さよなら、日経
ようやく、「リーマン日経」の呪縛を解くことができる。
「社会人になったら、ニッケイ・ヨクヨム」と呪文をかけられ幾年月。半導体は日本の魂とか、(アメリカン・スタンダードという名の)グローバルスタンダードとか、中国ワッショイとか、いろいろ吹き込まれましたな。日経新聞だけでなく、日経ビジネスとか日経コンピュータとか日経コミュニケーションズとか、たくさん貢ぎましたな。
その結果→職場や会議卓で「話を合わせる」役にはたった。
ビジネスのヒントや、業界の動向や、はたまた日本経済の先行きは、すでに新聞よりもRSS+クオリティ紙で充分。具体的には、「ニューズウィーク」「クーリエ・ジャポン」「フォーリン・アフェアーズ」になる([経緯])。「出勤途上で新聞に目を通す」という習慣は、とうの昔にやめた。車内を見渡してみて、あらためて気づく、新聞読んでる人は珍しい部類に入る(リクルートスーツ姿の人が読んでいるのは常景だが)。
「報道」という観点からすると、遅いのだ。何が報道されたか、という羅列なら、ロイターとヤフトピで充分。むしろ、報道された内容の「分析」が欲しい。裏取りと背景、歴史、統計、(他国・過去との)相似性が欲しい。「関係者は語る」という誘導語にぶつかるたび、恣意的なグラフ(≠統計情報)が出るたびに、読むのが嫌になる。
こうした分析は、社説や巻頭特集が相当するだろうが、春秋と大機小機と激しくバラバラで笑える。巻頭で円高を問題視しているのに、大機小機で「チャンス」と煽る。一貫性のなさは多様性と言い換えられるが、読者のアタマに何を吹き込みたいのだろう。
裏取りしてる? 心配になるのは、内部事情を知る業界が報道されるとき。まさにその「裏」に自分がいるからこそ、いかに裏取りしていないかがよく見える。いわんや他業界をや。昔の一般読者は裏取りできず、鵜呑みにしていただけでは? と思えてくる。書き立てられた「中の人」だけがクオリティの低さを嘆いていただけで、その愚痴が一般読者まで伝わっていなかっただけじゃないのか。ネットが普及し、裏取りや追跡ができるようになったため、記事のクォリティの「見える化」が進んでしまったのだ。
テレビのリポーターについて、こんな名言がある→「リポーターは自分が思っていることを言うのではない。視聴者に思わせたいことを言うのだ」これを受けて、記者が(デスクが)誘導したい方向を知るために新聞を開いていたが、それもやめ。より仰々しくワイドショーがしてくれるから(ニュース番組は、「コクミンの意識をどっちに誘導するか」を判断するためにチェック)。新聞は、その「思わせたいこと」を確認するために開いているにすぎない。
新聞を「とる」というのは習慣。習慣をやめるのは、ちょっとドキドキする。嫁さんに相談すると、「何がどう書いてあるのか、新聞ひらく前から分かっているなら、それは"ニュース"じゃないよ」という。そして、「ウチは、もっとローカルな情報が要る」って。そうだ、最近では地方面をよく見ているよなぁ……どの沿線で開発が進んでいるとか、新しいスポットとか、市がバックアップしている産業とか。なので、ペーパーの新聞は、「東京新聞」にするか。「ニッケイ」が必要なときに駅やコンビニで「買」えばいい。
「紙」もやめちまおうか、と一度は考えたが、子どもと一緒に見て、赤ペンでチェックしたりスクラップしている。子どもがPCやガジェットを使いこなすようになったら、もういっぺん考えてみよう。
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コメント
僕も昔は世の中の流れについていかなきゃという強迫観念からNK新聞購読してましたが、新聞は読めば読むほど、現実の世界の出来事がわからなくなるというパラドックスが本質的に内在していることに気づいてからは購読やめました。新聞を読むおっさんどもが少なくなればもっと世の中よくなるのになー(笑)
投稿: | 2010.08.29 23:40
新聞...というか、他メディアもそうですが、裏取りのないところって、ネットとかなければ、世論誘導?だったんでしょうけど。
最近は、情報リテラシーがあるかどうか、のリトマス紙に使っています。
> 裏取りのない情報を、経営情報の基礎として話す人か、それとも違うか。
窓際系というか、天下り系は、見事にリトマス紙の反応が出るんだよなあ...。
投稿: luckdragon2009 | 2010.08.30 04:44
日経と言うか新聞業界全体への引導ですか
投稿: a | 2010.08.30 12:04
