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ナチスが焼いた本のリスト、国際宇宙ステーションにある本、ハリポタの次に読む本……本のリストが面白い

ナチスが焼いた本のリスト

ナチスが焚書した本は4,000を超えており、その全容は把握しきれない。だが、焼かれた本の一部は分かっており、”A Book Of Book Lists” でリスト化されている。これを見ると、ナチスが何を恐れていたかが、よく分かる。

  • 武器よさらば(アーネスト・ヘミングウェイ)
  • いかにして私は社会主義者となったか(ヘレン・ケラー)
  • 野性の呼び声(ジャック・ロンドン)
  • 鉄の踵(ジャック・ロンドン)
  • 世界史概観(H.G.ウェルズ)
  • 理性に訴える(トーマス・マン)
  • ジークムント・フロイトの全著作

 

ISS(国際宇宙ステーション)にある本

宇宙ステーションで働く人々は超忙しいので、本読んでるヒマなんてないのでは? と思うのだが、リラックスのための読書は必須らしい。数十年にわたり私物として持ち込まれ、そのままライブラリー化しており、シリーズものが充実している。

  • ファウンデーションシリーズ(アイザック・アシモフ)
  • エイリアン 感染(ダレル・ベイン)
  • アシモフのサイエンス・フィクション(アイザック・アシモフ)
  • ヴォルコシガン・サガ(ロイス・マクマスター・ビジョルド)
  • 二都物語(チャールズ・ディケンズ)
  • 戦争と平和(トルストイ)
  • 風と共に去りぬ(ミッチェル)
  • オナー・ハリントン・シリーズ(デイヴィッド・ウェーバー)

 

アラン・チューリングが借りてた本

アラン・チューリングが学校で借りた本のリストもある。パブリックスクールに通っていた頃(14~19歳)の本だ。ルイス・キャロルのアリスシリーズから数学の世界へ誘われたのかと想像すると感慨深い。

  • 不思議の国のアリス(ルイス・キャロル)
  • 鏡の国のアリス(ルイス・キャロル)
  • 論理ゲーム(ルイス・キャロル)
  • 空間、時間、重力(アーサー・エディントン)
  • 自然界の本質(アーサー・エディントン)
  • 物質と運動(ジェームズ・クラーク・マクスウェル)
  • 科学と近代世界(ノース・ホワイトヘッド)

一冊の書物は一つのパッケージとして完結する。だが、それをリストにすると、趣味や偏愛、あるいはメッセージ性が現れてくる。

この遊びを徹底したのが、『本のリストの本』だ。

編集者や蒐集家、ライターといった、本に関わる人たちが、本のリストを巡ってあれこれ語ったエッセイ集だ。知ってる本から知らない本を手繰るとき、それをリストの形で繋げてくれるのが楽しい。

 

文字の表情を味わう本

タイポグラフィやレタリングが好きな人で、様々な書体を見ているだけでニヤニヤできる上級者向け。フォントを変えるだけで、中身がガラリと変わってしまうのは魔法のようで面白い。『じょうずなワニのつかまえ方』はWeb版で読める(めちゃめちゃ面白い!)

  • じょうずなワニのつかまえ方
  • 日本字フリースタイル・コンプリート たのしい描き文字2100
  • 篠原榮太のテレビタイトル・デザイン

 

刊行しなかった本のリスト

企画は進んでいたが、諸事情で日の目を見なかったリストなのだけど、絶対これ面白いやろ! と言えるやつばかり並んでる。ベイトソン先生のやつは読みたい!

  • 男色と免疫疾患(南方熊楠)
  • 小説・経済論(村上龍)
  • 細野晴臣画集
  • 坂本龍一伝(玖保キリコ)
  • 中島みゆき論(呉智英)
  • マルセル・デュシャン(オクタビオ・バス)
  • イルカを撃つな(グレゴリー・ベイトソン)

 

ハリー・ポッターの次に読みたいリスト

イギリスの絵本専門店が、ハリポタブームの頃に出したリストだそうな。私はハリポタを読んでいないので何とも言えないが、これらが鉄板で面白いことは保証する。『ダレン・シャン』や『タラ・ダンカン』も入れたいね。

  • はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)
  • トムは真夜中の庭で(フィリパ・ビアス)
  • ゲド戦記(アーシュラ・ル=グウィン)
  • 指輪物語(J.R.R.トールキン)
  • 長くつ下のピッピ(アストリッド・リングドグレーン)
  • ナルニア国ものがたり(C.S.ルイス)

この遊びはマネしたくなる。たとえば、何度も読んでしまう短篇集とか。

 

なぜか何度も読み返す短篇集(マンガ編)

  • ヘウレーカ(岩明 均)
  • ひきだしにテラリウム(九井諒子)
  • 愛すべき娘たち(よしながふみ)
  • 棒がいっぽん(高野文子)
  • ミノタウロスの皿(藤子・F・不二雄)
  • 三文未来の家庭訪問(庄司創)

 

なぜか何度も読み返す短篇集(小説編)

