エッチする直前こそが人生だ『初情事まであと1時間』
タイトルまんま「初エッチするまであと1時間」のカップルを描いた、シチュエーション恋愛オムニバス。ニヤニヤが止まらないまま進んでいくと、初々しさにほっこりしたり、健気さにほろりときたり、切なさに撃ち抜かれたり。
あくまでも、エッチするまでの1時間なので、性行為そのものは描いてない。「あと50分」「あと31分」といったカウントダウン的なナレーションが入るが、「スタート!」以降は「ご想像にお任せします」状態となる。だから表紙に「成人向け」マークは入っていないのだが……のだが、これが読むほうにとってはとってもドキドキもの。
なぜなら理由は2つある。
一つは、典型的な「やれる」パターンの場合。「両親が旅行の彼女の家に招かれました」など、リビドー全開のシチュエーション。にもかかわらず、二転三転する様がワクワクを加速させる。もう一つは、どう考えても「やれない」パターン。こじらせ処女、腐らせ童貞、生命の危機など、エッチからほど遠い状況で、刻々と進むカウントダウン。そこから持ってくウルトラCがニヨニヨさせる。
これは倒叙型の亜種だね。ほら、『刑事コロンボ』のような、最初から犯人が分かっていて、探偵がアリバイやトリックを崩すやつ。『初情事まで』は、2人が結ばれること、しかも「あと1時間」で初の一線を越えることが分かっている。そして、「あと1時間」という短い間に、2人の距離が揺れたり離れたり、意外な事実が明るみに出て、あれよあれよとくっついたり。
似たようなシチュエーションで、『やれたかも委員会』という、これまた傑作がある。が、『やれたかも』はタイトルどおり、結果的にはやれなかったが、あるいは状況やセリフにより「やれたかもしれない」という美しい余地は残されている。聴牌はしてたが和了れなかったのが『やれたかも』なら、『初情事まで』はオープンリーチで自摸られるようなもの。
「初情事」と「発情時」を掛けているのも面白い。やることは一緒なのに、やるまでが違う。それが、個性であり、文化であり、ドラマであり、思い出となる。「漫画家と編集者」「勇者と魔法使い」「幼なじみで大学生で」が好き。お試し版の第一話が、これまたいい→「初情事まであと1時間:case1」。
エッチする直前こそが人生だ。
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