人生を変えたゲームと、ゲームが変えた人生───スゴ本オフ「ゲーム!」
好きな本を持ちよって、まったり熱く語り合うスゴ本オフ。読書会なのにいい汗かいた。ふだん使わない脳筋も、たっぷり働いてもらいましたな。
というのも、今回のテーマは「ゲーム!」だから。ゲームにまつわるお薦め本や音楽や映像、そしてゲームそのものを持ちよって、その面白さ・中毒性を語り合う―――だけでなく、持ってきたゲームで遊ぼうという「読書会」だったから。
そのゲームも、『ウミガメのスープ』のような推理ゲームだったり、「ぷよぷよ」のような携帯ゲーム、ドミノやオセロのようなボードゲームも種々様々。カードゲーム「ニムト」で脳筋を酷使したり、Wii「ハッピーダンスコレクション」でへとへとになるまで踊ったり。ブックトークといい、ゲームといい、大人が本気で遊ぶ場でしたな。
twitter実況のまとめは[人生を台無し or 激変させるドはまりゲーム『Fallout』『アサシンクリード 』から究極の意地悪クイズ『ウミガメのスープ』ギャンブラーのバイブル『金と銀』などスゴ本オフ「ゲーム!」まとめ]を見ていただくとして、ここではいくつかピックアップして、紹介された作品を並べてみよう。
わたしが紹介したのは『Fallout3』と『Fallout4』。ポストアポカリプスの世界を生き抜く、ロールプレイングゲームだ。「発売日は犯罪数が激減」とか「ハマりすぎて妻子と仕事を失った」とか伝説を更新する曰くつきでもある。レトロフューチャーで「いかにも冷戦」な設定と、放射性降下物質(fallout)の恐怖と隣り合わせの世界は、新しいのに懐かしい。いわゆる「オープンワールド」で、主人公はどこへ行ってもいいし、何をしても(どんな非倫理的な行為をしても)いい、なんでもありの全部入り。
『Fallout3』の目的が「父を探す子の物語」であるのに対し、『Fallout4』が「子を探す親の物語」であるのが意味深い。あと一手で決定的な状態になることは分かっているのだが、「終わらせたくない」「もっと浸っていたい」の一心で、メインクエストをわざと後回しにしている。安全に、完全に、狂人になれる世界は、わたしにとって結構重要。
ササキさんご紹介の、『この世でいちばん大事なカネの話』(西原理恵子)は教わるところが多かった。どこの親も悩ませる、「子どもとゲームの関係」への解の一つとして、「カネの話」がある。ゲームの世界での「カネ」に溺れるあまり、金銭感覚が麻痺することが最も恐ろしい。それを学んでもらうため、「ゲームのし過ぎでお金がなくなってしまった」リアルの恐怖を本書で知るのだ。わたしも、子どもに薦めよう。「マネーゲーム=人生ゲーム」という本質の半分でも子どもに伝えられればいいな。
着想がユニークなのが、みかん星人さんのご紹介。今年の大学入試センター試験「倫理・政経」の第3問を持ってきたのだ。というのも、囚人のジレンマがテーマだから。そういえば、問題文が変だと物言いをつける「識者」がネットに湧いたなぁ。二つの利益が相反する際、どうやって「落としどころ」を探っていくか? という状況なのだが、キューバ危機を空目するという指摘が面白い。そこからナッシュ均衡を語った川西諭『ゲーム理論の思考法』の紹介につながる。センター試験もそうだし、キューバ危機も然りだけれど、1回だけのゲームは、理論が成り立つか微妙かもしれぬ。なぜなら、理論が成立するための安定的な均衡状態(もしくは一定の式で示せる遷移)は、「1回だけ」では導けないから。
パッケージの勝利ともいえるのが、角川つばさ文庫『新訳 かがみの国のアリス』だね。わたしの頭の中の「アリス像」にぴったりの姿が表紙になっている。チェスの棋譜がそのままストーリーラインの隠喩になるメタ構造が面白い、いわば「ゲーム小説」の古典とのこと。アリスはポーン(歩兵)として扱われ、一番上の列に達するとクイーンに「成る」。そこには、いずれ大人になるアリスへの決別の意味が潜んでおり、泣き所の一つだという。これは、この角川つばさ文庫のパッケージで読みたい。
紹介された作品は以下の通り。あっという間の6時間でしたな。泊りがけでブックトーク漫談したり、徹夜でゲームしたいね。次回は「音楽」がテーマ、詳しくは[facebookスゴ本オフ]をご覧あれ。
■サバイバルゲーム
『エンダーのゲーム』オースン・スコット・カード(ハヤカワ文庫)
『All You Need Is Kill』桜坂洋(集英社スーパーダッシュ文庫)
『クリムゾンの迷宮』貴志祐介(角川ホラー文庫)
『ダークゾーン』貴志祐介(祥伝社文庫)
『マリア・ビートル』伊坂幸太郎(角川文庫)
『デニーロ・ゲーム』ラウィ・ハージ(白水社)
『韃靼タイフーン』安彦良和(MFコミックス)
『時のアラベスク』服部まゆみ(角川文庫)
■マネーゲーム
『海賊の経済学』ピーター・T・リーソン(エヌティティ出版)
