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「生活目線でがんを語る会」に参加しました

 本を読む目的が、他人の知識・経験を共有することであれば、会って話すのが一番いい。ダイレクトに反応を確かめつつ、つながるから。会って話せないから、手紙になり、本になる。今回は、どんな本を読むよりも、実際の体験を直接聞けるという、非常に貴重な会に参加できた。そして、アタマガツンとやられた。

 がんと生きている人、がんと生きていた人の話をうかがった、「生活目線でがんを語る会」だ。

 最新医療の勉強会ではない。がんになることは、生活を人生をどのように変えてしまうのか、百人百様の生きざまを教えてもらった。U-StreamとTwitterで実況され、アーカイブされた先は、ここにある。わたしのように、「ピンとこない奴」には衝撃的かもしれない。

 まとめると、ここで受け取った最重要のメッセージは一つ、ここで決めた次の行動は一つある。一つのメッセージとは、「患者になったらできることは限られているが、患者になる前は、なんでもできる」こと。そして、ここで即決した一つのアクションは嫁さんに定期健診を受けてもらうこと

 いままで、素朴にも、がんになるということは、イコール「余命はもって3ヶ月です」と思っていた。がんは治らない病、告知されることで、そのまま100パーセント助からないのもだと、無邪気にも信じ込んでいた。映画や小説をドラマティックにするためのステレオタイプに染まっていたのね。

 しかし、がんを「なおす」ことができることが分かった。「なおす」は微妙な言い方なので、早期発見と適切な治療により、「おさえこむ」ことができる。がんになるイコール100パーセント助からない、というわけではないのだ。Surviver たちの直接のことばに、自分の思い込みが打ち砕かれる。

 もちろん、そうじゃない場合もある。あたりまえだ、人の体が様々なように、症状も療法も万別だろう。にもかかわらず、その極端な一例でもって全てがそうだと判断し、議論していくことがいかにムダでばかげているかが、よっく分かった。自分のときには、「そのときの自分」の状態を踏まえ、何ができるか(したいか)考え、信頼できる専門家に任せればよい。がんになったら、やれることは限られてくるのだから。がんになってから、やることが限られてくるまでの時間は、想像を絶するほど早くやってくる。残酷なまでに早い段階で、やれることがなくなっていくのだ。

 その一方で、がんになる前の今のわたしなら、何でもできる。なったときに後悔しないための生活、愛情、仕事、その他やりたいことを、いま、今日のこの瞬間のうちに取りかかるのだ。そして、人生のどこかで「がんになる」ことを前提に、どの段階で見つけるかを想定して行動する。具体的には定期健診を受けることになる。わたしには会社のやつがあるが、嫁さんにはない。そう、嫁さんに受けてもらうのだ。

 ……と、勢い込んで激しく語ったら、嫁さんはアスカの「あんたバカぁ?」的な言い方で、「はぁ?」と応える。かかりつけのお医者さんに毎年検診してもらっているとのこと。予防の一オンスは治療の一ポンドに優るというけれど、よっぽど嫁さんの方が実践しているね。知らなかったわたしが阿呆や。

 この会に参加してよかった。いっぺんに目ぇ覚めた気がする。登壇した方々そして主催のやすゆきさん、U-Stream の大木さん、スタッフの方々に感謝します、ありがとうございます。ふんふんと聞くだけではなく、受け取ったメッセージを、自分の生活ひいては人生に具体的に適用していく気に、強くなったから。

 それから、Twitter実況+U-Stream があったのだが、こんな"つぶやき"があった。

     Ust 見るたび、「他人事」が減ってくる
     マスメディアの「客観性」て、「他人事」の意味だもんね

 激しく同意。マスメディアの「客観的な」お涙頂戴ストーリーに載せられていたなら、絶対にたどりつけない心境だから。他人事じゃない、自分事としてのがんライフを生きる。

 最後に。わたしのメモからいくつかピックアップ。

  • がんは、「飛び散る」病気
  • ただでさえ見つけにくい乳がんが見つけられたことは、ラッキーだ。しかも早期に手術できたことは、もっとラッキー
  • がん患者は、常に3つの不安にさらされる。①個人の不安「死ぬかもしれない」、②医療の不安「自分がどんな治療を受けているか、分からない」、③社会復帰できるか不安
  • がんは、「死ぬまで」つきあっていく病気
  • がんになった母に、「どこに何がしまってあるか」を尋ねるということは、すなわち、おまえはもうすぐ死ぬのだということを暗に伝えていることになる。だから、聞けない
  • 病気だからといって亡くなるんじゃない。腫れ物に触るような扱いはされたくない。ただしこれは、人それぞれで、自分の場合は適度に放ったらかしにしてくれた
  • 「がんばれ」という言葉の重さ。頑張っていないわけじゃないのに、「がんばれ」と言われる意味を考える

 Twitter のまとめは、以下の通り。お話とメモに夢中で、ほとんど目をやっていなかったが、Twitter の発言とあわせると、より立体的に思い出せる。U-Stream + Twitter + 自分のノートは、いつでも手が届くところに置いておこう。

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コメント

えっと。医者が意見書出して、最近話題になりましたが、乳がん自体は年齢との兼ね合いなので、若い時には逆に検診を受けないのが良いです。(悪性癌じゃない奴が見つかったり、不要な治療が発生したりする。良くある話ですが、別の病気で死亡した患者を解剖すると、軽く癌化した組織が乳房に見つかったりする。)

日本人では、前立腺がんも似た話ですね。

日本人は肺がん、胃がんの定期検査はした方が良いでしょう。

御参考まで。
いわゆる、リスクとベネフィットです。

投稿: luckdragon2009 | 2010.07.26 01:22

>>luckdragon2009さん

アドバイスありがとうございます。「予防」にセンシティブになるあまり、予防のリスクを見逃すなかれ、ということですね。神経質にならないよう、ぼちぼち堅実にやっていきます。

投稿: Dain | 2010.07.26 23:44

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