結婚は素晴らしい v.s. 結婚は人生の墓場
オススメ本を持ち寄って、まったりアツく語り合うスゴ本オフ。今回は「結婚」をテーマにした作品が集まったぞ。シーサー株式会社の一室を会場にして、結婚に夢を抱いている未婚の方も、結婚にだいぶ疲れた既婚の方も、生々しい話に及ぶ。
今回はいつもと違って、二つのアプローチから選んでもらった。すなわち、「結婚は素晴らしい」という肯定派と、「結婚は人生の墓場だ」という否定派だ。
最初は、結婚のダークサイドな作品が中心に紹介されていたけれど、後半になるに従って、結婚をポジティブに捉えた本が続々と出てくる。そういや、「結婚は人生の墓場」という人には、「夜は墓場で運動会」と返しなさいって、ばっちゃが言ってた。
著者対決も面白い。林真理子のネガティブv.s.西原理恵子のポジティブを並べてみると、如実に出てくる。ゴジラ対ガメラの対決じみてて面白い。どっちに軍配が上がるかはレポートしているので、ご自身で判断してほしい。
もちろん結婚にはその両面が間違いなく存在するが、「なぜそれを選んだのか」を語ることは、そのまま本人の結婚観(未婚なら結婚願望感)が透けて見えて、非常に興味深い。本を通じて本人がプロファイリングできる場と相成った。わたしが選んだのは、以下からたぐれる。
結婚のスゴ本
【私のハマった3冊】この世で最も危険な食べ物“結婚”を解毒する三冊
たった数回のサンプル数で、分かった気になって語り出すのが「結婚」。そしてそれが、見事に色々ある。わたしなんざ、「サンプル数=1」で語っているから痛すぎるかも。「仕事」や「社会」もそう。普通こういうのは、酒が入って呂律が回らなくなりかけた時に、ひょっと出てくる本音だけれど、本をダシにすると滑舌がよくなる。
だから、つがい方は人それぞれ。安穏とした墓場かもしれないし、航海を共にする同志かもしれない。
面白い「読み」も紹介される。スゴ本オフが素晴らしいのは、新しい本との出会いだけでなく、既読本の新しい読み方が出てくるところ。かつて、『十五少年漂流記』をBLとして読み直した方がいらしたが、今回はパワーアップしている。
例えば、ガース・ウイリアムズ『しろいうさぎとくろいうさぎ』をBLとして読むとすごいらしい。また、『源氏物語』の浮船のくだりは、ディカプリオ『タイタニック』という喩えが面白い。「源氏物語で幸せになった女は誰一人としていない」という意見があったが、確認したくなる。結婚を「事業」として捉えると、「欲望の分散発注」とか「男はリストラされないように再契約を」という主張になる(岡田斗司夫だ)。俺様結婚観の一つとして拝聴する。
ユニークな結婚観も飛び出る。「結婚したい女子」と「仕事をしたい女子」は、だいたい20年の間隔で入れ替わるという指摘に頷く。これは、その母親が反面教師になっているのがカラクリ。「結婚すればなんとかなる」と思っている女子にガツンとくるかも。
みなさんの事前のコメントに加え、オフ会での発言を織り交ぜながらご紹介。人称が変なのはご容赦。
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■結婚は素晴らしい(結婚ポジティブ)
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『アンナ・カレーニナ』トルストイ(光文社古典新訳文庫)
読めば結婚が捗る。アンナは、どうすれば結婚を破滅に導くか、リヨーヴィンは、どうすれば満足度の高い結婚へと至れるか。アンナはネガティブだが、もう一人の主人公リヨーヴィンを追うと、結婚にポジティブになれる。
『乙嫁語り』森薫(エンターブレイン刊)
12歳の旦那と結婚した20歳の嫁。世界は中近東。世界が違っても、結婚生活の基本は違わないのではないか。家族、相手を思いやる気持ち、自分の役割など結婚って本当はこんなにシンプルなものなんだよ、と教えてもらえる。
