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大人もハマる子どもの新書

知らない分野をサクッと知りたいとき、新書が便利だ。

ところが、新書の中には、かなり難解で、入門書としては厳しいのも、けっこうある。

その点、子ども向け新書は、特に分かりやすく解説されている。だから、それを大人が読めば、「サクッと読める」という新書本来のメリットを得られる。

池上彰さんがブレークする前、子ども向けニュース番組を担当していたが、これ見ていた大人もかなり多かった。わたしも見ていたが、ポイントを絞って平易な言葉で伝えてくれており、非常に分かりやすかったことを覚えている。

だから、「子ども向け新書を、大人にも紹介する」という千代田図書館の企画は、知らない分野を広げるのにピッタリだろう。

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もちろん、子ども向け新書を読んで「簡単すぎる」と感じる場合もある。その場合、巻末の文献案内から進むことができる。偏りを減らし、網羅性を目指した知の入り口として、子どもの新書を使うのだ。

千代田図書館の企画[おとなもハマる‼こどもの新書]が斬新なのは、テーマごとにキーとなる新書を決め、そこから派生する形で紹介しているところ。一つに興味が湧けば、そこから芋づる式に引き出せる仕掛け。子ども向けの入り口から、どんどん深みにハマっていける。キーとなる本は「★」で示す。

たとえば、テーマでたどる歴史の新書だ。世界史といっても、深さも広がりも莫大だから、どこから手を付けていいやら分からない。だから、興味のあるテーマで歴史を貫いた新書で掴んだら、そこから派生する関連本に手を伸ばす。

  • 『パスタでたどるイタリア史』(池上俊一、岩波ジュニア新書)★
  • 『麺の文化史』(石毛直道、講談社学術文庫)
  • 『ヨーロッパがわかる』(明石和康 、岩波ジュニア新書)

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あるいは、『10代に語る平成史』で、平成を振り返る。まさにその時代を生きた自分からでは、「平成」は近すぎて客観視が難しい。おそらく、興味がある分野や社会風俗ばかりに目が行き、昭和との接続といった歴史的な観点や、グローバルな視点は曇りがちだろう。

『10代に語る平成史』は、消費税の導入やバブル経済の終焉、冷戦構造の崩壊からテロとの戦い、自然災害など、様々な視点から「平成」を浮かび上がらせようとしている。これをキーにして、以下の本が紹介されている。

  • 『10代に語る平成史』(後藤謙次、岩波ジュニア新書)★
  • 『財政から読みとく日本社会』(井手英策、岩波ジュニア新書)
  • 『平成史講義』(吉見俊哉、ちくま新書)

さらに、『正しいパンツのたたみ方』関連。

「豊かに生きるとは何か?」というテーマを、家庭科から答えた一冊になる。暮らしを整えるだけにとどまらず、現代で他者とともに生きていく力を身につけることを目指している。

あらためて「豊かに生きるとは?」と問われると窮する。だが、テーマを分けて置き換え「家族、消費、労働、性愛のスキルを上げる方法」で考えると、より具体的に見えてくる。「子ども向け」を謳っているが、ヒントが得られるかもしれぬ。

  • 『正しいパンツのたたみ方』(南野忠晴、岩波ジュニア新書)★
  • 『社会を生きるための教科書』(川井龍介、岩波ジュニア新書)
  • 『正しい目玉焼きの作り方』(森下えみこ他、河出書房新社)

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他にも、『めんそーれ!化学 おばあと学んだ理科授業』から化学を、『ハッブル 宇宙を広げた男』から宇宙論、『クマゼミから温暖化を考える』から地球温暖化問題など、新書を通じて様々な学問分野への入り口が見える。

全てのリストは[PDFファイル]をどうぞ。千代田区図書館にて8月下旬まで展示してるので、ぜひ立ち寄ってみてほしい。既知からは新たな発見が、未知の分野からは面白そうな入り口が、必ず見つかるはず。

※写真は許可を得て撮影・掲載しています

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