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疲れた大人に、よく刺さる「心にトゲ刺す200の花束」

N/A

 いくつになってもペシミスト。若い頃はカッコつけのためだったが、年とるほど、現実みるほど、悲観主義がちょうどいい。失望せぬため期待しない。ポジティブシンキング糞食らえ、ありゃ、たま~に食べたい辛口カレー。自分マインドコントロールが「必要」なときに食えばいい。

楽観主義者とは、人生経験の浅いもののことだ。
ドン・マークウィス

 そういう痛いオッサンに、グッサリ刺さるスーパードライな箴言集。もちろん、ビアスや筒井やマーフィーの、辛辣辞典は読んできた。だがこの一冊は、一番薄いにもかかわらず―――いや薄いからこそ―――触られたくない奥底にまでもぐりこむ。そして、ちょっと遅れて、背を焼くようなヒリヒリとした笑いが襲ってくる、自己嘲笑の発作に身悶えする。これ嘲笑(わら)える人は自分の人生もひっくるめて笑い飛ばせる。

どうして自分で自分を苦しめたりするの?
どうせ人生が苦しめてくれるのに。
ローラ・ウォーカー

 別ver.を思い出す。アインシュタインの有名なやつで、ポジティブ教徒が好きなこれ→「どうして自分を責めるんですか? 他人がちゃんと必要な時に責めてくれるんだから、 いいじゃないですか」。もともと人生は苦なんだから、「苦」そのものを受けれとめろ。「苦」をあれこれ心配することも苦だから―――という考え。ブッダの「二の矢を受けず」を庶民がアレンジするとこうなる。

取り越し苦労なんてしなさんな。
もうすぐ本物の苦労が
あんたのところへやってくるから。
ベッツィ・ラパポート

 本書のいいとこは、箴言が別の箴言を呼ぶところ。磁石が自然に引き合うように、似た寸鉄が並べられ、わたしの記憶も抉り出す。聖ベルナールのこれなんて、典型かも→「生まれるのは苦痛/生きるのは困難/死ぬのは面倒である」。だが、開高健が「オーパ」でアレンジしたこっちが好きだ。どっちがオリジナルかはおいといて、読み人知らずの改変がまた楽しい。

生まれるのは、偶然
生きるのは、苦痛
死ぬのは、厄介

 警句のヒットといえば「マーフィー」だが、もちろんある。これだ。

うまくいかない可能性のあることは、きっとうまくいかない
マーフィーの法則(元はジョージ・ニコルソン)

 しかし、これは次の警句を引き寄せている。並べると、本書がどれだけペシミスティックか、よく分かるだろう。

マーフィーは楽観主義者だ。
作者多数

 ありがちな寸言が、より深いところに刺さる寸鉄を呼ぶ。このオスカー・ワイルドも沢山の箴言を吐いたが、この二つを並列させるところに、本書のセンスというかスキルというか、「あきらめ」じみたものを感じる。

大衆はすばらしく寛容だ。
彼らは天才以外のあらゆるものを許す。
オスカー・ワイルド
天才とバカの違いは、
天才には限界があるという点である。
作者不詳

 「男と女」についての箴言も数多いが、女の肩をもつほうが目立つのは、編者が女性だからだろうか。勘ぐりたくなるが、ロシュフコーの女への風当たりへのカウンターなのかも。

多くの男に会えば会うほど、
わたしは、犬が好きになる。
マダム・ド・スタール
女が本当に男を変えられるのは、
男が赤ん坊のときだけよ。
ナタリー・ウッド
男はトイレみたいなもの―――
使用中かキタナイかのどっちかだ。
作者多数

 「結婚」をテーマにしたのが沢山あるのもむべなるかな。皆さん、一言伝えたい苦労なり惨事なりを背負いこんだことがあったからだろうなーと考えると可笑しい。そのセリフにたどり着くために流された涙、飛び交った言葉を想像するとぞっとしないが。

恋愛は理想であり、結婚は現実だ。
このふたつを混同すると、
かならず、痛い目に、遭う。
ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ
貧しい人は金持ちになりたいと重い、
金持ちは幸せになりたいと思う。
独身者は結婚したいと思い、
結婚した者は死にたいと思う。
詠み人知らず
結婚してもしなくても、あなたはかならず後悔する
ポール・ブラウン

 これに、tumblrで拾ったお気に入りを加えよう。

尊敬される夫は、早死にした夫。
via:tumblr

 これだけ悲観のオンパレードを見てくると、こっちもゲンナリする。サラリーマン川柳の目線で、綾小路きみまろの毒を混ぜて尖らせたものばかりだから。慰めてんだか気の毒がられてんだか分からなくなるね。

ひょっとしたら、人生は全ての人に向いているわけじゃないのかもしれない。
ラリー・ブラウン
わたしたちは生き方を学ぶ前に死んでしまう。
スティーヴン・ウィンステン
元気をだして。
最悪の事態はまだこれからやってくるんだから。
フィランダー・ジョンソン

 よい寸鉄で、よい人生を。

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