スゴ本オフ「酒」「2013ベスト」
好きな本をもちよって、まったりアツく語り合うスゴ本オフ[facebookスゴ本オフ]。
今回は(今回も)凄くて旨くて楽しいひとときでした。参加いただいた皆さん、お手伝いいただいた方、そして会場のEDITORYさん、ありがとうございます。
テーマが「酒」なので、酒にまつわる本ばかりではなく、めったに手に入らない日本酒や、幻の秘蔵ビール、珍しいワインやテキーラなど、酒そのものが集まって、宴会となる。さらに集まってくる酒をあてこんで、豪華な手料理やピザなど、うまいものが持ち寄られるお祭りとなる。さらにお祭りをダシにして、アオザイや着物やミニスカサンタなど、コスプレ大会となる。気づいた結論は3つある。
- 酒を決めるのは水
- 女性がコスプレすると、戦闘力が急上昇する
- 酒が人をダメにするのではない、もともとダメなことを気づかせてくれる
1. 酒を決めるのは水
驚愕したのが、仕込み水「花」。一升瓶に入っているので、てっきりお酒だと思っていたら、日本酒を造るときの水そのものだった。これをひとくち、飲ませていただいたところ……甘い(うまい)。どこにもひっかからずに、するすると飲める。新政「亜麻猫」(あまねこ)や辛口端麗「八號酵母」、純米大吟醸「百十郎」を試させてもらったのだが、旨い。すっきり・こっくりした感じで、自分の体温で香りが膨らんでくるのが分かる。
酒といえば「醸す」もの。『もやしもん』から得られた、一番重要なメッセージは、「酒は造れる」。薀蓄は作ってから言うべしとばかりに『台所でつくるシャンパン風ドブロク』(山田陽一著)をダシにどぶろく談義となる。米、水、麹、ベーキングパウダー、ヨーグルトで何とかなる。ビールは東急ハンズで何とかなるが、ワインが一番難しいそうな。挑戦するとき、いい水を使ってみよう(ただし酒税法は守りませう)。
2. 女性がコスプレすると、戦闘力が急上昇する
化粧とは、もともと美しい女性を、さらに魅力的にするもの。しかしコスプレは、その戦闘能力をブーストするものだと断言していい。アオザイの腰の三角ゾーンとかサンタコスの鎖骨が、酩酊おやじゴコロに突き刺さる。そして着物最強説。着るものによって行動が制限されるため、自然と楚々たる風情が生まれてくる。淡い桜色やくっきりした藍色、良いかな酔いかな。日常的に着るほど手軽なものではないけれど、イベントのときに「着物」という選択肢があるといいかも。
讃えるほうも、「誉めやすい」という利点あり。シャイボーイだったおっさんには、面と向かって女性を誉めるのは恥ずかしい。だが、コスは(大いなる)きっかけを与えてくれる。変身した姿に、言及しないわけにいかないから。また、「化粧が上手だね」はほめ言葉にならないけれど、コスプレは「コスがいいね」から入れる。メタモルフォーゼした女性に、まずコスを誉め、そして「とても似合ってる、素敵だ」と伝えやすいのだ。
これに酒を加えると、もっと強くなる。変身してほんのり上気した姿に結婚を申し込みたくなる。飲むほどに酔うほどに強くなる酔拳のようなもの。ただし急いで言い添えなければならないのは、酔拳は本当に飲んでいないこと。酩酊した動作を取り入れた戦い方であって、同様に本当に酔っている必要はないこと。ここ試験に出ます。「酔っちゃった…」は酒席プロトコル上のACKですぞ。
3. 酒が人をダメにするのではない、もともとダメなことを気づかせてくれる
程度はそれぞれだけど、人には「理性」というものが備わっているらしくて、普段の自分の欲望は、この「理性」なるもので蓋をされているという。これが、お酒を飲んで「理性」という箍が外れることで、隠れていた欲望が出てくる。いわば、欲望の限定解除(リミッターカット)やね。
tumblr経由で知ったのだが、出所は故立川談志みたい。曰く、「酒が人間をダメにするんじゃねえ。 酒は、人間ってのがもともとダメな生き物なんだだってことを気づかせてくれるものだ」。できたてのお好み焼きに顔を埋める夜、二日酔いで頭ガンガンする朝、自分のダメさかげんを思い知らされるが、『平成よっぱらい研究所 完全版』を読むと、わたしなんざまだまだ、とホッとする。ダメな酒なら、ビリー・ワイルダー監督の『失われた週末』を思い出すが、オフに持ってくるのを忘れてた。代わりに、現代の呑み助、中島らも、鴨ちゃん、吾妻ひでおが紹介される。個人を襲った狂気としての酒だと思う。『ガダラの豚』や『失踪日記2 アル中病棟』など、酒を魂レベルまで蒸留したからこそ、あんなにすごい作品になったかと。
