【まとめ】「デブリ落とし」によるプチ・テロリズム
発端はSF小説『オービタル・クラウド』[レビュー]。スペースデブリ(宇宙ゴミ)を用いた新手のテロ手法を思いついたのが、[「デブリ落とし」というプチ・テロリズム]。インターネットは素晴らしい!専門家の方から問題点とヒントをいただいた。@lizard_isanaさん、ありがとうございます。
スペースデブリって何?→[宇宙ゴミ ― スペースデブリ/JAXA]
目的:数十万とも数千万ともいわれる軌道上のデブリを弾丸代わりにして、衛星にぶつけたり、地表の任意の場所に落とすテロリズム。
原理:地上から高出力レーザーで、デブリに電気を流す。地球という巨大な磁石の磁場にいるデブリは、流された電流によって力が働く(フレミングの左手)。わずかな力を与え続けることによってデブリの動きをコントロールする。
【問題1】レーザーで「電気」を伝えるなんて可能なの?
→レーザーを当てるだけで電流は流れません
「デブリ落とし」の問題点1について: レーザーを当てるだけでは電流は流れません。電気をマイクロ波やレーザーに変換して送信する研究が行われていますが、受信側に電気に戻す設備が必要です。ref. http://t.co/Ofd9paa3zM via @Dain_sugohon
— isana (@lizard_isana) 2014, 7月 28
レーザーで電気を伝え、衛星で電気にしてデブリに当てる方法が思いつくのだが、これだと衛星を上げなければならない。『オービタル・クラウド』に出てくる「持たざる国家」としては地上から何とかしたいもの。
ここから、何も「地表から」電気を伝えなくても良いのでは!?と考える。電離層にたっぷりある電子を用いて、すぐ傍の衛星軌道にあるデブリへ「電気」の形で伝えられないだろうか?ここを解いたなら、近未来SF小説としても安価なテロリズム手法としても良ネタができる。
【問題2】デブリが「どこ」にあるか特定できるの?Google?
→軌道衛星上のカタログはすでに公開されています[16000個の軌道上物体の現在位置]
「デブリ落とし」の問題点2について: 軌道上物体のカタログはすでに公開されています。参考)1万6000個の軌道上物体の現在位置 http://t.co/gybVYmEIHG ref. http://t.co/Ofd9paa3zM via @Dain_sugohon
— isana (@lizard_isana) 2014, 7月 28
待てよ……「軌道衛星上のカタログはすでに公開されています」ということは、『オービタル・クラウド』の主役が手がけてた、流れ星予報のWebサービスは「いま・ここで」できるということではないか!! なんという接近戦なSFなり。"フィクション"なのは、登場人物たちの度を越したスキルだけだね。
軌道上物体は既に秒速7km以上の速度を持っています。これを落とすためには高精度の制御と大きなエネルギーが必要です。現時点で人類は遠方から物体を物理的にコントロールする術を持ちません。そばに行くしかないんです。これがデブリ問題が問題である理由です。 @Dain_sugohon
— isana (@lizard_isana) 2014, 7月 28
弾丸よりも速いデブリを、地表から狙い撃つのは、ピストルでピストルの弾を撃ち落とすようなものかもしれない。ピンポイントで狙い撃つのは至難の業だろう。ここは発想を変えて、「壊れた時計でも一日二回、正しい時を指す」アプローチから考えてみよう。即ち、秒速7kmのデブリが通る"瞬間"を狙うのではなく、奴が通りそうなルートに電気を伝えることはできないだろうか。電子が豊富な電離層は高度50-500km、デブリがあるのは2000kmあたり。地表よりはマシとはいえ、遠いなぁ。
それでも、まだ気づいていない可能性がある気がする。子どもの頃は、「世界征服?原発の制御室を占拠すればお手軽だね」なんて気軽に考えていたが、高村薫『神の火』などから簡単にいかないことを知った。それでもチャレンジャーはひきもきらない。「デブリ落とし」は全く新しいアイディアで、できた人から世界を獲れる。新人テロリストが見つける前に、2020年までにモノにしたい。

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