松丸本舗でブックハンティング
9月で閉店する松丸本舗へ狩りに行ってきた。ジャンルを跨がった、好奇心を発動させる棚作りが素晴らしい。例えばこれ。
ふつうの書店が売り物屋なら、松丸は選びもの屋になる。一種のセレクトショップであり、Book Shop Editor という本の目利きによってスクリーニングされてるからね。たとえば、この短編集の棚がイイ。チェーホフを中心に順に左右に読んでいきたい。
しかも集団で狩りをする。グループ・ブックハンティングだ。松丸本舗という限られたスペースを6時間かけて巡回する中で、沢山の本好きと集団で狩りをする。赤いウエストバックのわたしを見つけていただき、声を掛けていただければハンター仲間だ。後は「あれがいい」とか「これ知ってる?」という話になる。狩りの成果(の一部)はコレだ。強引にオススメしたり、奪い合いになったりと面白し。
それぞれの得意分野・好きなジャンルが違ってて、話の飛び先が予測不能で面白い。水木しげる「猫楠」から南方熊楠つながりで岩田準一の男色話になったり、ファーブル昆虫記からスピルリナの栽培に跳躍する。
ただし、探しのものには向いていない。選ばれた本が一見ランダム、実は巧妙なグルーピングの元に配置されているため、あるテーマや書籍、著者から一本釣りをしようとすると偉い苦労する。
たとえば「ローマの風俗をグラフィカルに描いた本」というお題がきた。海外ドラマの「ROME(ローマ)」にハマり、松丸オフでご一緒するのだが、なかなかお目当てに行き当たらない。歴史/西洋ならあの辺という辺りはつくのだが、「これ」という当たりに至らない。
あるいは、リザ・テツナー「黒い兄弟」が徹夜児童文学らしいとか、米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」で徹夜したぜ、という噂をハンター仲間から聞く。要チェックや!と探すと見つからない。
あきらめてフラフラ浮気しだすと見つかる。あそこは「迷う」ところであって、「探す」ものではないのかもしれぬ。
結局6時間さまよった収穫。入れ替わり立ち替わりで10名のハンターたちと狩りができた。ご参加いただいた方、ありがとうございます。打ち上げの飲み会も楽しかったなり。ダンドリが半端だったので、次回改善しまする。
ファンに朗報。松丸本舗の軌跡というか奇蹟が一冊に圧縮されて、もうすぐ出ますぞ→「松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦」。ここを遊び場にした拙文も載っている(はず)なので、ご興味ある方はどうぞ。

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コメント
先日はありがとうございました。北海道から参加させていただいたものです。
ブックハンティングは初めてだったのですが、大変面白かったです。
しかし、当日はテンパっていたとはいえ、挨拶もろくにできず、しかもよりによって男色について喋るとは、今考えると変な汗が出てきます。
今、お勧めされた幸田文の「流れる」を読んでいます。
ブログで書かれていたように、「飲むように」読むというのが大変しっくりきます。
投稿: kirja | 2012.09.21 21:07
>>kirjaさん
こちらこそありがとうございます。書棚ばかりに夢中になってしまい、あまりお相手できずにすみませんでした。
「流れる」は、するするといけますよ、読む喜びは飲む喜びに似ている、と思わせる傑作です。
投稿: Dain | 2012.09.22 23:43
先日はありがとうございました。
あのような本屋でのオフははじめてだったのでとても楽しかったです。
Dainさんはじめ、みなさん優しくて色々教えていただき大変ためになりました。
お勧めされた「星を継ぐもの」と「幼年期の終り」を読んでいます。名作ですね。読むのが遅いのですが、夢中で読書しています。
これからもよろしくお願いします。
投稿: 友野 | 2012.09.23 09:12
>>友野さん
おお、こちらこそありがとうございます。オススメの2冊は鉄板ですので、じっくり、たっぷり、堪能してください。そして、もしやこれを超えるような(同等でも可)傑作がありましたら、ぜひぜひご教授願います。
投稿: Dain | 2012.09.24 21:43
読みました! すばらしいです。
高山宏や町田康と一緒なんて、凄い。
でもこの「並び」が松丸本舗なんですよね。
松丸自体はちょくちょく行っていたのですが、
ブックハンティング、日があわずご一緒できなくて残念でした。
またああいう「狩り場」ができるといいですね。
投稿: hachiro86 | 2012.09.30 21:09
>>hachiro86さん
読むの早ッ!! そんな「並び」に入れてもらえたんですね~嬉しいような恥ずかしいような…
…これで、電車に乗ってわざわざ丸善に行く理由がなくなりましたが、松丸のDNAはあちこちで見えています。B&Bやブルックリン・パーラーとか。折を見て「スゴ本屋オフ」やります、そのときは是非いっしょに狩りにいきましょう。
書店は、「遊ぶ」ところなのですから。
投稿: Dain | 2012.09.30 22:39