スタンダードな読書会でスッキリ(第六回 東東京読書会)
たとえば凄く面白いミステリを読んだとき。
「あぁ、これはオススメしたい、語りたい」と強烈に、切実に、それこそ尿意のように感じる。でもね、それが面白ければ面白かったほど、言えない。展開どころか「○○みたい」すらご法度。せいぜい、どう感じたかを遠まわしにもどかしげに伝えるだけ。だから、「それぞれ愛読書をもちよる」形式のブックトークだと、伝えたいけど言っちゃダメという縛りにのたうちまわることになる(最近だと『パインズ 美しい地獄』、夢中本としか言えない)。
しかし、「全員がこの本を読んでいる」なら話は別だ。いわゆるスタンダードな読書会。真犯人が誰なのか知ってるし、ファイナルストライクも経験済み、だから安心して語れる。「スゴ本オフ」や「ビブリオバトル」、「ブクブク交換」などの紹介型ブックトークでは絶対に語れないネタが、ここではメインテーマになる。今回は、[東東京読書会]で、キャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』について、ずっと溜まりに溜まっていた思いを吐き出してきた。と同時に、さまざまな「読み」を学ばせてもらう貴重な場だった(未読の方には、これは鳥肌本としか言えない)。
たとえば、あの驚愕のラストについて、許せるか許せないかを互いにぶつけあう。これは、どちらに倒しても読めるのがミソで、「許せる」というなら、○○小説になるし、「許せない」とするなら△△小説になるだけ。翻訳者の務台さんご自身から、作品との出会いや思い入れをアツく語ってもらう。スゴい読書会なり。
さらに、再読を促す仕掛けが沢山あったことに気づかされる。わたしが見落としていた何気ない一文が、実は重要な伏線だったことを、改めて教えてもらう。また、サディー・グリーンとルージュ・ケンダルは、緑と赤の補色関係にあると同時に、クリスマスカラーであるという指摘に驚く。わたしが熱く疑問に抱えてた[クルマがなかった問題]も、まるで違う方向からのアイディアが出てきて嬉しくなる(読者から見たキャラクターの重みづけと、キャラクター同士の重みづけは異なるという指摘は重要なり)。
ありがたいことに、鉄板本をオススメされる。いわゆる、四の五の言わず黙って読め、絶対に面白いからというやつ。明日が休みのときに読もう。
コニー・ウィリス『航路』
ジョン・ファウルズ『魔術師』
ジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター』
ジェフリー・ディーヴァー『ウォッチメーカー』
ダシール ハメット『 マルタの鷹』
すばらしい場をもうけていただき、東東京読書会の世話人の方々に大感謝、ありがとうございました。

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コメント
東東京読書会世話人のひとり、島村です。
すてきな読書会レポをありがとうございました。Dainさんの疑問点をきっかけにディスカッションがいっそう盛りあがった印象がありました。感謝です。
よろしければまたご参加くださいませ。
投稿: 島村 | 2014.05.18 17:17
>>島村さん
ありがとうございます! わたしも読書会(というか本の紹介オフ)を主催しているのですが、ミステリ系はどうしても「言いたいけど言えないもどかしさ」に身もだえしています。そういう縛りのない、本来の読書会はたいへん貴重な体験でした。
また参加いたしますね。
投稿: Dain | 2014.05.18 21:36