『ゼクシィ』リクルート
これこそ結婚をポジティブにとらえた究極のスゴ本。ただし重量は4kg弱で、鈍器としても使用可能。
『おセイさんのほろ酔い対談』田辺聖子(講談社)
作家系中心に夫婦をネタにした対談エッセイ。ラインナップがイイ。井上ひさしさんとか。女房が歌うとヤバい~という話が面白い。笑いあり、毒あり、結婚してるほど味わい深い。
『ベスト・パートナーになるために』ジョン・グレイ(三笠書房)
マニュアルっぽい。男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきたという。(『地図が読めない女~』に似てる)。
『スナックさいばら おんなのけものみち』西原理恵子(角川書店)
一見、結婚の毒本みたいに見えるが、おおらかな気分にさせてくれる、紆余曲折しつつやっていけるような本。林真理子と読み比べると、女として、どっちがあっぱれか分かる。結婚だけじゃなく、恋愛から出産、子育てまで、女の人生の真実をズバズバ語っている。特に結婚に関しての女サイドの意見がどれもリアルで男性にもぜひ読んでほしい。そして、イヤなことも辛いこともあっても、結局「結婚ってイイ」と思えるところがスゴい。
『ほんとに建つのかな』内田春菊(祥伝社)
実録・家づくりドキュメントコミック。子どもが四人居て、全部父親が違う春菊。お舅さんとのバトルが凄い
『カレーライス』KAN
結婚てこういうもんだよね、ということをストレートに歌った曲。色々あるけど、「一度さめて、またあっためて、それでいい」んだよ。肩の力が抜けててすごくいいのは、KANの結婚生活がすごくいいからなんだろう。
『西原理恵子の「あなたがいたから」』NHK「こころの遺伝子」制作班
サイバラと鴨ちゃんのアル中との戦いの話。壮絶な中でも最後は夫婦の絆が精神を救うというのが、キレイゴトでなくどろどろと生々しい状況下でも滲み出てきている点がおすすめ。結婚なんてキレイでタノシイばかりじゃない、人生という戦場を一緒に駆け抜けてく同志なんだよと。還ってくるところは、パートナーなんだな、と思わせる。喪ってはじめてわかる関係もある。何度もリフレインしたり反省できる本。
『乗り移り人生相談』/『人生は冗談の連続である。』島地勝彦(講談社)
週刊プレイボーイの編集長のエッセイ。柴田錬三郎、開高健の人生相談担当だった著者に三大文豪が乗り移り、現代人の悩みに答えまくる。会社のカネも使い、自分の財産も使い、カネのかかるたいていのものをやり尽くした、やりたい放題した人の人生相談。一筋縄でゆかなさそう。「飯を食ったらヤるもんだ」という発想がすげぇ。ロードマップかよ。凄い人なり→『乗り移り人生相談』。テイストはイタリアンなホイチョイプロダクション。「食事には誘うんだけど、ヤりたいそぶりは1mmも見せるな」というスタンスは面白い。これを繰り返すと落ちるらしいwww つーか、落ちる人を選んでいるマーケティングの勝利だと思う
『夏雪ランデブー』河内遙(祥伝社)
低温一途青年×さっぱり未亡人×草食系執着霊の3者が紡ぐ純情三角関係(amazon評)
『このたびは』えすとえむ(祥伝社)。テーマが冠婚葬祭での人生の瞬間を切り取ったオムニバス。相手を含めて家族って面倒くさいんだけど、一番頼りになるし、安心できるのも家族なのだ。結婚の話がいい。ちょっとしたサプライズにほろっとくる
『隣にいても一人』平田オリザ
オリジナルの脚本で、ネットで注文して入手可。「ある日、結婚することになりました」という不条理を、なんとなく分かる戯曲。劇的なものがない結婚。まさに「隣にいても一人」が結婚なのだろうか。
