お弁当なのに暖かい「おべんとうの時間」
おべんとうと、その持ち主(食べる人)をひたすら撮ってインタビューしたもの。海女さん、駅長さん、高校生、おばあちゃん、幼稚園生、教授、麺職人、営業マン―――市井の、ごくフツーの人たちの平々凡々な人生が語られるかとおもいきや……良い意味で裏切られる。
おべんとうに込められたメッセージや、そこに至る思い出や絆がこみあげてくる。おべんとうを通じて、その人の人生や人となりをうかがい知る。そのおべんとうにまつわるエピソードや、子どもの頃の美味しい思い出に、その人の温かみが伝わってきて、うっかりするとハートを持っていかれる。ちょっとヨレってしんどいとき、手にするといい。
丸、四角、タッパーから竹の皮まで、弁当箱はバラエティさまざま。添えられたお箸も気になる。ご飯・おかずから、その人のご家庭の雰囲気や、(見えない)作り手の考え方まで伝わってくる。食べる人の年齢や仕事を思いやっていることが伝わってくる。
弁当ってふたりで食べるものだと思うんです。作る人と作ってもらう人のふたり。作ってもらう人の気持ちは伝わるから、ありがたいなぁって思います。そしたら、何も言えないです。すこし照れて、「ひとさまに見せるような弁当じゃないの」とか、「冷蔵庫のありあわせを詰めてきたんだから」と言いながら、食べてる姿はどれも最大の笑顔だ。そういや、わたしがおべんとうを作ってもらっていたときは、わたしもこんな顔していたのだろうか。
おべんとうの数だけ、物語がある。おべんとうなのに、あたたかさが伝わる一冊。本書は「スゴ本オフ@チェックでピクニック」で知った。gommさん、ありがとうございます。
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