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スゴ本オフ「戦争」がスゴい

 好きな本(と料理)を持ち寄って、まったり熱く語り合うスゴ本オフ、今回もスゴいのが集まった&積読山と積ゲー山がさらに高くなった。なによりも、わたしが知らないスゴ本を読んでいるあなたに会えること。本を介して人と会い、人を介して本と出会う。スゴ本オフとは、本を通じた出会い系なのかも。

 まずは見てくれ、狩りの成果。

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  • 【やすゆき】「エンダーのゲーム」オースン・スコット・カード
  • 【やすゆき】「月は無慈悲な夜の女王」ロバート A.ハインライン
  • 【ふじわら】「カメラ(「宝物」所収)」平田俊子
  • 【ふじわら】「戦争中の暮しの記録」暮らしの手帖(編)
  • 【はまじ】「戦争の経済学」ポール・ポースト
  • 【はまじ】「戦争の世界史」W.マクニール
  • 【はまじ】「複合戦争と総力戦の断層」山室真信一
  • 【ますなり】「ダルフールの通訳」ダウド・ハリ
  • 【ともこ】「戦場から生きのびて」イシメール・ベア
  • 【ともこ】「ファイナルファンタジー零式[PSP]」スクウェア・エニックス
  • 【おおた】「ブロデックの報告書」フィリップ・クローデル
  • 【たけだ】「鬼子又来了(「鬼子」がまたやって来た)」太田直子
  • 【はやし】「戦争の法」佐藤亜紀
  • 【はやし】「1809──ナポレオン暗殺」佐藤亜紀
  • 【こみや】「私たちが子どもだったころ、世界は戦争だった」サラ・ウォリス
  • 【おぎじゅん】「スカイクロラ」森博嗣
  • 【なかだ】「スカイクロラ」森博嗣
  • 【はやしだ】「孫子」金谷治(訳)
  • 【おおもり】「ヒットラーのむすめ」ジャッキー・フレンチ
  • 【浮雲屋】「T・E・ロレンス」神坂智子
  • 【ばん】「銀河英雄伝説」田中芳樹
  • 【でん】「聖闘士星矢」車田正美
  • 【おしかわ】「世界サイバー戦争」リチャード・クラーク
  • 【むらかみ】「あの戦争から遠く離れて」城戸久枝
  • 【ひらの】「ロボット兵士の戦争」P・W・シンガー
  • 【ごとう】「ヴィンランド・サガ」幸村誠
  • 【もみやま】「他者の苦痛へのまなざし」スーザン・ソンタグ
  • 【Dain】「人間ども集まれ!」手塚治虫
  • 【?】「The Five Star Stories」永野護
  • 【?】「百億の昼と千億の夜」光瀬 龍、萩尾 望都

参加できなかったものの、オススメを表明していただいたのは、以下の通り。

  • 【かんざき】「戦争の法」佐藤亜紀
  • 【やなぎ】「夜と霧」V.フランクル
  • 【まみや】「一人だけの軍隊」D.マレル
  • 【かねこ】「雲の墓標」阿川弘之
  • 【kartis56】「仮装巡洋艦バシリスク」谷甲州
  • 【oyajidon】「八月の砲声」タックマン
  • 【ずばぴた】「チェーザレ・ボルジア 優雅なる冷酷」塩野七生
  • 【?】「わたしが一番きれいだったとき」茨木のり子
 面と向かうからできること───それは朗読。言葉の力は、声に出すことで直接伝わる。強く実感したのは、ふじわらさんが朗読した「カメラ」だ。「わたしのかわいい寝顔をあなたは撮る」から始まる、戦争をテーマにした詩は、目で読むのと全然ちがった、胸を撃つように言葉が入ってくる。なかださんが読んだ「僕はまだ子供で、ときどき、右手が人を殺す。」(スカイ・クロラ)に惹きつけられる。音読はオフ会ならではやね。

 テーマがテーマなだけに、各人の「戦争」との距離感覚をどういう選書に表わしているかが見所。ドキュメンタリーやノンフィクションは、どれくらい"その戦争"に近いかが肝やね。太平洋戦争という近過去を、生活レベルで観察した「戦争中の暮らしの記録」や、個人の罪として引きつけた「鬼子又来了」は、身に迫る思いがする。

 切り口を絞ると、戦争の意外な本質が見えてくる。テクノロジーの観点から見た「ロボット兵士の戦争」は、現実がSFよりもSFじみていることが分かるし、「戦争の世界史」は、戦争から人間疎外の方向に働いていることを示す。ともすると善悪やイデオロギーになりがち・モメがちなのを、経済の観点で斬るとすっきりする(戦争の経済学)。

 そして、テーマを強調するために、フィクションの力が有効だ。傑作「エンダーのゲーム」は、SFなのにもかかわらず、イラクの戦場にも通じる。背筋が寒くなったのは、「ファイナルファンタジー零式」。"クリスタルの力で死んだ人のことを忘れてしまう"という設定は、フィクションだからこそ(これはやりたい)。「ヒットラーのむすめ」は、いわゆるHistorical Fictionだ。史実をベースに、嘘を一つだけ入れ、世界を再構築する。「もしパパが大量殺人者だったら、私はどうする?」「もし私が殺人鬼になったら、パパはどうする?」という思考実験は、子どもと一緒にやってみる。

 圧巻の全巻そろいは「聖闘士星矢」。全部放出だから太っ腹なり。「銀河英雄伝説」はラスト1巻だけ欠けているが、9巻まで読んだら10巻は余裕買いだね。そうそう、全巻放出する方は増えてきているので、ジャンケンと腕力に自身ある方はどぞ。

 ちなみにわたしが手に入れたのは、「ヴィンランド・サガ」と「複合戦争と総力戦の断層」。「戦争を(戦闘でなく、ほかならぬ)"戦争"として、どのように認識するのか」という問いを保ちつつ、ハマる。戦争というテーマは、食と同じくらい深く長く追いかけられそう(たぶん一生モノ)。

 次回のテーマは「女と男」「男が選ぶ『女』本と、女が選ぶ『男』本」。つまり、男性の参加者は、「女性」をテーマやモチーフにした本になり、女性の参加者は「男性」になる。ずばり相手側のジェンダーを扱った本でもいいし、異性が主人公の小説でもアリ。異性をどのように見ているか(見たいか)が現れてくるんじゃないかと。facebookで募集するつもりなので、しばし待たれよ。このblogの更新スピードよりもfacebookで告知~定員が埋まるほうが早いので、wallを張りこんでおくといいかも。

スゴ本オフ@SF(2010/4)
スゴ本オフ@愛(2010/5)
スゴ本オフ@夏(2010/7)
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スゴ本オフ@2011ベスト(2011/12)

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コメント

こんにちは。
坂口尚の『石の花』がない…!?と思っていたらツイッター上で言及されていたのですね。
(タイトル自体はご存知かと思うのですが)丸谷才一の『笹まくら』が一読の価値ありです。第2次大戦下に徴兵忌避者だった男が主人公の、鹿島茂の言を借りれば「戦争後遺症小説」。「戦争の気持ち悪さ」が味わえます。

投稿: 赤亀 | 2012.02.06 13:27

>>赤亀さん

オススメありがとうございます。「笹まくら」はオフ会までに読もうと手をつけたのですが、時間切れでした。必ず読む一冊です。
はてなブックマークでコメントされてたのですが、ヘラー「キャッチ=22」を紹介すれば良かった……戦争でおかしくなった主人公の心象を反映し、章立てがバラバラにシャッフルされている怪作です。

投稿: Dain | 2012.02.07 08:06

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