「女と男」のスゴい本
質量旨さ、本も料理も凄マジいい夜だった。
好きな本を持ち寄って、まったり熱く語り合うスゴ本オフ。始めて2年になるのだが、回を追うごとにパワーアップしている。出てきた本も料理も洒落にならんほど多量多様・ハイレベル・ユニークで、このエントリでは書ききれない。雰囲気ぐらいは伝わるので、これ見たら飛び込んどいで。
今回のテーマは「女と男」、つまり男性の参加者は「女が書いた/女をテーマにした本」だし、女性なら「男が書いた/男をテーマにした本」になる。男の身勝手さ(純粋さ?)と、女の率直さ(素直さ?)が、選書にもプレゼンの端々にも見いだされ、男と女の巨大な深淵と壮大な誤解をかいま見る。わかり合えないからこそ、やってこれたのかもしれないね、人類の男と女は。
何をどうオススメするかによって、その人となりが如実に出る。深く濃くやわらかい趣味全開のトークもあれば、紹介する本がそのまま自分の半生にからめた物語りとなるプレゼンもある。本だけでなく、語る人が面白いのだ。
「女と男」のテーマから、どうしても男女関係へ走りがち。そんな連想をいったん留め、「オトコが好きなもの」もしくは「オンナが惚れるもの」を再考する発想も素晴らしい。そこで分かったことは、Tumblrで親しんだこの名言になる。これ、額に入れて玄関に掛けておくべき。
“たんぶらを見ていると、男の人が女の人を好きな程には女の人は男の人を好きじゃないかもという気がします。”面白いナー、と惹かれた議論は、「男だから成り立つ物語」や「女でしかありえない展開」があること。つまり、逆は成り立たないことがあるのだ。性差云々とジェンダー気味の論になりがちだが、レッテル以前に、少なくとも著者読者の了解事項が存在する。
たとえば「春琴抄」。盲目の美女・春琴に惚れ込んで、身も心も捧げる男の話。ある事件をきっかけに、彼女のため、「ある究極のこと」をするのだが───この「あること」、できるだろうか?もちろんほとんどの人はできない。
しかし、もしできるとするならば、それは男でしかありえぬ。女なら、もっと違った、別の選択をするに違いない。なぜなら、(反転表示)自らが盲目になってしまったら、もう春琴の世話ができなくなるから。ここは合理的に考えるのが普通だ、そして不合理な一線を越えてしまうことが出来るのは、莫迦な男だけなのだ。
あるいは、「魔法少女まどか☆マギカ」。ただ一つの願いの代償に、魔法少女として命を賭して戦う少女たち。彼女たちの願いは、(傍からは)ほんのささやかなものだったり、愛する誰かのための自己犠牲だったりする……のだが、その代わりに引き受ける運命が、あまりにも過酷なのだ。絶望的な情況で、ずっと無力な傍観者だったまどかが選んだ「願い」は───
誰であれ、この「願い」を選べない。他の魔法少女の願い事なら、思いつくのだが───それぞれの大切な"人"や"思い"への献身───それならわたしでもできる。しかし、まどかが願った「たったひとつの想い」は、とても合理的で、母性的で、わたしのみならず、男という男は、思いつくことすらできないだろう。
春琴やマギカは、男女を入れ替えると成り立たない。春琴を惚れ抜いた男がヤったことを、あらゆる女ができないように、まどかが選んだ運命は、あらゆる男は背負えない。これ、両方を読んだ/観た男女と、ネタバレ全開トークしてぇ…
ちなみに、わたしがプレゼンした内容は、だいたいココで語っている。源氏ネタだと女子の食いつきがいいので、「あさきゆめみし」はもっと若い頃に読んどきたかったね…
今回の「まとめ」は、ズバピタさんの実況まとめが生々しくっていいぞ。みさわさんの、もうやめて、男子のライフはゼロよ>ω<は、「女vs男」の目線で観たレポート。しょせん女と男、戦っても勝てるわけがないことがよく分かる。
今回のランナップは以下の通り。モレヌケありまくりなのでご容赦。
- 「ここ10年分のヒロシ。」田丸浩史
- 「女子をこじらせて」雨宮まみ
- 「クリスタル・シンガー」アン・マキャフリイ
- 「キラシャンドラ」アン・マキャフリイ
- 「Motor Fan SUBARU Technology Details」
- 「RALLY & Classics 05」
- 「Tiger & Bunny」榊原瑞紀
- 「武器製造業者」ヴァン・ヴォークト
- 「ジョゼと虎と魚たち」田辺聖子
- 「泣き虫チエ子さん」益田ミリ
- 「「フィルムカメラの撮り方きほんBook」
- 「母の発達」笙野頼子
- 「芋虫」江戸川乱歩
- 「少女病」田山花袋
- 「巴里の憂鬱」ボードレール
- 「痴人の愛」谷崎潤一郎
- 「高慢と偏見」ジェイン・オースティン
- 「愛と笑いの夜」ヘンリー・ミラー
- 「シェリ」コレット
- 「女ごころ」モーム
- 「錦繍」宮本輝
- 「おんなのことば」茨木のり子
- 「あさきゆめみし」大和和紀
- 「ロリータ」ナボコフ
- 「春琴抄」谷崎潤一郎
- 「ノルウェイの森」村上春樹
- 「イノセントワールド」桜井亜美
- 「乱暴と待機」本谷有希子
- 「軽蔑」中上健次
- 「ファミリーポートレイト」桜庭一樹
- 「チッチと子」石田衣良
- 「クワガタクワジ物語」中島みち
- 「会社の人事」中桐雅夫
- 「奇跡の人ヘレンケラー自伝」ヘレン・ケラー
- 「1リットルの涙」木藤潮香
- 「いのちのハードル」木藤潮香
- 「ぼくたちが見た世界」カムラン・ナジール
- 「愛に関する十二章」五木寛之
- 「老人と海」ヘミングウェイ
- 「#9 ナンバーナイン」原田マハ
- 「マスターキートン」浦沢直樹
- 「ジャッカルの日」フレデリック・フォーサイス
- 「プラダをきた悪魔」ローレン・ワイズ・バーガー
- 「太陽の塔」森見登美彦
- 「若き数学者のアメリカ」藤原正彦
- 「こころ」夏目漱石
- 「人間失格」太宰治
- 「豊穣の海」三島由紀夫
- 「もてない男」小谷野淳
- 「かめきちパパの365日レシピ集」亀田保
- 「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」ランス・アームストロング
- 「あなたのために いのちを支えるスープ」辰巳芳子
- 「小悪魔な女になる方法」蝶々
- 「モテれ。」春乃れい
- 「「かわいい」の帝国」古賀令子
- 「重力の都」中上健次
- 「女である時期」野口晴哉
- 「ちはやふる」末次由紀
- 「フラニーとゾーイー」サリンジャー
- 「ああ息子」西原理恵子
- 「魔法少女まどか☆マギカ」Magica Quartet
次回も凄マジいいぞ、ハヤカワ・オンリーのスゴ本オフなり。SFを始め、NV、JA、HM、NF、FT、epi、演劇、もちろんハードカバーも有りあり。ハヤカワ・マイベストを熱く語ろうまい。残念ながら、あっという間に定員が埋まっちゃったので、募集は締切り状態。ただし、「どうしても」という方や、初参加なら枠がある(はず)なので、twitterなら@yasuyukima、facebookならやすゆきさんに申し込んでくださいませ。
日時 5/12(土)13:00-20:00
場所 半蔵門
会費 2000円

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