「この世で一番おもしろいミクロ経済学」は面白かっただけでなく、経済学を学びたくなる
「経済学は面白い!」と言える一冊。かつ、初学者のわたしに、かなり有用な一冊。
「経済学」ってこんなに興味深いモデルを扱っていたのね、と改めて知らされる。裏づけのあるトピックで構成されているため、眉唾に見えるのは、わたしの勉強不足だな。聞きかじり知ったかぶりの「弾力性」「パレート効率」「限界分析」の肝が、大づかみで納得できる。これを取っ掛かりに、いわゆる「教科書」に行ける。
この本はまず、最適化する個人に注目し、次に数人の戦略的な交渉に注目し、そして多数の個人による競争市場のやりとりに注目する。その間ずっと、一つの大きな問題を考えて続け、噛み砕き、伝える。そのテーマとは、これだ。
「個人にとっての最適化の結果が集団全体にとってもよい結果になる」のは、どんな場合?マンガでは(マンガなのだこれは)、説明役にこう言わせている。
言い換えると、ぼくが自分にとってよいことをして…
きみが自分にとってよいことをして…
みんなが自分1人にとってよいことをすると…
…その結果が全員にとってよいものになるのは、どんな場合?
―――気候変動は古典的な「共有地の悲劇」だね
でも市場の力を利用して環境を救える…
公害排出を高価にすればいいんだ!
ただし、経済学者が「よい」と言うとき、それは「善い」というよりも「パレート効率が良い」ことだけに注目していると釘を刺す。「パレート効率」は、ケーキを分け合う兄妹のエピソードで分かるから大丈夫。さらに、パレート効率も万能ではなく、知見の一種なのだと謙虚に振舞う。おかしいな、「なぜ経済学者は自信満々なのか」で立てた仮説と違うぞ。
税制、格差、環境破壊、最低賃金、健康保険など、人類の手強い問題について、経済学者は創造的で強力な解決策を考案している。もちろん唯一解ではないし、時には反目しあうかもしれない。それでも、経済学的な洞察は、さまざまな知見を提示することで、こうした問題を理解しやすくしてくれる←シンプルだが、経済学の本質に触れた思いだ。人が豊かになるため、問題を理解し、解決するための学なんだね。
この本を入口に、「教科書」を読み始めている。手をつけて分かったのだが、これは学生時代にやっておくべき(そして一生継続していく学びやね)。「経済学者はマルクス主義者」「経済学者は自分の財すらマネジメントできぬ」「ノーベル経済学賞はバラまき」などと独り合点して、ずっと避けてきたわたしが愚かですな。遅まきながら、やってみよう。わたしと同じような場所にいるなら、本書はオススメ。
「ミクロ経済学」の見晴らしが良くなる一冊。
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