『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』深尾葉子(講談社):日本人はなぜ生活水準が高いわりには不幸なのかという謎を解き明かしたもの。タガメという虫と、樽のタガを掛けている。日本の男は奥さんに吸い取られているから経済が回らないんだという本。発想が面白い。「いい男がいない」と愚痴る若い女向けに、「いい男とは何か」を考えさせられる。
『サムライカアサン』板羽皆(集英社)
強力な結婚ポジティブ本。家族愛が熱いマンガ。好きなもの好きと大事なものを大事と言うこと、言えることの素晴らしさを教えてくれて、自分もこういう親や夫でありたいと思わせる一冊。
『氷と炎の歌』ジョージRRマーティン(早川書房)
最悪というのとは違うが、少し変化球。大サーガを編む複雑な人間関係、その縦糸が血のつながりなら横糸が婚姻関係、そこには愛情、愛欲、権力欲など様々なものが絡みついている。
『海からの贈物』アン・モロウ・リンドバーグ(新潮文庫)
女が好きな人に出逢って、結婚し、子どもを産み、さまざまな役割を荷うなかでどうやって心の平安を保ち、夫や子どもたち、社会と向き合っていけばよいかを考える本。こんな素晴らしいロングセラーがあったなんて知らなかった、読みたい(吉田健一訳が鉄板だって)。
『さよなら、ソニヤ』アンジェロ・ロメオ(求龍堂)
ホロコーストを生き延びた天蓋孤独の少女ソニヤとNY生まれの青年アンジェロが出会い、惹かれあって結婚した。夫婦で写真家となったふたりの作品はメトロポリタン・ミュージアムをはじめ多数の美術館やギャラリーを飾っている。無二のソウルメイトとして深く愛し合うふたり。やがて、ソニヤが癌に冒され……
『式の前日』穂積(小学館)結婚が素晴らしいというよりは、この短編集で描写されているキャラクターの背景を想像するのが楽しかったのかも。結婚する当人ではなく、祝福される側、残される側にも色々な思いがあるのだな、と。
『未来予想図』志羽竜一(メディアファクトリー)
きっと何年たっても、こうしてかわらぬ気持ちで過ごしてゆける……互いに深く信じあった恋(amazon評)
『結婚写真』中江有里(小学館)
結婚とは、家族とは、女とは、幸せとは?「独り立ちしていく逞しい現代女性の姿を描いた爽やかな物語(amazon評)
『進化と人間行動』長谷川寿一、長谷川真理子(東京大学出版会):東大の教科書(般教かな?)生物的・遺伝的に考えて、人の婚姻システムを考察する。進化生態学からした結論は、「一夫一妻が良い」とするが、島耕作と比較したプレゼンが面白すぎる。
『塩狩峠』三浦綾子(新潮文庫)
これを結婚本として出してくセンスが素晴らしい。結婚の愛を人類愛にまで拡張している。
『細雪』谷崎潤一郎(中央公論社)
細々とした人間関係の機敏の描写がとてもうまい。結婚をとりまく姉妹関係が優美で良い……というご紹介。蛍狩のワンシーンは鳥肌ものの絶品なので、うつくしい日本語を読みたい方はぜひ。
『人生はあきらめるとうまくいく』ひろさちや(幻冬舎)
結婚のみならず人生の本。「がんばる」は耳に心地よいかもしれないけれど、悪だよ、と教えてくれる。「あきらめる」はイイことだよ、ということが分かる。期待しなければ失望することもない。フラットな気持ちになれる。
『神去なあなあ夜話』三浦しおん(徳間書店)
都会に住んでいる若い男がやることがなくて三重の山奥で林業をする。神去村の神話伝承から夜の生活まで。過疎の村。独身は自分ともう1人女性だけ。素敵な人なのでいつか付き合いたい……林業エンタテイメント。
『理系クン 夫婦できるかな』高世えり子(文藝春秋)
便利な(×)頼りがいのある(○)夫の話。お互いのバカさかげんが分かるのがいい。結婚って、サンプル数が1~と小さいのに、(私をはじめ)皆さんが語る語る結婚観が面白い。
『そうか、もう君はいないのか』城山三郎(新潮社)
