Pen【完全保存版】「犬と猫。」が良い
もっとも身近な動物、というよりパートナーというべき「犬と猫」の特集。とりどりの写真に癒され、動物学の視点で復習し、歴史や美術の中での位置づけに唸らされ、そして犬本・猫本のオススメに、積読山がまた高くなる。
犬と猫について語ったインタビューが愉しい。写真家の岩合光昭が、世界で出会った犬と猫の魅力を紹介する。例えば、イタリアでは野良猫のことを、「自由猫」と呼ぶそうな。イタリア男と同じで、イタリアの猫は撮られることを意識していており、決めポーズがあるという。
ハードボイルドの印象が強い馳星周が犬好きというのは、本誌で知った。ヴィーダ『フランダースの犬』を評し、「努力すれば夢は叶うというおたごめかしから遠く離れ、現実をリアルに描いていることに感銘を受ける」と語る。そして、単にリアルの厳しさだけでなく、ネロとパトラシェを描くことで、「愛は必要だとさりげなく示しているところが好きだ」と暖かい視線を感じる。
人間の秩序の外にいる猫について、町田康の指摘は正しい。彼に言わせると、猫がどんなに可愛いと思っても、(普通の人は)それほど細かく見ていないという。だから、小説家の文章を通じてみる猫は、いかにも猫らしいという。「確かに猫ってそうだよな、とうなずける。猫を見たときと、表現された文章を読んだとき、2度かわいいと思えるんです」。女と食べものが書けたら作家としては一人前と言われるが、これに猫も入るのかも。
モチーフとしての犬・猫に焦点を当てた考察が面白い。例えば、キャパの『スペイン、バルセロナ』で空襲警報の中、広場を駆け抜ける女と足下の犬を撮った一枚は、「キャパは女ではなく、犬を中心にシャッターを切っている」というキャプションが目鱗。確かに、この犬の躍動感が写真全体の切迫感を支配している。伊藤若冲『百犬図』とレオナルド・ダ・ヴィンチの『猫百態』を比べて悶えてもいいし、「仔犬は応挙、猫は国芳」と絵師対決を堪能してもいい。犬は写実、猫は擬人の傾向が見られる。鳥獣戯画からこっち、猫は擬人化に向いているのかも。ネコミミは今に始まったことではない。時代を問わず、「かわいいは正義」なのだ。
折も折、9/27オフ会のテーマは「猫と犬」。オススメの猫本や犬本、片方でも両方でも持ち寄って、まったりアツく語りましょう。本に限らず、音楽・映像・ゲームもOKですぞ。長丁場だけど途中参加・途中退場OK、どっぷりブックハンティングするのもよし、ちょっとだけブックトークするのもよし。参加希望の方は、facebook:スゴ本オフ「猫と犬」をチェックあれ。
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