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ひきこもりの末路か、毒親の報いか『「子供を殺してください」という親たち』

「子供を殺してください」という親たち 550円、150g の文庫のくせに、読んでいくうち、だんだん重くなる。そしてどんどん怖くなる、そこらのホラーを蹴散らす黒さに囚われる。

 「子供を殺してください」とお願いする親は60~70代で、子は30~40代になる。比較的裕福な家庭が多く、そうでなくても生活に困らない収入(不動産、年金、遺産)はある。親は資産家だったり経営者だったり、国家公務員や大手企業に勤めている、いわゆる「勝ち組」。子どもは「勉強はできる子」で、高学歴な場合が多い。

 人間関係のトラブルがきっかけで会社・学校を辞め、後は転々とし、ひきこもる。アルコール、薬物、ギャンブル、ネットに耽り、家庭内暴君の如く振る舞う。深夜の奇声、近所での奇行、たまらず止めに入る親、部屋からは異臭がするが入れない。統合失調症、強迫性障害、パニック障害、どこで間違えたのか。病院やカウンセリング、警察の助けを求めると逆恨みされる。「俺がこんなんになったのは、オマエのせいだ」と刃物を持ちだす。親は、気力・体力・財力を使い果たし、疲労困憊となる。

 読み進むうち、どんどん苦しくなる。昔々、『母原病』がベストセラーだった頃を覚えているので、親の責任にしたい、という目線を止めることができない。「親の育て方が悪い」=「私には関係ない」にしたいのだが、思い当たる節々多々。いわゆる、「うちの子に限って」というパターンで、他人事とは思えぬ。

 著者はこうした親からの依頼を受け、精神障害者の人を医療機関へつなぐ「精神障害者移送サービス」を営む。そこで引き受ける「崩壊した家族」が生々しい。こういうサービスを利用する母集団だから選択バイアスがかかっているかもしれない(お金がない類似例はとっくに警察沙汰→刑務所)。それでも、身に詰まされる。

 なんというか、液晶に映るドラマでというよりも、いまここの延長上に確かにある「かもしれない」未来として感じとれる。なぜなら、わたしは知っている、「子どもは、親の言うことを聞くのは下手だが、親のすることを真似るのは上手」だから。子どもの行動を見て「嫌」なところは、わたしのコピーなのだから。著者はもっと刺さる言い方をする。

しかしそれもすべて、子供が両親から受け継いだものなのだと、私は思う。人が嫌がることを執拗にやる、無言の圧力をかける、言葉尻を捉える、嫌味を言う……親が「教育」や「躾」という名のもとにしてきたことを、なぞっているに過ぎない。

 そう、世間体を気にして「形だけ」の相談でエビデンスを残し、後は隠蔽したがる親、「私のせいじゃない」裏付けを求めてインターネットを漁り、納得できる診断名を付けてくれるドクターショッピングを繰返す親、「嘘ばかりつくのです」と子どもを非難しつつ嘘ばかりつく親、いずれもわたしになり得るから。

 どうすればいいのか? 著者自身の言葉で、その対策が聞ける。8/31(月)八重洲ブックセンターで、[説得のプロ 押川剛 トークイベント]があるので、聞きに行くつもり。

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コメント

問題が起きてからでは遅いのは当たり前。
だが、問題が表面化するのは取るに足らない末端の情報だ。

むしろ、人格形成がされる子供の時期に
家庭内環境などがどうであったのかのみが重要な論点となる。

この時期に正当な扱いを受けなかった子供は、
成功すれば、過去のことだと流すことになるが、
失敗すれば、過去の問題があった時点に固執することになる。

まぁ、個人を評価するものではなく、
経歴のみによって評価する社会であるというのも、
この問題の一旦を担って入るだろうから、
現状を変えたいのであれば、
人の評価の仕方を根本から変える覆すことが最低条件となるだろう。

投稿: | 2016.04.25 07:55

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