おそらく相当の数の人に賛同してもらえるとおもうのですが、日本経済新聞で優れているのはスポーツ欄、特にサッカー記事。ちゃんと、書いた記者の名前も載せてあるのが素晴らしい。経済記事に同レベルのクオリティを期待するのはもうずいぶん前にあきらめてます。スポーツ欄がなければ、とっくに購読をやめているのですが。。。
投稿: 通りすがり | 2010.08.30 19:17
>>名無しさん@2010.08.29 23:40
強迫観念ですか、たしかにそんな気分で開いていたときもあるような気が。チャネルの一つとして新聞を読むのはかまわないのですが、新聞しか読まない人は問題かと。
>>luckdragon2009さん
そう考えると、(良くも悪くも)ドン・ナベツネの巨大さが思い起こされます。新聞テレビで世論誘導→投票動機の先づけなんて、チョロい時代でした……「寄らしむべき、知らしむべからず」ができたのですから。
>>a さん
新聞業界に引導を渡したつもりはありませんよ。日経は不要だと判断しましたが、ローカル情報(ここでは東京新聞)は、むしろ必要です。わたし個人ではなく、家族で情報を共有するために。
>>通りすがりさん
いま確認してすげぇ納得、そして涙。きちんと署名記事しているのは、スポーツ欄特にサッカーなのですね……クオリティというよりも、署名記事が普通になれば、色分けができるのに、残念です。
投稿: Dain | 2010.08.30 23:18
寝かせておいて、後から読むとおもしろいですよ。
結局どうなるのかわかっていれば誘導されることはないですから。
半年から一年積んでおいて読むと、適切な記事が出ているか良くわかります。
そもそも新聞ではないんだから、そういう読み方でもいい。
グラフがまともに書けないのはそれだけ記事のチェックも、記者のOJTもまともでないってことでしょう。
自分が一番許せないのは偽食品とかのごみみたいな広告ばかり載ってることです。
投稿: ななし | 2010.09.02 23:32
>>ななしさん
「寝かせて、後から読む」という発想は斬新です!
いいヒント、ありがとうございます。20年前の「グローバルスタンダード」、10年前の「選択と集中」、5年前の「トヨタ方式」を読み直すと、笑いと怒りで顔がぐちゃぐちゃになることでしょう。私的には、1987年のアウディ・リコール事件の「顛末」をどう書いたかに、ものすごく興味があります(読まずに分かりますが、真相は書いていないでしょう)。
そもそも「新聞」ではないものを寝かせると……「旧聞」に属しますねww
投稿: Dain | 2010.09.03 22:46
弟に勧められて、木下玲子氏の「インフルーエンシャル」等数冊の著書(インタビュー集)読んで感心した。フォーリンアフェア等への直接インタビューなので、背景や編集長の考えが分かって良かったです。ぜひ。
投稿: 金さん | 2010.09.06 11:07
>>金さんさん
amazonの「金さん弟」レビューを読んでフと思ったのですが、新潮社の雑誌「フォーサイト」で似たような記事を読んだような…
投稿: Dain | 2010.09.07 22:25
一部、フォーサイトの連載でしたから。
投稿: 金さん | 2010.09.13 00:00
>>金さんさん
ありがとうございます、「アメリカン・バブル」がよさそうなので、手にしてみます。
投稿: Dain | 2010.09.15 01:21
こちらの記事がとても参考になりました。
フォーリン・アフェアーズを読んでみたいと思っています。
最近ではニューズウィークもdマガジンで読み放題になるなど、ネット環境が充実してきていますが、その後、定期購読誌の顔ぶれに変化はありますか?
最近のおすすめの月刊誌・週刊誌がありましたら教えていただきたいです。
あと、スマホやPCのホーム画面はどこにしていますか?
ワタシはいまだにyahooですが、そろそろ変えたいと思っています。
m(_ _)m
投稿: バド | 2018.08.26 10:29
>>バドさん
こんな昔の記事へのコメント、ありがとうございます。「フォーリン・アフェアーズ」は煽り記事に辟易して、既に止めてしまいました。今では、お金を出して特定の雑誌を買うのではなく、週一に図書館に行って最新号を総ナメする読み方にしています。
ホームはyahooで、そこから記事に飛ぶときにのみ、「新聞」というメディアに関わるぐらい、新聞から離れるようになりましたw
投稿: Dain | 2018.08.26 13:26