スゴ本オフ@最近のオススメ報告
本を介して人と会い、人を介して本と会う。それがスゴ本オフ。
オフ会のたびに思うのだが、わたしの視界のなんと狭いことか。そして、なんとスゴい収穫になることか。知ってる本でつながる人と、その人を介した「次の本」は、漫然と本屋amazonを巡ってもまず会えない。この場がなかったら、たぶん一生会うことのない、でも見た瞬間コレダ!と気づかされる、そういう一冊を沢山オススメしてもらう。嬉しい悲鳴とはまさにこれ。
まず、気になる一冊というより、圧倒的な存在感を放っていたのがヘルムート・ニュートンの「SUMO BOOK」の普及版。オリジナルは85cm×85cm の 30kg でお値段200万円 の世界一巨大な写真集。大木さんが持ってきたのは、その普及版とはいえ重くてデカくて、鈍器というより重機。専用のブックスタンドに開いて置いて読む仕掛けだ。表紙は巨大な女性のヌード。目にいっぱいに飛び込んでくる写真と相対している感覚で、どこをめくっても、ひたすら目を奪われる。「視る=悦び」となる、贅沢なひとときでしたな。この存在感は、電子ブックじゃ逆立ちしたって敵わない。これは、欲しい。ただし、このモノが欲しいのであって、液晶画面で再生するデータではない。この存在感も含めて、欲しいのだ……だが、これを持つということは、格納、広げる場所も含めて、「持つ」ということになる。
次に読みたくなったのは「私の中のあなた」。facebook初心者会のAndoさんのご紹介。白血病の姉のドナーとなるため、遺伝子操作で生まれてきた少女が主人公。彼女は輸血や移植のための器官を差し出すのだが、ついに拒絶する。両親を相手取って訴訟を起こす展開になるという。アメリカ的トンデモ展開にふーんと思っていたら、「実は、親は姉も妹も愛していたのです」とくる。なぜ?と俄然ミステリに見えてくる。しかも各キャラクターの一人称で構成されている藪の中構成。カズオ・イシグロの傑作「わたしを離さないで」(レビュー)と対比して読むと面白いかも。
ほとんど反則スレスレなのは、pakistan3104さんが持ってきた「レンタルチャイルド」。途上国のストリートチルドレンを扱ったノンフィクションなのだが、「これはひどい」を突き抜けている。物乞いもライバルがいるため、手足の一部を切断し、故意に見せつける者が出てくる(あと束ねてシメるボスも)。悲惨さを「売る」ことで、同情を「買う」わけだ。切断された腕、象の皮膚のように膨れた足、化膿した手術跡、それらを人目に曝して物乞いをしているという現実が、容赦なく語られる。同著者の「地を這う祈り」も話題になったが、これも見ないほうがいい。わたしの場合、ずっと歯を食いしばっていたので口中が血くさくなってしまった。「悲惨だが現実に目を背けないで」は正論だが、興味本位で手に取らないほうが吉。オフ会の場でも意見が真っ二つに割れてた。読むなら覚悟完了の上でどうぞ。
男の子たちに大人気だったのは、「スクールガール・コンプレックス」。セーラー服のぎりぎりショットのどの覗視もワタシ目線で、激しく昔を思い出す。いや、見せないんだよ、肝心なトコは。それでも醸すエロスは、匂いたつよな感覚。彼女らをエロくしているのは、実はわたしなんだという、単純な事実に気づける写真集だ。
思わずリアクションしたくなったのが、norijr さん紹介の「読み解き『般若心経』」。介護だの悟りだの聞いていると、「おっぱい」を連呼してた伊藤比呂美もそんなトシなんだ、と感慨深くなる。さまざまに翻案・翻訳される古典のチカラは偉大だ。初音ミクの般若心経ロックをオススメしたい。現代風にアレンジ訳した黄色い文字が秀逸。時間のない方は、「超スゲェ楽になれる方法を知りたいか?」でGoogleるといいかも。オフ会の場でニコニコ動画と一緒に言いたかったけれど、画面を出して皆に見せられず断念・残念。
紹介よりも読めーとばかりに朗読をはじめたのが、ともこさんの「ウィーツィ・バット」。ポップでロックでファンタスティックなファンタジーらしい。「語り」にすぐに引き込まれ、これは期待大ナリ。あと、でんさんが持ってきた「フランス料理の『なぞ』を解く」が気になる。分子レベルで調理技術を解析したものだそうな。本屋オフで入手した「こつの科学」に通じるものがありそうだ。あわせて読む。カネヅカさんオススメの伊藤計劃「ハーモニー」も読んでみよう。「虐殺器官」が期待を込めすぎたので気をつける!
