水樹奈々に寝かしつけてもらう『おやすみ、ロジャー』
ここ数年、なかなか寝付けなかったのが、一瞬で眠れた。
もちろん、あれこれ試してきた。昼間は日光を浴びるとか、寝る前はブルーライト避けるとか。しかし、横になって目を閉じても、雑事や悩みが頭をめぐり、なかなか眠りに入れない。体が眠りたいのに、頭がそうさせてくれぬ。悶々してるうちに朝が来たことも幾度かある。
それが、一発で眠れた。
だがこの眠り、まったく理解を超えてた……ありのまま、起こったことを話そう。「私は、水樹奈々の朗読を聞き始めたと思ったら、いつのまにか朝になってた」。何を言っているのか、分からないと思うが、自分も、何されたのか分からない。快眠CDだとかチャチなものじゃなく、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった。
それが『おやすみ、ロジャー 朗読CD』である。もとは「魔法のぐっすり絵本」と呼ばれており、小さな子どもの寝かしつけのために研究された絵本だ。喚起されるイメージや、音節のリズムを考慮した言葉で構成されており、リラックスさせる工夫が随所にある。それを、声優が朗読してくれるのだ。
その危険性は、説明書きにある。「車、バイク、自転車など、あらゆる乗り物を運転中に聞いたり、運転している人に聞こえる大きさでCDを流すことは、絶対におやめください」と警告している。
これは、一種の催眠術のようなもの。兎の子どものが、寝かしつけてもらうというだけの単純なお話に、「だんだん体が重くなる…」「気持ちが楽になってゆく」といった語りかけを混ぜ、足先→脚→胴→腕→頭の順番に力を抜いてゆき、イメージにより身体を温かくしてくれる。
水樹奈々の朗読が素晴らしい。耳元に、ささやきかけるように話してくれる。プリキュアやシンフォギア、最近だったら『この美術部には問題がある!』のOPテーマにある「強くて可愛い」イメージが、完全に覆される。ゆったりとした、柔らかくて温かい語り口が快く、イヤホンで聞くと吐息すら伝わってくる。
ただ、彼女の言うとおりに、楽にしていくだけでいい。「ゆっくり、ゆーっくり」「くたくたになってくる」と文字列だけだと表現しづらいが、実際に聞くと、こっちの思考のペースが緩慢になり、重くなる。話の継ぎ目に入れてくる、彼女の「あくび」が猛烈に可愛い。普通なら覚醒するはずなのだが、その「声」に抗えぬ。ファンタジーや伝奇モノで「声で支配する」能力があるが、まさにそれ。
結局、その兎の子がどうなったのかは知らないまま、落ちる。そう、墜落するように眠れる。普段なら、のどが渇いたり、ちょっとした物音で何度も目が覚めてしまうのだが、それもなかった。まるで、スイッチを切るように眠れる。
目覚めると、拭ったように明晰だ。こんなクリアな感覚は久しぶりだ。いつもは、どんよりとした意識で一日が始まるのに、まるでない。最初に考えたこと「腹へった」←これも数年ぶり。
そして今、完全に覚醒しているのだが、彼女の朗読を思い浮かべるだけでリラックスしてくる(「あくび」なんて脳汁が出るくらい)。おっと忘れるところだった、中村悠一ver.もある。魔法科高校の司波達也や、痛いナルシス・カラ松のイメージは完全にない。声はソレなのに、まるで違うのだ! 声優すごい。声に眠りを支配される喜び(?)を知るべし。
眠るのが下手な人にお勧め。スゴ本オフにも持っていくので、お試ししたい人は教えてね。

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