どうしても読んで欲しい本を、どうしたら手に取ってもらえるか『進む、書籍PR!』
読んだ後、うおぉッ! となって、知り合いに電話したりメッセ送ったりすることがある。
押し寄せる感情を吐き出さないと自家中毒になるから、言葉にならない感動をなんとか言語化する。たいてい深夜で、まれに未明(完徹した故)、この作品は、まさに私のため・君のために書かれたといっても過言ではない。百年の時を経て運命的に見つけたのだ云々......感動の押し売り、受け取る方はさぞ迷惑だったろう。
ネットにこうして書いているのも、その一環なのだが、リアルでオススメしていくうち、何事にもタイミングというものがあるという当然のことが、ようやく分かってきた。そして、これもあたりまえのことなのだが、受け取る人のことを考える必要もある。
わたしが一番オススメしたいのは、もちろん「わたしが読んだ直後」なのだが、受け取るほうにとってみれば、自覚無自覚関係なく、欲っした直後になる。それは、受け取る人の既読本や関心ごとに紐づけされている本だということが分かったときなのだ。
そういう「受け取る人」をターゲティングし、メディアを選び、それに沿った映像やコメントを準備する。メディア露出の反応を確かめつつ出版・流通・書店の調整を行うという役割がある。「書籍PR」というお仕事である。
何千何万という書籍が出版されている今日、素晴らしい本であるにもかかわらず、他の本に埋もれてしまい、「受け取る人」にまで届かないまま店頭から消えているものがある。書籍PRは、そんなことにならぬよう、本と人との出会いをつなぐのが目的だ。
本書は、その第一人者である奥村知花さんが、七転八倒しながらのたうち回ってきた仕事を振り返るとともに、書籍PRを進めていく上でのノウハウを余すところなく紹介した一冊である。平気でウソをつくのがまかり通る出版業界の暗部を覗くとともに、どうしたら出版社やメディアを巻き込んでいけるのかを知ることができる。
ポイントは、「売り込む」のではなく「つなげる」「届ける」こと。読んで欲しい本を、読んで欲しい人に届けるためにできることをひたすら考え、実行する。この熱量とバイタリティが凄いのだ。
わたし自身、彼女のおかげで出会うことができた作品がある。たとえば、子どもに読み聞かせている親が眠ってしまう絵本『おやすみ、ロジャー』や、決して人前で読んではいけない『ワンダー』がある(号泣するから)。どれも、わたし一人のアンテナでは決して引っかからなかっただろうが、出会えてよかったと感謝している。
ただ、やはりというかなんというか、テレビというメディアの力は依然として強い。休日前の昼の番組で芸人が紹介するだけで、店頭では動きが出るという(この場合のターゲットは高齢者になる)。ベストセラーというものは、ふだん本なんて読まない人たちがお金を出すからこそ成り立つもの。そして、ふだん本を読まない人たちは、テレビから影響を受けることが大きいようだ。
一冊一冊の特性を知り、感動を届けるお仕事。文字しかないこのブログとは違うけれど、「うおぉッ!」を伝える熱意は同じ。いろいろ学ばせていただきました。ありがとうございます。

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