奥さんが他界して、ちょっと参った三郎さんに、娘さんが心配するストーリーらしい。この「君」とは奥さんのことだって。A.ビアスの「人が頭がおかしくなるとやることが二つある。一つは自殺、もう一つは結婚だ」という箴言が刺さる。40超えたら絶対読め、という本らしい
「ぽっかぽか」深見じゅん(集英社)
特別なことは何も起こらない、家族と過ごす日常こそが最大の幸福を教えてくれた本。ここに書かれている夫婦が理想、これが結婚というものならば結婚したい!という、結婚ポジティブマンガ。お見合い結婚して、結婚してからゆっくり恋愛しようね、というスタンスがいい。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』ガース・ウイリアムズ
「君とずっといたい」というお話。白いうさぎと黒いうさぎたちが真実の愛を見つけるまでを描いたラブストーリー。驚くべき「読み」が紹介される→これって、男×男の話じゃないのか……という指摘がすごい。「え~!?」という反論と、「同性婚もアリ」という賛同。これは読みたい!BLとして読めるのか~
『喰う寝るふたり 住むふたり』日暮 キノコ(徳間書店)
交際10年、同棲生活8年の恋人以上、夫婦未満のアラサーカップル。ユニークなのは、二話で一つになっているところ。同じイベント(喧嘩するとか、実家の話とか)を、男の視点で一話、女の視点で一話の構成で描いている。伏線の回収や男女の心理のネタバレに満ちており、ニヤニヤしながら読める。
『娚の一生』西炯子(小学館)
晴耕雨読的女一匹人生物語らしい。結婚に必要なのはよりかかること。ドライだけど凄いファンタジーだから、男子のファンタジーである『島耕作』と比べて読むと面白いかも。
『地球恋愛』ヤマザキマリ(講談社)
中年の男女が寄り添うかたちが、昔のチャーミーグリーンのCMでおじいちゃんとおばあちゃんが手を繋いで歩く姿と重なる。世界各地の中高年の恋愛模様で、未婚者には理解されにくいかも。出稼ぎから帰ってこない夫を待って、立ち退きと戦う話とか。冴えない男だけどモテる理由だけど。こうゆう結婚できたらいいなあ、と。読む人に人生経験があればあるほど、味が出るらしい。
『パーマネント野ばら』『鳥頭紀行』『毎日かあさん』西原理恵子
結婚というか家庭の話。無頼派マンガ家、西原理恵子の赤裸々な家庭生活を笑い飛ばす『毎日かあさん』と、夫の故・鴨志田穣との出会いを描いた『鳥頭紀行 ジャングル編』も一緒に。最悪な男どもに対して、「男は、はようにおらんになるの限るなー」と言い放つ、雑草のような女たちの物語。今回の「結婚」をテーマに集まった本は、サイバラ率高し。結婚を語るには外せない人なのかも。
『ダーリンは外国人』小栗 左多里(メディアファクトリー)
外国人うんぬんではなく、義理の家族の話とか。道しるべになる。外国人とか関係なくて旦那のトニー・ラズロが宇宙人なんだよね(でみんなの意見一致)
『向田邦子の恋文』向田和子(新潮文庫)
向田邦子は結婚せず、不倫を続けていたまま無くなった。死語見つかった5通の手紙を妹の和子さんが考察する。人のクラスタから一人を選ぶというのは精神的な結婚なのではないか。公的な結婚は契約にすぎないのだ。
『妻の超然』絲山秋子(新潮文庫)
猛毒本。妻の独白による3つの短編。結婚って些細なことが疑惑となる。90日サイクルの浮気。妻は超然とするしかない。読むとつらいけど、最後まで読みとスっとする。これが結婚だよな、と。日々、つまらないこともある中で、これがあるから結婚を続けられるんだな、と。凄く面白い。結婚したいと思っている女性は読んで欲しい。男性が読み上がると縮み上がってしまう。どの言葉もいちいち心に刺さる。辛くて読むのをやめてしまいたい。でも面白い! 最後まで読み通した時の爽快感たるや!
