『クリスマスに少女は還る』はスゴ本
自宅でよかった、わかったとき、叫び声が止まらなかったから。
いつもは痛勤電車が読書タイムなのだが、めずらしく家読みにしたのは、ミステリファンが太鼓判押してたから[読んでいただければ絶対に後悔はないと保証します][東京読書会より]。
結論→大正解。これは、徹夜小説であるだけでなく鳥肌本だ。視界が揺れて、涙と震えが止まらなくなったから。緻密に練り込められた、超絶技巧のサスペンスであると同時に、魂の救済と贖罪の物語でもあるから。ストーリーについては触れない。相変わらずAmazonはネタバレ炸裂なので、最小限のあらすじに留めよう。
クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。誘拐か?刑事ルージュの悪夢が蘇る。十五年前に双子の妹が殺されたときと同じだ。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れた───「わたしはあなたの過去を知っている」巧緻を極めたプロット。衝撃と感動の結末。超絶の問題作。
ネタバレにならぬよう留意しつつ、二点ほど。タイトルの『クリスマスに少女は還る』は非常に秀逸だ。return の「帰る」の他に、「めぐる」意味が込められている(わたしはそこに、輪廻の roop を見る)。緊張感をMAXまで高め、カタルシスを堪能した後、めぐりめぐって「還って」きたのは何か?という視点で見直すと、それぞれの過去、信念、愛にグッとなる。原題は"Judas Child"で、「友情を装った裏切り」「囮の子」という意味で、これはこれで意味深い。だが、あえてこのタイトルにした翻訳者に拍手したい。
もう一つ。かなり気になったところが。ある場所を捜査する際、クルマを止めていないことが明らかなシーンがある。従って、後からそこに来た人物は、間違いなく「おかしい」と思うはずなのに、そう思っていない。クルマ社会である米国では、その場所にクルマがあることは、誰かが居ることとほぼ同義で、翻って「そこにクルマがない」のになぜオマエがいるんだ!? という流れにならないのが、ものすごく引っかかる。
これ読んだ人とネタバレ全開で語りたい。課題図書つき読書会は、こんなとき嬉しい。第6回東京読書会でこの疑問をぶつけるつもり。

| 固定リンク
コメント