ちなみに、わたしの交換本は「ヴァギナ」。前者は昨年のNo.1スゴ本で、文庫化されたのを機に再紹介した。ヴァギナは巨大な器官だとか、クリトリスは氷山の一角に過ぎないとか、UstreamではちょっとNGワードを連発する。これ読むと、ヴァギナは入口ではなく、出口であることを思い知らされる。しかも世界の・未来の。なぜなら、この世界のもろもろを作り上げたのが人の手によるのだから、世界を・未来を生み出しているのは、ヴァギナから出てくるのだから。
- 【Dain】 ヴァギナ(キャサリン・ブラックリッジ、河出文庫)
- 【Dain】 醜の歴史(ウンベルト・エーコ、東洋書林)
- 【ほし】 千円札は拾うな(安田佳生、サンマーク出版)
- 【otomexxx】 居座り侍(多岐川恭、光文社時代小説文庫)
- 【otomexxx】 悲しみにさようなら(リンダ・ハワード、二見文庫)
- 【しゅうまい】 新・プラットフォーム思考(平野敦士 カール、朝日新聞出版)
- 【しゅうまい】 なれる!SE(夏海公司、電撃文庫)
- 【norijr 】 読み解き「般若心経」(伊藤比呂美、朝日新聞出版)
- 【Ando】 私の中のあなた(ジョディ・ピコー、ハヤカワ文庫)
- 【pakistan3104】 レンタル・チャイルド(石井光太、新潮社)
- 【pakistan3104】 二十歳の君へ(立花隆、文藝春秋)
- 【せんだ】 焚き火大全(吉長成恭、創森社)
- 【せんだ】 漂流するトルコ(小島 剛一、旅行人)
- 【せんだ】 潜る人(佐藤嘉尚、文藝春秋)
- 【せんだ】 愛犬王 平岩米吉伝(片野ゆか、小学館)
- 【浮雲屋】 鈴木先生(武富健治、アクションコミックス)
- 【浮雲屋】 海街(吉田秋生、フラワーコミックス)
- 【pocari】 ワンピース(尾田栄一郎、ジャンプ・コミックス)
- 【pocari】 ワンピース最強考察(ワンピ漫研団、晋遊舎)
- 【pocari】 帰りたくない(河合香織、新潮文庫)
- 【カネヅカ】 ハーモニー(伊藤計劃、ハヤカワ文庫)
- 【カネヅカ】 幼年期の終わり(アーサー・C・クラーク、ハヤカワ文庫)
- 【aguringo】 きれいな心となんでもできる手(ガールスカウト日本連盟、PHP研究所)
- 【playnote】 進化しすぎた脳(池谷裕二、ブルーバックス)
- 【chibizo0204】 スイッチ!(チップ・ハース、早川書房)
- 【林田】 ストレートリード(テリー・トム、BABジャパン)
- 【林田】 スクールガール・コンプレックス(青山裕企、イースト・プレス)
- 【清太郎】 日本人が知らない世界のすし(福江誠、日経プレミアシリーズ)
- 【dentomo】 フランス料理の「なぞ」を解く(エルヴェ ティス、柴田書店)
- 【ogijyun】 幸せは見えないけれど(グウェン・クーパー、早川書房)
- 【ともこ】 ウィーツィ・バット(フランチェスカ・リア・ブロック、創元コンテンポラリ)
- 【大木】 SUMO BOOK(ヘルムート・ニュートン、Taschen)
- 【ずばぴた】 アレックスと私(アイリーン・M・ペパーバーグ、幻冬舎)
- 【やすゆき】 Scar Tissue(Anthony Kiedis、Hyperion)
こっから余談。主催のやすゆきさんがtwitterやfacebookで「ヤマザキのアップルパイがッ」と連呼しており、非常に気になっていた。その執着ぶりは、ヤマザキの回し者かと思いきや、今回その予感が覆された。ヤマザキのアップルパイは美味い!ふつうは、申し訳ていどに果実のきれっぱしが混ざっているという感のコンシューマ・アップルパイとは一線を画し、ローソンで売られているヤマザキのアップルパイは、リンゴリンゴリンゴゴゴゴゴーとしている。パイ生地よりもリンゴがデカいってナニコレ!?(ちなみに、わたしも回し者ではありませんぞ)。
