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松丸本舗に足りないところ

 一度入ると出てこれない書店、松丸本舗。行くたびにゴッソリ財布がやせ細るのでキケン極まりないが、本年9月にクローズしてしまうという。もったいないこと夥しいものの、「大人の事情」は致し方ない。

 松岡正剛さんの博覧驚喜や、松丸本舗の魔窟っぷりは書籍に譲るとして、ここでは松丸本舗に足りないところを語る。もちろん、氏のコンセプトに則った一種のセレクトショップなので、偏りがあるのは当然。しかしそれでも、「この視点があるとイイナ!」と果たせなかった思いがある。残さないために書いておく。

 足りない視点はただ一つ、「生活臭」だ。カッコよく「ライフスタイル」と言いたくなるが、違う。「ライフスタイル」だと、アートやカルチャー、デザインといった概念がついてきて、これは松丸の最も得意とするところなってしまうから。

 生活臭、すなわち生活につながる本が見当たらない。「実用書」という視点だと掘り出せるが、リアルよりも、もっと本の側に寄ったもの。たとえばレシピ本、それも読む(見る)ことを前提としたものは見当たらない。「Soup Stock Tokyoのスープの作り方」なんて、見て・読んで・作って美味しい本なんだが、無い。

 リアルライフが遠いように見える。食とか、モノとか、住まいとか、生活に直結した「使える本」が無い。いや、皆無ではない(はず)。あるにはあるが、捉え方が違う。あったとしても、それは異文化や時代を相対的に評価するための本であって、自分の生活に取り込んで役立てる位置づけではないのだ。

 これはわたしの妄想だが、1週間の献立を考えたり、汚れ具合で重曹とクエン酸を使い分けたり、種から何かを育てたりした経験が少ないような―――気がする。日常から乖離した超人的な教養人だからこそ、そんな生活じみた臭いが感じられないのかも知れぬ。

 もちろん、「すぐ役立つ本は、すぐ役立たなくなる」と言われるし、そんな本は星の数ほどある。だが、血肉化の過程は、文字どおり血になり肌に馴染むものであり、「読む」という行為よりも実践的だ。そうした、触ったり味わったりする本が遠いのだ。松丸ワールドでは、「本=教養」であって実生活から離れたところにある。これは、無いものねだりなのかも。

 ここからお誘い。松丸本舗でブックハントしよう。暑い盛り、厚い財布と、熱いハートを携えて、ガツンと狩りにいこうぜ。赤いバックを目印に、徘徊するわたしを捕まえて、オススメ合戦しましょうや。「こんな本が読みたい」という相談にも乗りますぞ。

  日時と場所 8/7 12:00~17:00 松丸本舗
  参加費無料、申込不要、途中参加・途中退出OK
  終わったら、有志で一杯やりましょう

 今までの松丸オフのレポートは、以下の通り。そういや、「アンナ・カレーニナ」ここで買ったんだった。

スゴ本オフ@松丸本舗(2010.08)
松岡正剛さんオススメの劇薬小説(2010.10)
松岡正剛さんと小飼弾さんの対談を聞いてきた(2010.10)
「読まずに死ねるかッ」スゴ本オフ@松丸本舗(2011.03)
みんなでブックハンティング@松丸本舗(2011.08)

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コメント

ドカ買いして職場復帰したら
爆発炎上してました・・・。
しかしいい狩り場が
新宿ジュンク堂についで
またなくなるのは残念!

投稿: ナイナイチー | 2012.08.07 16:05

>>ナイナイチーさん

今日はありがとうございました。確かに松丸本舗のクローズは痛いですね。
でも、下北沢にB&Bという名前の内沼晋太郎さんのセレクトブックショップができたそうです。そちらでも本屋オフをするつもりなので、また狩りにいきましょう。

投稿: Dain | 2012.08.08 00:48

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