『ゴースト・オブ・ツシマ』は宮本武蔵の兵法が有効だ
問題:どの敵から倒す?(制限時間0.5秒)
解答と解説:
以下の優先で倒す。
- 左奥の弓兵
- 真中の槍兵
- 右側の盾持ち
まず弓兵。
こいつは距離を取り、離れたところから撃ってくる。動作モーションが見えない視覚外から攻撃することもある。撃つとき「ドーショー!」と叫ぶので避けるなり払うなりすればよいのだが、その間は立ち止まることになる。
矢のダメージはそこそこだが、当たると硬直し、敵に囲まれやすくなる。画像では三人だが、大勢で押し寄せられると本当に恐ろしい。このゲームでは、敵に囲まれる=死を意味する。
だから、弓兵を率先して倒す。直線的に向かうと的になるだけなので、迂回し、左に弧を描くようにしてダッシュして斬る。軟らかいので短時間で倒せる。
次は槍兵。
こいつは少し離れたところから突いてくる。槍の特性上、こちらの動きを制限するような突っ込み方をする。さらに、赤く光るとき、弾き不可の攻撃となるので注意が必要だ。そして当たると痛い。かなり痛い。槍兵に囲まれる=ほぼ死を意味する。
だから、なるべく一対一になるように立ち振舞う。弓兵を倒した後なので、視覚外からの攻撃は無いと考えていい。なので、敵の団体様の左端(もしくは右端)にダッシュして、そこにいる一人を狙って集中攻撃する。槍に特攻を持つ型があるので、それに切り替える。
最後は盾持ち。
こいつはガードが硬い。突っ込んでくるけれど、積極的には攻撃してこない。境井仁(=プレイヤー)を足止めすることで、他の仲間が攻撃しやすくする役だ。
なので、盾に特攻を持つ型に切り替えて殴る。盾を崩せばダメージが届くが、それまでに時間がかかる。要するにこいつは時間稼ぎ役なのだ。手こずっていると他の敵に囲まれる。なので、他の脅威が失せた後、ゆっくり撫で斬りすればいい。
『ゴースト・オブ・ツシマ』の戦い方
『ゴースト・オブ・ツシマ』(Ghost of Tsushima、GOT)めちゃくちゃ面白いな。
13世紀のモンゴル帝国による文永の役の対馬を舞台とし、武士である「境井仁」となり、蒙古軍に逆襲する、オープンワールドのアクションRPGだ。
わたしの中では、『ウィッチャー3 ワイルドハント』『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』『The Elder Scrolls V: Skyrim』と同じくらいハマっている。毎日、かなり血まみれになりながらも、武士力高めのサムライ・ライフを送っている。
蒙古軍は大勢で押し寄せてくる。対するこちらは一人か、いても少人数だ。普通にやったのでは、勝ち目は薄い。
どうするか?
一つの方法は、「闇討ち」だ。
背後から忍び寄り、短刀で一殺する。あるいは上空から飛び降りながら一撃で葬る(SEKIROみたくカッコいい!)。
だが、俺は武士(もののふ)だ。そんな盗賊まがいのやり方ではなく、正々堂々戦いたい。そのために、名乗りを上げて一対一に持ち込む「一騎打ち」がある。抜刀一閃、バッサリ斃すのもカッコいい。
一騎打ちで倒せる数も限られているので、そのうち敵に囲まれる。
どうする?
宮本武蔵の兵法
そこで、冒頭の「問題」になる。一対多ではなく、一対一に持ち込む。
多勢に無勢は正しい。遠矢や槍、盾で囲みながら蒙古兵は押し寄せてくる。逃げ場が絶たれると、死を覚悟するほかない。以下は囲まれてボコられるパターン。
だから、多勢をいっぺんに相手しないよう、最も弱いところ(=端)から崩す。
団体を相手するとき、右や左に走って、集団のカドを作り、そのカドの一人を狙う。ヒットするのは一人にして、集団を斜めに横切るようアウェイする。厄介な飛び道具を持つ敵は真っ先に倒す。
以下は隘路を利用して一対一に持ち込むパターン。モタモタしていると後詰に回り込まれるので、素早くダメージを与えるのが肝心。
何度も死地に挑みながら編み出したこの戦法、実は、宮本武蔵のやり方だ。井上雄彦のコミック『バガボンド』や、吉川英治の時代小説で学んだ。
宮本武蔵が、吉岡道場の70人を相手に、ただ一人で立ち向かったという、一乗寺下がり松の決闘だ。
普通に考えると、勝てるわけがない。
70人で一斉に襲い掛かったら、どんな剣豪でもひとたまりもあるまい。当主を殺された吉岡側は血気に逸り、樹上に鉄砲や弓兵まで隠して殺す気マンマンだ。
武蔵は、問題をこう捉えなおす。一対七十の戦闘ではなく、一対一の決闘を七十回繰り返すと考えるのだ。そして、誰も思いもよらないところから奇襲を仕掛け、真っ先に石礫で鉄砲を倒す。そして囲まれないよう走り、常に一対一で相対するように仕向ける。
バガボンド26巻より
集団に突っ込むのではなく、そのカドを横切るように斬る。吉川英治『宮本武蔵』ではこう描かれている。
努めて敵の展開してくる横隊の正面を避け、その群れの角へ角へと廻って、電瞬(でんしゅん)に薙(な)ぎつける―――末端の角を斬る―――だから、武蔵の位置からは、敵はいつでも、先刻の狭い道を押して来たように、縦隊の端から見ているわけだった。同時に、七十人でも百人でも、彼の戦法からすれば、わずか末端の二、三名だけが当面の対手(あいて)であるにすぎない。
(吉川英治『宮本武蔵』新潮文庫4巻「風の巻」より)
宮本武蔵が著したとされる『五輪書』の火之巻では、次のように解説されている。
まぎる(間切る)と言うのは、大勢の合戦にしては、人数をたがいに立て合い、敵の強きとき、 まぎると言って、敵の一方へかかり、 敵崩るると見れば、捨てて、また強き方々へかかる。おおよそ、つづら折にかかる心地なり。
ヨットが風上に向かって帆走するとき、風向に対してジグザグに進むのを「間切る」という。集団を相手に戦うとき、この方法が有効だという。
小説、ドラマ、マンガと筋立ては異なるが、武蔵の兵法はゴースト・オブ・ツシマで大いに役に立っている。
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