『長い道』こうの史代(双葉社)
結婚はイベントではなく、長い長い生活だということが分かる。その中で、小さいけれど嬉しいことを見つけていくのが、幸せな結婚なのだ。人それぞれ、小さすぎて見えない幸せを、ひとつひとつ形にしてくれるこうの史代は、あたたかい。
『フリーダム』ジョナサン・フランゼン(早川書房)
米国のミドルクラスに属する夫婦の半生を描いた作品。21世紀にはいって50代くらいという設定。現代の米国の家庭像、政治観、夫婦観、宗教観などなどの一断面を眺められる。日本からはちょっと想像するのが難しい生活とか夫婦観かも。
『セキララ結婚生活』『7年目のセキララ結婚生活』『いっしょにスーパー』けらえいこ(メディア・ファクトリー)
独身時代、同じ著者の『たたかうお嫁様』で「結婚式」というものを知り、この3冊で「結婚生活」とは何かを知る。性格も育ってきた環境も違う2人が、いかにして「生活」を成り立たせていくか、というとても根本的なところを、ヘタウマっぽい絵柄と面白おかしい表現で描いており、とても楽しく読める。
『宋姉妹―中国を支配した華麗なる一族 (角川文庫) 』伊藤 純、 伊藤 真
戦略結婚のような感じもし、純粋さとは異なるが、三姉妹それぞれが、理想や目的に沿って結婚して国が動いたというのはある意味圧巻。
『きみに読む物語』ニック・カサヴェテス監督/ライアン・ゴズリング主演
1人の人を思い続けるのはこういうことなのか、に対する一つの解になる。純愛に泣ける。
『ビューティフル・マインド』ロン・ハワード監督/ラッセル・クロウ主演
数学者ジョン・ナッシュの話だが、数学的な話ではなく統合失調のナッシュを支え、それに応えようとした家族がテーマ。各自が目の前にある物事を認め、共に1つのことに向き合って進んでいく姿は、ただただ誠実な印象を受ける。
『生むと生まれるそれからのこと』岩井秀人脚本(NHKドラマ)
「線引き」を大事にしている、超個人主義のカップルの話。妊娠が発覚するが、それでも個人主義を貫く。でも、だんだん二人の関係が変わっていって、「他人は自分とは違う」ことを大切にした夫婦になっていく。向田邦子賞を受賞。結婚であっても「普通」に縛られなくていいんじゃないかと安心できる作品(月刊ドラマ2012年7月号にシナリオ掲載)。
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■結婚は人生の墓場だ(結婚ネガティブ)
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『愛しのアイリーン』新井英樹(太田出版)
結婚とは、sexと欲望の交換であることを突きつけられる(欲望は、肉欲、自己顕示欲、安楽欲etcに置換可)。読めばガツンとくる、劇薬度の高いコミック。
『結婚のアマチュア』アン・タイラー(文春文庫)
めくるめく魔法にもシンデレラ・タイムがあるのです。それに気づかないところから不幸が始まる……結婚のレベルは、何年やっても、誰とやっても変わらない。誰しも結婚のアマチュアであることを思い知らされる。「あわてて結婚、ゆっくり後悔」まんまの結婚生活。
『夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか』タラ・パーカー=ポープ(NHK出版)
原題は「結婚のサイエンス」。医学、脳科学、心理学の観点から、より健康的な夫婦関係を築くための実用的なアドバイス。
『素晴らしい結婚生活』スティーヴン・キング(文春文庫)27年間も幸せな結婚生活を送っていたと思っていたら、夫はシリアルキラーだったという話。気づいた妻がどう考え、何をするか?ウィリアム・カッツ『恐怖の誕生パーティ』と一緒で、「夫婦は絶対わかり得ない」が底にある。
『死の棘』島尾敏雄(新潮文庫)
奥さんが旦那の浮気で気が狂っちゃうんだそうで、結果として旦那も爆発するっていう恐ろしい本。愛とは執着だからこそ、結婚とは地獄の契約であることが分かる。
『不機嫌な果実』林真理子(文春文庫)
結婚の毒本。「フツウの結婚」をした女の人生にポッカリ空いた落とし穴。こんなはずじゃなかった、と思う彼女の心情を嗤える女はどれくらいいるのか。「わたしはいつも損をしている」というセリフにぐさっとくる。お金があって時間もあって、何も不自由していないのに、不倫に走る話。独身の時に読んだら、「やっぱり結婚したって駄目じゃん」と思わせる。
『フロン―結婚生活・19の絶対法則』岡田斗司夫(幻冬舎)
既婚男が読んだら、「俺、リストラされる」と衝撃を受けるらしい。「結婚するんじゃなかった」と思う妻がかなりいるんだって。「私は損をしている」というのが理由らしい。林真理子の『不機嫌な果実』でも出てきたセリフ。生涯一人の人に添い遂げる結婚という制度は、もう時代遅れ。母子の「シングルマザーユニット」を中心とした一妻多夫制度を提案する……夫婦関係の本質に気が付かされる。「フロン」とは、「夫論」もしくは「婦論」にも読める。