  • 伝奇集(ボルヘス)
  • 新釈雨月物語、新釈春雨物語(石川淳)
  • 完全な真空(スタニスワフ・レム)
  • Carver's dozen(レイモンド・カーヴァー)
  • 名人伝(中島敦)
  • チェホフ短篇集(チェホフ)

面白いだけでなく、読み返すたび、違った印象を受けるのが面白く、何度も手にしてしまう。「噛むほどに味が出る」というやつ。

こんな感じで並べると、わたしの偏愛が見えてくる。「お前のマンガの趣味は悪い」と言われたことがあるけど、偏っている自信はある。一方で、わたしと好みが被るなら、ここから次に手にする一冊が見えてくるかもしれぬ。

あるいは、拙著『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』にも、沢山のリストがある。

 

人生を破壊する怒りから自由になる本のリスト

  • 怒らないこと(アルボムッレ・スマナサーラ)
  • ジェダイの哲学(ジャン=クー・ヤーガ)
  • 怒りについて(セネカ)
  • 七つの習慣(スティーヴン・コヴィー)

怒りに任せてモノに当たったり、感情が昂って眠れなくなるほどだったのが、読書を通じて、怒りから自由になることを学んだ。万人向けかは知らないが、少なくとも自分には効いたリスト。

 

読んだことを後悔する禁断の劇薬小説

  • イワン・イリイチの死(トルストイ)
  • 城の中のイギリス人(マンディアルグ)
  • 隣の家の少女(ケッチャム)
  • ジェローム神父(マルキ・ド・サド)

全24作品からダメージ低めのものを選んだが、読書は毒書であることを思い知らせてくれる。苦手な人は避け本リストとして使って欲しい。好きな人は、別冊付録を手にしてほしい。

このブログでも、様々なリストがある。昔、わたし自身のために作ったのだが、今でも有効活用しているのがこれ。

 

東大教師が新入生に薦めるブックリスト

  • 理科系の作文技術(木下是雄)
  • 生命とは何か(シュレディンガー)
  • 日本人の英語(マーク・ピーターセン)
  • 知的複眼思考法(苅谷剛彦)
  • オリエンタリズム(サイード)
  • ゲーデル、エッシャー、バッハ(ホフスタッター )

実際は、東京大学出版会が毎年行っているアンケートで、過去30年分を基に集計した100冊のリストになる。リストにすることで、今まで読んできたもののを振り返り、整理することができる。一方で、次に読む目標も出てくる。

本をリスト化すると、意外な自分が見えてきたり、趣味が似通った人と出会えたりする。定期的に棚卸していきたいもの。

 

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コメント

記事に全く関係ないことで恐縮ですが、相談事があります。
「読みたいリストの整理と、読むべき本がわからない」という相談です。
読書家系ブロガーさんのブログや、雑誌、職場の同僚から教えてもらったおかげで、読みたい本がたくさん増えました。
ですが、今目の前にある本を読んでるうちに、読みたい本が増えてしまい、「この本は何で読みたいんだっけ?」「次、この読みたいリストの中から何を選べばいいんだ?」「そもそもこの本、今では大して読みたいと思えなくなったぞ?」と、読みたいリストの新鮮味が失われてしまいました。
一新してしまおうかと思いましたが、「でも誰かが何かの理由で勧めてくれたから、いつか読んでみよう」と捨てられずにいます。
結局今は、読みたいリストの古い方から順番に読んでいますが、「今、読みたいのはこれかなぁ……」って疑問に思いながら読んでいるし、途中で気になる本があったら、また目移りしちゃうし……と、目の前の本に集中できていません。
今の自分が読みたい本、読むべき本を、どう整理して、何から読み進めればいいでしょうか?

お時間があれば、教えていただけるとありがたいです。

投稿: 熊の鼓動 | 2020.10.09 23:15

>>熊の鼓動さん

「読みたいリストの整理と、読むべき本がわからない」ですか……読書する人の永遠の課題のような気がしますが、私の方法をご紹介します。

・読みたいリストのタイトル、著者、出版社をGoogleドキュメントに並べる
・誰の、どんなきっかけ(ブログ、SNS、書評、書店)で読みたいと思ったかを書く
・いつ手に取ったか書く
・(余力があれば)第一印象を書く(表紙や手に取った感触、まえがき、一頁だけ読んだ感想)

その後、次の本が気になるなら、目の前の本は放置します。買った本なら棚にしまい、借りた本なら素直に返せばよいかと。

ポイントが一つあって、次の本を読んでいるうちに、「やっぱり放置した本が読みたい」と思うことを見越して、「放置する本は、最低でも一頁は読む」ことを守りましょう。これで、放置する本は心置きなく放置できるようになります。