スゴ本オフの企画について。「企画から参加したい!」という方がいらっしゃるので、いつでも募集してマス。メールでも受け付けておりますが、 facebook のWall「スゴ本オフ」にいらしたほうが反応は早いですぞ。これまで、「青春(性春の?)の一冊」、「児童書」、「戯曲」、「エロ本」、「ネコ本」、「グルメ」などが俎上に乗ってます。
画像の出所。
ヘルムート・ニュートンのモノクロ→やすゆきさんflickr
ヤマザキのアップルパイの山→やすゆきさんflickr
スゴ本オフの収穫(一部)→やすゆきさんflickr
関連エントリ。
「スゴ本オフ@最近のオススメ」に参加してきた
スゴ本オフはアップルパイ祭りであった。
今までのスゴ本オフはこちら。
2010/04/07 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@SF編
2010/05/14 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@LOVE編
2010/07/16 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@夏編
2010/08/07 スゴ本オフ@松丸本舗(7時間耐久)
2010/08/27 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@BEAMS/POP編
2010/10/20 スゴ本オフ@赤坂
2010/10/23 スゴ本オフ@松丸本舗(セイゴォ師に直球)
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コメント
こんにちは。
毎回、どんな本が紹介されているのか、見るのが楽しみです。
「アレックスと私」も紹介されたのですね。
鳥好きにとっては、鳥の知能の研究で成果を見せているアレックスの存在を知り、注目していたのですが、ヨウムとしては、寿命が半分ぐらいで突然死で残念でした。
博士が、まず、アレックスの死から書かれているので、読もうと思って手元にあるのですが、いきなり涙で、実は、全然、読み進んでません。思いれがないと読めるんでしょうが、映像や雑誌の紹介などで、身近に感じていたものですから、結構つらいです。
投稿: ざわ | 2011.03.07 17:43
>>ざわさん
なんと、そんな思い出があったのですね……
「アレックスと私」はズバピタさんがiPadを手に、熱っぽく紹介していました。お話する機会がありましたら、きっと熱が伝染することでしょう。
投稿: Dain | 2011.03.09 00:19
こんにちは、はじめまして。
いつもこっそり楽しく読ませていただいています。
ついにDainさんが、ウィーツィ・バットを!
このシリーズには、人生観が変わるほどの衝撃を受けたので、
個人的な思い入れのある作品をDainさんが読まれるということで、ドキドキします……。
ウィーツィ・バットシリーズは、五作目の「ベイビー・ビバップ」が飛び抜けて熱くて、
一冊を通して、アメリカのカルチャー史のようで、読み応えがありました。
なので、ぜひとも、一冊目で終わらず、シリーズを通して読んでもらいたいなぁ……
という気持ちをお伝えしたくて、コメントさせていただきました。
ウィーツィシリーズが、Dainさんにとっての「スゴ本」になることを祈って……!
投稿: 華子 | 2011.03.09 05:28
>>華子さん
ありがとうございます!
「ウィーツィ・バット」は一冊目を終えたところです。ポップでハツラツで、どっちへも転がって行けるような自由さを感じました。もちろん5冊目まで行きますよー
投稿: Dain | 2011.03.09 22:57