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インドでメシ食ったら人生大逆転した『今日ヤバイ屋台に行ってきた』

470万回再生されているこの動画、たまご300個でスクランブルエッグ作っているんだけど、語彙力を失うヤバさで、何度も魅入ってしまう。

バケツ一杯の玉ねぎと、トマト40個刻んだやつに、笑うしかない量の油と、土俵入り3回分の塩、チリパウダーとパクチーとトウガラシは親の仇くらい盛る。

[これ]

これらが直径1メートルの円い鉄板にぶちまけられ、火力MAXで焼かれてゆく。ダイナミックに撹拌されるチリパウダーの粉塵が、蒸気に乗って店内に充満してゆくのが見える(せきと涙にまみれながら撮影したそうだ)。

他にも、牛肉バーガー300人前を一気に作るとか、ドライカレー100人前とか、ヤギを一匹丸ごと使ったビリヤニ(炊き込みごはん)とか、屋台ではありえない物量を豪快に作る。

持ち込みを調理してくれるのもアリで、日本から持ってきた「サッポロ一番塩らーめん」「ペヤング超超超超超超大盛やきそばペタマックス」を元に、オリジナリティが如何なく発揮され、原型を留めていない一皿を作ってくれる。

撮っているのは著者自身で、登録者数60万人を越えるYoutuber、坪和寛久さんになる。インドの屋台を撮った動画で有名になり、再生数100万回を越えるのもザラで、「サッポロ一番塩らーめん」なんて今見たら427万回というお化けコンテンツなり。

インドでメシ食って人生が変わった男

その書籍化が、[今日ヤバイ屋台に行ってきた]

著者は、インドと縁もゆかりもなかったそうな。

卒業して、就職して、5年ほど働いたのだが、どうも会社人としての立ち回りが下手なほうで、「うだつのあがらない社会人」だったという。悶々としていたときに、インドで働く知り合いから声をかけられ、海を越えることになる。

人生を変えるきっかけは、屋台メシだった。

削りチーズにより埋没した「1kgサンドイッチ」なるものを口にして、そのあまりの美味さにのけぞったという。そして、屋台街に入り浸るようになる。

どの店も開放的で、調理している様子の一部始終を観察できる。交渉すれば撮らせてくれるところもあるし、観光客向けの「映え」を意識した店もある。そして見ているだけで面白い。

慣れた手つきで小気味よく動くけど、大雑把でテキトーな感じ。調理法は独創的だけれど、衛生面では絶望的になる。こぼれまくる食材、鍋にこびりついた残飯らしきブツ、周囲を行き交うハエなどモノともせずに、果敢に火柱を上げる。

日本人の衛生観念だとドン引きだろうが、出てくる料理は美味しそうなものばかり。iPhone の画面ごしに、香ばしさや辛旨さ、暴力的なカロリーが伝わってくる。

そんな動画が日本の深夜番組で紹介されたのをきっかけにバズり、あれよあれよと、押しも押されぬ Youtuber となってしまう。塞翁が馬じゃないけれど、何が起こるか分からない見本みたいな人生だ。

「おおらか」は伝染する

撮るほうなので、ほとんど画面に映らないけれど、料理している人とのやり取りで、めちゃくちゃ楽しんでるのが分かる。そして、旨味と辛みとカロリーに殴られながら食べているのも伝わってくる。

観てて(読んでて)面白いのは、インドの「おおらかさ」は著者にも伝染しているところ。鍋にこびりついた残飯は「思い出」と命名され、周囲を飛び回るハエは「黒い妖精」として大目に見られる。

そんなぶっ飛んだ価値観に、わたしが後生大事にしている感覚も相対化されてゆく。多少のことも「ま、いっか」と許せるようになってくる。とりあえず、狂気のごとく味の素を入れているのを見て、私の料理でも解禁することにした。

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