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知識は料理を美味しくする『おいしく食べる 食材の手帖』

ブロッコリーの塩ゆで、私がするのと、妻のとでは、味が違う。

妻がゆでると、コリッとした食感の中にピリッと辛みが交じり、何もかけなくても美味しい。一方、私のだと、ただの「茹でた野菜」になり、ドレッシングが必須だ。

同じ西友なのに、どうして違うのか?

『おいしく食べる 食材の手帖』に、その秘密があった。これだ。

Oishiku01

私は、沸騰させた熱湯に放り込んで、ぐらぐら煮たてながら茹でていた。一方、妻は、ふつふつ程度のお湯で、少し時間をかけていた。その違いだ。

ブロッコリーの「ブロッコリー感」は辛み成分にあるという(生で食べてみると分かる)。この持ち味を生かすには、熱湯ではなく、80℃で茹でると良いという。お湯の温度が80℃だと、野菜の芯温が40℃になる。この温度でブロッコリーは火が通り、かつ、辛みが働く。

「ゆでる=熱湯に放り込んで柔らかくする」だけの発想だったので、これは目鱗だった。単に「ゆでる」一つとっても、温度と時間を工夫するだけで、こんなに美味しくなるとは……知ると知らぬとで、かなり違ってくる。

こんな感じで、先人の知恵と科学の知識を合体させ、より美味しくする工夫を紹介する。なんでもかんでも「こうすべし」と押し付けるのではなく、原則と応用という形にしているのもいい。

  • ゆでたら水にとる/とらない野菜の基本ルールとケースバイケース
  • ホウレンソウは熱湯で、小松菜は80℃でゆでる理由
  • 白菜は焼け、もしくは干して水分を飛ばせ
  • 水からゆでる野菜と、湯でゆでる野菜の原則(土もの/葉もの)
  • 野菜の縦横の切り方で美味しさをデザインする
  • 肉調理のコツは保水性のある65~80℃
  • まぐろは万能、刺身だけではもったいない
  • えびは殻付き70℃で5~6分、殻と背わたは冷めてから

いわゆる「レシピ」は検索すればいい。だが、美味しくするためのベストプラクティスを集めたものは、なかなかお目にかかれない。

知ってるだけで美味くなるTipsばかり。凝った料理ではなく、一工夫で美味しくなる知識だ。料理上手とは、献立のレパートリーを増やす前に、食材の力を引き出せる人なんだね。

ちゃんとやろうと考えを改めたのが、肉料理だ。

肉の美味しさとは、ジューシーさ。そして、ジューシーさとは保水性。保水性を保ちつつ、かつ、火を通すには、65℃(肉が固まり始める)から80℃(肉から水分が脱け出る)が最適だという。

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80℃を保つため、フライパンなら冷たいうちに入れて火をつける。煮るなら、後入れ/途中取り出しする。ゆでるなら水からにする。揚げるなら余熱で火を通す。それぞれのコツには、ちゃんと理由があったのだ。

今までは、沸騰したお湯に放り込んでガンガン加熱していたが、これだと、表面が一気に過熱され、「よろいを着てしまう」状態になるという。なので、水から火にかけ、湯気が立つか立たないかぐらいの状態で、ゆっくりゆらゆらゆでるのが良いという。

今晩はゆで豚、やってみよう。

 

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