生き方とは住まい方「東京R不動産2」
「性格は顔に出る、生活は体型に出る」という寸鉄がある。これに「生き方は住まいに出る」を加えたい。というのも、本書には、ユニークな物件を住みこなしている人となりが強く出ているから。
「Real Tokyo Estate / 東京R不動産」は、新しい視点で不動産を発見し、紹介していくサイトだ。ありがちな『ふつうの』物件を集めて、立地と広さと価格をデータベース化したものではない。エッヂの利いたこだわりや独自嗜好をもつ人と、『ふつうじゃない』物件をマッチングさせる出会いサイトだといっていい。さらに、「欲しいのがないなら、作ればいい」と建築プロデュースやリノベーションまで手がけてしまう。
その中で、コレハ!というのを集めものが本書になる。いわば、不動産のセレクトショップのカタログなのだ。マニアックな物件を見ていると、住まう発想を縛っていた制約がとっぱらわれる快感を味わう。住宅情報誌を眺めて「いいなぁ、こんなとこに住みたいなぁ」という受動的願望ではなく、「自分の大切な○○を最大限に活かす住まいはどれだろう(なけりゃ作るか)」という、積極的欲望だ。
たとえば、屋上物件と称した16平米のワンルーム。ビルの屋上だから眺めはサイコーと宣うが、夏は過酷で冬は冷酷のはず。あるいは、ミクシィの住空間化。独身寮を改良して、日本版「フレンズ」みたいなシェアハウスがある。ずっと住み続けることはないだろうが、人生のソロ期に過ごしてみたい。学生のとき独身寮は経験済みだが、これは性別無用のシェアハウス、微妙に緊張する毎日になりそう。
書籍とサイトに共通しているのが、雑誌感覚。フックの入ったコピーでつかみ、特徴的なスナップで惹いて、リード文で取り込む。雑誌と建築のハイブリッドな編集の仕方になっており、脳の違う場所が同時に刺激されて面白い。これは、東京に棲む人々の生々しい生活空間を活写した「TOKYO STYLE」と同じ。TOKYO STYLE が部屋を通じて住まい方を観る写真集なら、Real Tokyo Estate は住宅を通じて住まい方を知る写真集になる。この雰囲気は、コラムが参考になるかと。
著者のメッセージで響いたのを引用する。住まいを変えることはまずないだろうが、住まい方を変えるトリガーになる。
人口はどんどん減っていき、家はどんどん余っていく。所有という欲求や概念さえ少しずつ薄くなっている。それよりも誰と、どのような環境で、何を語り、何を食べるか、そうした時間のほうがずっと大切だ。住むことについて、もっとワガママになってもいいんだなぁ、と改めて気づかされる。もちろん懐具合や同居者との相談になるが、ライフスタイルに合わせて住まいを「選ぶ」だけでなく「変える」ことも、充分にアリなのだ。とはいえ、自分の部屋すらないわたしは、家庭内ノマドとして生きてゆくか。
住まう常識に、ガツンと一撃。
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