のラインナップは以下の通り。かっこ()内は担当になる。リンク先はブログやらSNSやらYoutubeになる。
自分が知っている人や、自分が好きなメディアで当たりを付ける。わたしの場合、人間食べ食べカエルさんがtwitterでお薦めする映画をかなり信頼しているので、目安になる。
森直人(映画)
人間食べ食べカエル(映画、Youtube)
朝宮運河(小説)
門賀美央子(小説、書籍)
緑の五寸釘(漫画)
吉田悠軌(怪談)
深津さくら(怪談)
人生つみこ(ゲーム)
向江駿佑(ゲーム)
DIZ(ドラマ)
劔樹人(ドラマ)
藤津亮太(アニメ)
皆口大地(心霊ドキュメンタリー)
ジェットコ社会人(お化け屋敷)
知ってる人がいなくても大丈夫。自分が好きなジャンルを担当している人をガイドにして行けばいい。わたしの場合、読むホラーが好きなので、小説・漫画担当のお薦めを重点的に見た。
既知の作品から人を探す
怖くない順にならんでいるので、怖さ1~3ポイントぐらいじゃ怖くないだろうと多寡をくくる。
ところがである。
ミッドサマー(映画) 3.0
The Last Of Us(ゲーム) 3.0
隣の家の少女(小悦) 3.4
ファニーゲーム(映画) 3.8
ポイント低すぎ。『ミッドサマー』『ファニーゲーム』がこんなに低いなんて、早送りで観たの!? と疑いたくなる(あるいは、これらを怖さで凌駕する作品が大量にあるの?と期待したくなる)。自分が怖い思いをした作品が「あまり怖くない」認定されていることに違和感がある。何をもって「怖い」と感じるかは、人によりけりなので、担当のセンスと合わないのかもしれぬ。
逆パターンもある。
リング(小説) 4.1
ねじの回転(小説) 4.5
シャイニング(映画) 4.7
リング(映画) 5.0 (最高点)
5.0が最高点になる。確かに怖い作品だけど、そんなに怖い!? とツッコミを入れたくなる。怖さというよりも、有名な作品だったり、他の作品への影響が大きかったりすると、「怖い」判定している人がいる。
「どんなものを食べているかを言ってみたまえ。君がどんな人であるかを言い当ててみせよう」 というブリア=サヴァランの名言を思い出す。これを改変すると、「どんな作品が怖いか言ってくれれば、君がどんな人か言い当ててみせよう」だね。メジャーどころを挙げれば文句は無かろうという性根が透けて見える。
そういう中で、自分が怖いと思う作品を「怖い」と評価し、そうでないものは「怖くない」とする人を探す。わたしと恐怖センスが合うのは、朝宮運河さん。小野不由美の『残穢』を5.0(恐怖MAX)なので、この人は信用できる(『屍鬼』も入れてほしかったけど、無かった……)
怖い波長が合う人のお薦めを探す
では、その朝宮さんがお薦めするのはどれ? という見方で、再度リストを眺めなおす。すると、未読・未見がぞろぞろと出てくる。わたしが知らない怖い本は、朝宮さんが読んでいる。
そこで出会ったのがこの2冊なり。
『青蛙堂鬼談』岡本綺堂
『ぼぎわんが、来る』澤村伊智
朝宮さんによると、『青蛙』は、文章で人を怖がらせる技術を究めており、本当に怖い話は100年経っても古びないことを実感するとのこと。また、『来る』は、得体のしれない化け物と出くわすというプリミティブな恐怖が、圧倒的な筆力で描写されているらしい。これは期待していいかも。
444作品を足がかりに探索する
恐怖ポイントの高い作品は知っているものが多かったが、それでも未知なる作品に出会えると嬉しい。5.0(最恐)を獲得した中で、かなり気になるのはこの3つ。
ダーク・アンド・ウィケッド(今アマプラで観れる)
Madison(ゲームで最恐とのこと。P.T.じゃなくてこれ!?)
かわいそ笑(必ず「紙」で読めとのこと)
紙面の都合もあるかと思うが、いわゆるホラーとして有名なやつを集めてみましたという企画であり、知る人ぞ知る作品は少なかった。雑誌の役割とは、そういうものなのかもしれぬ。
もっと怖い作品があるのに、載ってないのが沢山ある。それに5.0を付けるなら、これはどうなる?というやつだ。
例えば、映画なら『REC』『女優霊』が無い。ゲームは『沙耶の唄』『かまいたちの夜』『Dead Space』が無い。小説は『真景累ケ淵』『ジェローム神父』『鬼畜』『獣儀式』が無い。漫画は『百物語』(杉浦日向子のやつ)『ブラッドハーレーの馬車』『真・現代猟奇伝』が無い。そしてホラーとして味わえるノンフィクションが丸ごと無かった(例えば『消された一家』『死体のある光景』『プレシャス』)。定番ばかりに5.0を付けた担当は、これらを読んで/観て/プレイすることをお薦めしたい。
ちなみに、怖い作品を怖くない順に紹介するやり方は、『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の付録「禁断の劇薬小説」の通り。わたしからのお薦め3作品を怖くない順に並べるとこうなる。
『獣儀式』(友成純一)
『隣の家の少女』(ジャック・ケッチャム)
『消された一家』(豊田正義)
みんなの最恐ホラー作品を持ち寄ったオフ会もやったので、こちらもお薦めする。
その作品が怖ければ怖いほど、観終わったり読み終わったあと、「生き延びた!」というカタルシスの脳汁があふれ出る。そして、優れたホラーであればあるほど人生に爪痕を残し、読んだ/観た/出会ったことを後悔し、いつまでも後を引く。
良いホラーで、良い人生を。
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