『女騎士、経理になる。マンガ第1話コピー版』Rootport(幻冬舎)
『マネーの進化史』ニーアル・ファーガソン(ハヤカワ文庫)
『この世でいちばん大事なカネの話』西原理恵子(角川文庫)
『狼と香辛料』支倉凍砂(電撃文庫)
『銀と金』福本伸行(双葉社)
■スポーツゲーム
『甦る全日本女子バレー』吉井妙子(日本経済新聞社)
■ラブゲーム
『クロバス・カレシ』カレシシリーズ同人アンソロジー
『カレシ・レシピ』環方このみ(ちゃおコミックス)
■ゲームの本、本のゲーム
『ウミガメのスープ』ポール・スローン(エクスナレッジ)
『へんな生きものへんな生きざま』早川いくを(エクスナレッ ジ)
『へんな生きもの』早川いくを(エクスナレッジ)
「へんな生きもの」展 サンシャイン水族館
『失敗すれば即終了! 日本の若者がとるべき生存戦略』Rootport(晶文社)
『新訳 かがみの国のアリス』ルイス・キャロル(角川つばさ文庫)
『ゲーミフィケーション ゲームがビジネスを変える』井上明人(出版)
『ドラえもん科学ワールド 失われた動物と恐竜たち』(小学館)
『ゲーム理論の思考法』川西諭(中経の文庫)
『妖怪ウォッチともだちまるごとファンブック』別冊コロコロ(小学館)
『妖怪ウォッチBUSTERS 完全攻略本』(小学館)
『ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!』川上量生(KADOKAWA)
大学入試センター試験2016「倫理・政経」第3問
■音楽のゲーム、映像のゲーム
『ライフ・イズ・ビューティフル』ロベルト・ベニーニ監督
『ファニーゲーム U.S.A.』ミヒャエル・ハネケ監督
『ビデオゲーム the Movie』[youtube]
『ATARI GAME OVER』[youtube]
『Diggin' in the Carts』[URL]
『GAME』Perfume
■ビデオゲーム
『Portal2』(Valve Software)
『ハッピーダンスコレクション』namco/Wii
『大神 絶景版』playstation3
『メタルギア・ソリッド』playstation3
『アサシンクリード・シリーズ』playstation3
『Fallout 4』playstation4
『Fallout 3』xbox360
『スペース・インベーダー』(日本科学館)[URL]
■スマホゲーム
『Lifeline』(3Minute Games,LLC)
『Deemo』(Rayark International Limited)
『猫あつめ』
■リアルゲーム(ボードゲームやカードゲーム)
ブロックス
ドミノ
ニムト
絵合わせ「Kinder memory」
オセロ(リバーシ)
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コメント
どれも面白そうですね!ゲームという概念が現代では非常に広義に渡っていることがよくわかります。
連想した本がありまして、
ジョシュ・ウェイツキンの『習得への情熱』みすず書房
という本なのですが、チェスのトッププレイヤーで『ボビー・フィッシャーを探して』のモデルになった著者が、長じて太極拳に出会い格闘競技の推手で優勝するというかなり数奇な自分の半生を振り返りながら、チェスの習得と格闘技の習得には共通項があり、それは技術習得全てに敷衍することの出来るポイントだと論じる本で、数奇な人生以上にHow Toが興味深く、付箋を付けて読みました。
「数を忘れるための数」「より小さな円を描く」などの魅力的な方法論、フロー状態を作り出すためのルーティンをオーダーメイドで作る方法とか、面白かったです。
投稿: sarumino | 2016.01.29 16:03
>>sarumino さん
オススメありがとうございます! 『習得への情熱』は手に取ってみますね。昔々、努力の最適化手法を学ぶため、『上達の技術』『達人のサイエンス』に手を出したことがあります。それらと比べながら読めたら……と思います。
努力の最適化「上達の技術」
https://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2011/06/post-032c.html
投稿: Dain | 2016.01.30 20:52
おお!この本面白そうです!
大いに重なるところがありそうです。
アフォーダンスとの兼ね合いや、武術での「型」の必要性なんか、
合わせて読むことで重層的に考えられそうな感じがします。ありがとうございます。
投稿: sarumino | 2016.01.30 23:56
>>sarumino さん
武道に限らず、「型」はマスタリーへのショートカットだと思います。「型があるから型破り、型がなければ形無し」といいますから。
投稿: Dain | 2016.01.31 10:17