« 名文どろぼう | トップページ | ゲームで子育て「レッド・デッド・リデンプション」 »

怒らずに生きる「怒らないこと2」

 怒らずに生きるための手引き。

 tumblr で拾ったブッダの言葉が好きだ。

過去にとらわれるな
未来を夢見るな
いまの、この瞬間に集中しろ

Do not dwell in the past,
Do not dream of the future,
Concentrate the mind on the present moment.

 文字どおり「刹那的になれ」という意味ではない。過去や未来に拘泥して「いま」を見失うなよという戒めだと受け取っている。本書を読むと、過去や未来に囚われている状態こそが「怒り」や「欲」であることが分かる。

 著者はアルボムッレ・スマナサーラ。スリランカ仏教の長老で、かみ砕いた言い回しと具体的な例を用い、「怒らない」ための方法を説く。本作は、「怒らないこと」の続編に位置する。前作がブッダのエピソードを多用しているのに比べると、本作は、より現代的な事例(秋葉原連続殺傷事件など)に触れている。その分、自分に引き寄せて読むことが可能になっている。前作のレビューはこちら→[「怒らないこと」はスゴ本]

 ときに仏教からスピンアウトして、キリスト教批判してるところが面白い。もし神が完璧なら、「怒る」ことなんてしないだろうと言い切る。不完全な人ではなく、その不完全な人を創った自身に腹を立てるのが筋という件は、ヒヤヒヤしながらも笑ってしまった。「怒り」と対決したり、コントロールしようとする姿勢に対し、著者は完全否定する。曰く、「怒りに燃料を与えるようなもの」だという。怒りに怒りで対処するならば、自身が燃料となる。結果、燃え尽きて無くなる。怒りで真っ白になり、その怒りに怒って爆発し、抜け殻のようになった経験はあるだろうか(わたしはある)。

 生きることは苦しみであり、感覚は苦であるという。そして、人は怒らずにはいられない存在だという。なぜなら、「自分というなにかが実在する」という考えに縛られている限り、次から次へと怒りが湧いてくるから。というのも、見るもの/聞く音、あらゆることが自分の思い通りにならないから。思い通りにならないことに嫌気がさしている状態が「怒り」で、そうした状態をなんとかしようとするのが「欲」なんだと。

 だから、怒りをこらえようとしたり、ねじ伏せようとすることは不可能なんだ。自己啓発書よくある「むりやり笑顔をつくる」も凶手、それは怒りをごまかしているだけであり、取りつくろった自分へ嫌悪感をつのらせることになる。

 では、どうすればよいか?

 「いったん停止」が"正解"になる。わたしが以前のエントリで考察した[脱怒ハック「怒りについて」]とものの見事に一致している。つまりこうだ。

もし怒ってしまったら、なにもしないで、なにも言わないで、そのとき生まれた怒りを放っておきます。怒りに「考える」という燃料をあげないで、心まで止めてください。頭の思考も、言葉を発することも、からだを動かすことも突然止めて、フリーズ状態になってみてください。ただ止まって黙っていればいいだけです。

 怒りの原因や対処について考えるとき、その手や頭は怒りに染まっている。怒りについて考えている時点で、怒りの罠に囚われているのだ。この「考えることをやめる」のはかなり難しい。しかし、「怒りの原因や対処」から目を剥がし、「いま怒っているという感覚」に注目することはできる。呼吸や心音、視野や聴覚を意識して、体感覚を研ぎ澄ますのだ。そして、考えることはただ一つ、「ああ、自分はいま、怒っているのだ」だけ。その苦しさだけを意識する。マゾかよ!と自分ツッコミ入れたくなるが、これは有効ナリ。

 カイシャでもフーフでも実証済みなので、お試しあれ。

このエントリーをはてなブックマークに追加

|

« 名文どろぼう | トップページ | ゲームで子育て「レッド・デッド・リデンプション」 »

コメント

怒りの程度の低い時(イライラレベル)に使う魔法の言葉はコチラ。
http://www.aoky.net/articles/kathy_sierra/two_more_words_.htm

考えるのをやめた……という解決法は
怒った状態を意識するということを
意識しないといけないのですが、
こちらは自分で言葉を唱えることで、
強制的に意識を変えられるのがポイントかと。

ただし、本当に”怒った”時はこんな悠長な言葉遣いはできないとおもいますが……

投稿: bw | 2010.11.15 10:29

この対処法は、怒りだけではなく、不安や悲しみにもあてはまるんじゃないのかなと思いました。
呼吸に意識をよせるのは大事だと日々よく思います。

投稿: mitsu | 2010.11.15 11:01

「カイシャでもフーフでも実証済み」が知りたいです。

投稿: Ukey_ | 2010.11.15 13:57

これは本当に人生の中で重要な事柄だと思います。

私はすごく気が短く何事にも短絡的な思考に陥りがちです。

多分、性分として変えられないと思いますが、こういう思考に陥ることを認識することによって、そこから次に繋がるように精進して行きたいと思います。

投稿: mucha_de | 2010.11.15 22:21

>>bwさん

「興味深いね……」はユニーク&効果的ですね。閾値を越えたときのマジックワードとして使えそうです。この言葉を基準として、効果を測ってみることで、次の行動(その場から逃げる/黙殺するetc)を選ぶことができるでしょう。


>>mitsuさん

身体を意識する方法はよく使います。心音や呼吸や皮膚の感覚に集中すると、頭のモヤモヤは薄れますね。


>>Ukey_さん

ナマナマしいので勘弁してください……


>>mucha_deさん

ありがとうございます、mucha_deさんのお役に立てたようで嬉しいです。かくいうわたしも「怒り」から完全に自由になれたわけではないので、精進が必要ですね。

投稿: Dain | 2010.11.16 07:05

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 怒らずに生きる「怒らないこと2」:

« 名文どろぼう | トップページ | ゲームで子育て「レッド・デッド・リデンプション」 »