さらに2013ベスト本の発表をする。育児から怪獣退治まで沢山のベストが集まるが、『宇宙船とカヌー』が嬉しい。ちくまで読んだのだが、星を目指した物理学者・フリーマン・ダイソンと、森を目指したその息子の物語。父と子、科学と自然といったテーマが、対立ではなく寄り添うように描かれている名著なり(amazonで長いことスゴい値段がついていたのだ)。
あまりに楽しすぎて、全部を網羅しきれないし、その楽しさの半分も伝えきれない。本も酒もご馳走も、一部だと思ってみて欲しい(特大ピザはそもそも撮るのを忘れてた、食べるのに夢中で)。そういや、みんな大好き村上春樹が一冊もなかったねとか、トンカツには熱燗が合うらしいので今度試してみようとか(ソース⇒福田和也・石丸元章『男の教養トンカツ放談 』)、架空の酒がホーガン『ガニメデの優しい巨人』しかないので、酒とは幻想を求める現実的な飲み物なんだねとか、『美味しんぼ』は日本酒編に限らずいろいろツッコミどころがあって、それも含めて楽しむマンガなのにとか、「赤ワインは室温で」と言われる室温は日本だと高すぎるとか。
『美味しんぼ』にツッコミを入れる人多数。
女の一人酒『ワカコ酒』が分かっていらっしゃる。
『夏子の酒』がKindleで読めるとは!酔い時代になったものよ。
水のようにいただく。
香りだけで胸いっぱいになる。もったいないのでちびちびいった。
定番のミスド。
手作りチョコレートケーキとウィスキーは合う。
課題もあり。次回までにQ2HD使えるようにしておきます(U-stream実況できずにごめんなさい)。今回の「酒」「2013ベスト」でオススメされたり言及されたラインナップは以下のとおり。杯を片手に吟味くださいまし。
-
とりあえず「ビール」
- 『マイケル・ジャクソンの地ビールの世界』(マイケル・ジャクソン)柴田書店
- 『GREAT BEER GUIDE 世界の一流ビール500』(マイケル・ジャクソン)ネコパブリッシング
- 『ビールの常識 絶対飲みたい101本』(藤原ヒロユキ)アスキー
燗も冷も「日本酒」「濁り酒」
- 『美味しんぼ』54巻「日本酒の実力」雁屋哲・花咲 アキラ(小学館)
- 『夏子の酒』尾瀬あきら(講談社)
- 『日本の酒』坂口謹一郎(岩波文庫)
- 『酒が語る日本史』和歌森太郞(河出書房新社)
- 『ドブロクをつくろう』前田俊彦(農山漁村文化協会)
- 『趣味の酒つくり』笹野好太郎(農山漁村文化協会)
- 『台所でつくるシャンパン風ドブロク―30分で仕込んで3日で飲める』山田陽一(農山漁村文化協会)
- 『日本吟醸酒協会』webサイト
- 『酩酊女子』酩酊女子制作委員会(ワニブックス)
人を饒舌にさせる「ワイン」
- 『ワインと外交』西川恵(新潮新書)
- 『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』三浦しをん(ポプラ社)
- 『vintage '06』角田光代ほか(講談社)
- 『ロマネ・コンティ・一九三五年』開高健(文春文庫)
- 『ソムリエ』甲斐谷忍(集英社)
- 『世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情』ベンジャミン・ウォレス(早川書房)
人を沈思させる「スピリッツ」
- 『アブサン』クリストフ・バタイユ(集英社)
人を華やかにさせる「カクテル」
- 『ガニメデの優しい巨人』J.P.ホーガン(創元SF文庫)
- 『昼下がりのギムレット』オキシロー(幻冬舎)
居酒屋の達人
- 『昼のセント酒』久住昌之・和泉晴(カンゼン)
- 『ワカコ酒』新久千映(ゼノンコミックス)
- 『居酒屋道楽』太田和彦(新潮文庫)
- 『超・居酒屋入門』太田和彦(新潮文庫)
- 『ニッポン居酒屋放浪記立志編』太田和彦(新潮文庫)
- 『ニッポン居酒屋放浪記疾風編』太田和彦(新潮文庫)
- 『ニッポン居酒屋放浪記望郷編』太田和彦(新潮文庫)
- 『酒肴酒』吉田健一(光文社文庫)