そうやって読みたいリストをGoogleドキュメント上に完成させます。
後は、このリストを更新するタイミングで見返せば、次に読む本が見えてきます。

このような試みは、多くの方が実践していると思いますが、私ならではの工夫があります。

それは、読みたいリストを時系列に追加することです。
普通なら、こんな形に、書籍が一意になるように並べます。

書籍A
書籍B
書籍C
書籍D
書籍E

ですが、私は、そのとき読みたいと思った順にスタックしていくやり方です。

書籍C  10/10
書籍A  10/9
書籍C  10/8
書籍D  10/6
書籍A  10/5

書籍Aは、10/5に手に取ってリストに追加して放置したけれど、10/9にもう一度読みたくなって手に取ったら、再度リストに追加します。このリストには、同じタイトルの本が何度も登場するのです。手に取っては放置して、放置した後また読みたくなって手に取って……を繰り返しているということは、その本こそが「読むべき本」なのでは、とリストを見返すことで、自分を客観視できます。

私の場合は、好きでGoogleドキュメントを利用していますが、スプレッドシートの方が管理しやすいかもです。

自分の「読みたい」「読むべき」という気持ちを、一覧表という形で外に全部出して、それを眺めるというのがキモなので、いろいろ工夫するとこはあると思います(よくある、キレイなブックリストを作ることが目的ではないので、ご注意ください)。

投稿: Dain | 2020.10.10 08:50

ものすごく丁寧にご回答いただき、ありがとうございます!
感覚的な方法ではなく、表にして客観視すると言うところが膝を打ち抜くほど納得しました! 自分も、スプレッドシートで作ってみることにします。

もう1つ、ご相談があります。
「目の前の本を、どれぐらいで見切りをつけるか」についてです。
読み始めてから、内容が面白くなかったり難しかったりして、読むのが辛くなっても、「いつか面白くなるだろう」「もう少し頑張って噛み砕いてみよう」と我慢するような読書をしてしまいます。
確かに、結果として面白く感じた本(フィクション系)もありましたが、それに至るまでの疲労と不安が強くて、安心して読んでいられません。
それに、そもそもその本(ノンフィクション系)が自分の理解力を上回るような本だったら、ビギナー本から読んだほうが飲み込めるはず。だけど背伸びして読んでしまう……。

ダインさん渾身のオススメの「銃・病原菌・鉄」や「カラマーゾフの兄弟」も、恥ずかしながら挫折してしまったんです。
フィクション系とノンフィクション系。どちらにおいても、読書が煮詰まった時の見切り方を教えて下さい!
お時間ある時で構いません。よろしくお願いします。

投稿: 熊の鼓動 | 2020.10.10 19:21

>>熊の鼓動さん

「目の前の本を、どれぐらいで見切りをつけるか」についてですね。

目的にもよりますが、やめても支障がないのなら、やめたくなったときにやめればよいかと思います。

私がよくやっていた過ちは、「せっかく買った本だから、頑張って読み通そう」と時間と集中力を浪費したことです。それが完全に無駄だったとは思いませんが、もっとやり方があったはず。その「やり方」を書きます。

フィクションの場合:やめたくなったらやめればいいです。『カラマーゾフの兄弟』は長くて濃いので、息切れするかもしれません(ずーーーーーっとしゃべってばかりで話が1ミリも動かないところとかありますもんね)。で、再読したくなったときに手にすればいいかと。そのときは、ガイドを頼りにすると良いかもしれません。例えば、NHK100分de名著で、テーマとあらすじだけ抑えておくといいかもしれません。

これ↓
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4142231065

だいたい100頁ぐらいで、全部おさえられます。もちろん、ネタバレしまくりですが、これはビクともしないです。むしろ、ネタが分かった後に、もう一度そのシーンなりセリフを読みたくなるので、むしろネタバレ歓迎です。

ノンフィクションの場合:やめたくなったらやめればいいのですが、「その手前の本」に戻るのもありかもです。「やめたくなった本」を読む前に、著者の考えや、予備知識をおさえるための本です。『銃・病原菌・鉄』なら、以下の本で、ジャレド・ダイアモンドの主張をおさえたり、この本の「まとめ」を先に知るのも良いかもです。

コロナ後の世界 (文春新書)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166612719

ナショナル・ジオグラフィック(特集 銃・病原菌・鉄)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4863130023

「結局その本が何を主張しているのか?」「それはなぜ、そう言えるのか?」さえ押さえておけば、『銃・病原菌・鉄』をもう一度読むかどうかは、決めることができます。

……こんな感じです。

要するに、いったん目の前の本から離れて、迂回したり踏み台を使うのです。それでも、読むべきだと感じるは、あります。それこそが、再挑戦する一冊だと思います。

買ったお金はサンクコスト(取り返しがつかない費用)なので、その元を取ろうとするあまり、追加の投資(時間&集中力)をしてしまうのは、二重の過ちになります。お金よりも、時間や集中力の損失の方が痛いので、優先順位を間違えぬよう……


投稿: Dain | 2020.10.11 09:55

ありがとうございます!
「やめたくなったらやめればいい」
って、ハッキリ言ってもらって、スッキリしました!
「もったいない精神」でダラダラ読んでしまう癖があるので、頑張らずに無理せずに読んでみようと思います。
「カラ兄」や「銃…」もアシストを使いながら読んでみます。 と言うか、「銃…」にDVDあるんですね! 大収穫です!
ありがとうございました!

投稿: 熊の鼓動 | 2020.10.11 12:36

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