『悪女と紳士の経済学』森永卓郎(日経ビジネス人文庫)
で、恋愛市場を開放しなさい、という主張。仕事、家庭、恋愛の三権分立をすれば、みんながハッピー、生涯ときめいて活き活きできる。仕事を家庭に持ち込まない、家庭を恋愛に持ち込まない、恋愛を仕事に持ち込まない。ネタとして面白い。
『ボヴァリー夫人』フローベール(岩波文庫赤)
ふわふわする空想癖から虚栄と不倫に身を滅ぼす妻の話。オチは「ないわー」らしい。amazonの評が賛否両論に割れているのも愉快。
『崩れる』貫井徳郎(集英社)
結婚にまつわる八つの風景。崩れる女、怯える男、誘われる女、ストーカー、家族崩壊など、どれを読んでも(特に男性は)、妻への見方が変わってしまう?結婚、子育て、家庭に入りこむ「厭な話」、ホラーなの? 発言小町でよく見られるお話が詰まっている。
『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』北原みのり(朝日新聞出版)
最悪かどうかは別ですが、結婚詐欺より確実にタチの悪い犯罪。でもこれも結婚という言葉に囚われてしまった人間の物語。kindle版でプレゼンされたのだけど、参加者が一様に「おお~っ!」と声を上げたのが印象的。
『共依存』信田さよ子(朝日新聞出版)
「私がいないと、あなたは生きていけない」という幻想の背後にある「共依存」の罠。引きこもりの息子と母、アル中の夫と妻など、「○○という駄目な息子・夫を支えている私」という存在。駄目な息子や夫が立ち直ってしまっては困る。なぜなら、それを支える自分が自己否定されるから。「家事が出来ない夫」を主張することで、家事ができる私の肯定につながる。
『セカンド・バージン』大石静(幻冬舎文庫)
「結婚」そのものでは無く、それから生じる年齢差や社会的地位の不協和音が、どう変質し、闘い、崩れ去って行ったのかを、わずか270ページの中で、独特の腐臭を含んで語りつくした傑作。「結婚に正解なし」であることが分かるサラリーマン・ファンタジー。
『夢の浮橋』倉橋由美子(中公文庫)
深窓の令嬢、桂子は、学生運動を尻目に学業にいそしんでいる。そんな桂子にも思う人があった。耕一である。働くことなど望まない桂子は、耕一との結婚を望んでいる。だが、なぜか親が頑として首を縦に振らない。そんな両親には秘密があった。月に一度、京都のお茶会へ夫婦そろって出かける。ふたりは長年にわたり、ある夫婦とスワッピングに応じていた……
『課長 島耕作』弘兼憲史(講談社)一人の女の人に結婚で縛られるよりも,道行く先で女の人に出会って恋を重ねたほうが楽しいんではないかと思える。確かに最初から破綻した結婚生活だけど、これを結婚本として持ってくるのは、極めつけの反面教師やね。大まじめにサラリーマン生活のバイブルとして信じているけれど、これはファンタジーなんだよッ。
『行人』夏目漱石(新潮文庫)
思想にしばられた感情が悲鳴をあげるさまが他人事でないように感じられる。妻の直からしたら、こんな結婚はたまったものではないだろうなあと。
『カポーティ短編集』トルーマン・カポーティ(ちくま文庫)
失意の日々の中、読んでのけぞるほど恐ろしい戦慄を受けた本。『楽園へのい小道』が特にスゴいらしい。結婚できない女性が、葬式とかで出会いを求める話。
『飆風』車谷長吉(講談社)
ほのぼの絵本との落差がいい。生きることは自他を痛めつけること。結婚のパートナーにおける他者性に悩む男の話。『死の棘』のブラックな世界から距離をおいた冷静な妻の対比が面白い。併せて読むといいのかも。
『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』エイドリアン・シェリー監督/ケリー・ラッセル主演
「相手を選び間違えたら、結婚は最悪だ」という作品。離婚しようとしていた、身勝手で子供で暴力夫の子供を妊娠してしまった主人公の話。ジャンルはラブコメだが、この暴力夫の描写がリアルで辛くて、本当に見てて辛くなる。吐き気がするほど嫌なシーンもあり。舞台は閉そく感が感じられるアメリカの片田舎で、パイを作ることだけが得意な主人公にとってはこの最悪な結婚から逃れることがすごく困難。相手を間違えば、離婚すればいいのではなく、離婚することすらものすごく大変になる。
『話を聞かない男、地図が読めない女 男脳・女脳が「謎」を解く』アラン ピーズ、バーバラ ピーズ
ベストセラーにもなったので賛否両論あるが、結婚する前にざっくりと意識や認識のズレを埋めるには役立ちそう。
次回は、来週。「学校」をテーマにやりますぞ。

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