- 『男の教養 トンカツ放談』福田和也・石丸元章
ほろ酔い~酩酊
- 『百人一酒』俵万智(文春文庫)
- 『もやしもん』石川雅之(イブニングKC)
- 『うまい酒の科学』独立行政法人 酒類総合研究所(サイエンス・アイ新書)
- 『イスラム飲酒紀行』高野秀行(扶桑社)
- 『落語家のやけ酒、祝い酒』立川談四楼(PHP研究所)
- 『対談 美酒について』開高健・吉行淳之介(新潮文庫)
- 『巴里の憂鬱』ボードレール(新潮文庫)
- 『グレート・ギャッツビー』フィッツジェラルド(光文社古典新訳文庫)
- 『ルバイヤット』ハイヤーム(ちくま学芸文庫)
- 『酒の肴・抱樽酒話』青木正児(岩波文庫)
- 『華国風味』青木正児(岩波文庫)
- 『文学ときどき酒』丸谷才一(中公文庫)
- 『おいしいお酒の本』稲垣真美(三天書房)
- 『バッカスとミューズの贈り物。酒の本棚・酒の寓話』コリン・ウィルソン(サントリー博物館文庫)
- 『歌舞伎名作撰 棒しばり・年増・供奴』DVD(NHKエンタープライズ)
- 『スペンサーの料理』東理夫(早川書房)
泥酔、痛酒、駄目酒
- 『今夜すべてのバーで』中島らも(講談社文庫)
- 『平成よっぱらい研究所 完全版』二ノ宮知子(祥伝社コミック文庫)
- 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』鴨志田穣(講談社文庫)
- 『毎日かあさん』西原理恵子(毎日新聞社)
- 『カフェでよくかかっているJ-POPをボサノヴァカバーを歌う女の一生』渋谷直角(扶桑社)
- 『DINNER』平山夢明(ポプラ文庫)
- 『失踪日記2 アル中病棟』吾妻ひでお(イースト・プレス)
2013ベスト
- 『宇宙船とカヌー』ケネス・ブラウアー(ヤマケイ文庫)
- 『バイダルカ』ジョージ・B. ダイソン(情報センター出版局)
- 『人が集まる「つなぎ場」のつくり方』ナカムラクニオ(阪急コミュニケーションズ)
- 『ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年』奥野修司(文春文庫)
- 『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン(新潮社)
- 『マルセロ・イン・ザ・リアルワールド』フランシスコ・ストーク(岩波書店)
- 『ポンテのはる』オスターグレン晴子/エヴァ・エリクソン(福音館書店)
- 『おふろでちゃぷちゃぷ』松谷みよ子/いわさきちひろ(童心社)
- 『アメリカ南部の家庭料理』アンダーソン夏代(アノニマスタジオ)
- 『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ(ハヤカワ文庫NV)
- 『やさしいデザイン』武田瑛夢(エムディエヌコーポレーション)
- 『あそび心を伝えるデザイン』ヴィクショナリー(グラフィック社)
- 『パシフィック・リム』アレックス・アーバイン(角川文庫)
- 『帰りたかった家』青木玉(講談社) >
「SFとは、未来世界のお話ではなく、過去に起ったことを未来に投影したもの」という主張に激しく納得。
『平成よっぱらい研究所』は2ページ読んだだけで、とても駄目な呑兵衛の話であることが分かった。
『ロマネ・コンティ』が被る。さすが開高健。
『世界の一流ビール GREAT BEER GUIDE』を書いたビール界のマイケルジャクソンは、「ホップの帝王」という異名らしい……
絶品のローストビーフ。ホットワインと合わせて至福の時間。
本をダシにしてオトナが全力で遊ぶのがスゴ本オフ。ご興味ある方は、facebookスゴ本オフまでどうぞ。あなたの知らないスゴ本は、きっとここに集まっている。

| 固定リンク
コメント
酒も旨そう、また本は岩波文庫がたくさん並んでるみたい。羨ましい!ちょっと見、ごめんなさい。
投稿: 明朗太郎(仮名) | 2014.01.28 05:48
>>明朗太郎(仮名)さん
ちょっと見、歓迎です、ありがとうございます。本好きは食いしんぼで、お酒も好きというのはだいたい合っています(下戸な人は食いしんぼup)。いい本・酒・食があったら、ぜひ!
投稿: Dain | 2014.01.29 00:19