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おもしろうてやがて悲しきコンドーム「コンドームの歴史」

 良いコンドームで、良い人生を。

コンドームの歴史 コンドームを軸に、文化史、医学史、宗教史、技術史を横断的に俯瞰しながら、避妊具から性病予防、奇想天外な使い方を紹介する。そして、人類に対し、この道具がいかに偉大な役割を果たしているかに気づき、驚かされるだろう。次に使うときは、おもわずまじまじと見つめてしまうに違いない。

 コンドームの歴史は避妊技術の歴史。ファラオまでさかのぼると、パピルス製のコンドームが登場する。紙のコンドームをつけてまでいたすとは、間違った畑に種をまくという事態を権力者がどれほど心配していたかを如実に物語っている。布製だったり魚の浮き袋や腸を使ったりと、涙ぐましいテクノロジーの進歩(?)が語られる。今なお残る最古のコンドームは、1640年にブタの腸で作られているそうな。洗えば再利用可能で、さすがスウェーデン製、エコだね。いっぽう最新のコンドームはオカモト製で、0.02mmという驚異的な薄さを誇る。まるで「つけてない」つけ心地、さすが日本製、エロだね。

 コンドームの歴史は性病の予防と拡散の歴史。それは、大航海時代と異世界の混交の歴史を紐解くことになる。文明間の性感染症の広がりと、コンドームの普及具合は、まったく同じパターンをたどっている。まるでコンドームが性病を広めたかのように地域も歴史も示しあわせたかのようにぴったりと重なるのだ。コンドーム/性感染症が急速に普及/蔓延する後押しをしているのが、戦争だ。ナポレオン戦争、独立戦争、第一次大戦、第二次大戦と、まったく同じ苦労と徒労をくりかえしている。

 コンドームの歴史は性と倫理の歴史。便利な道具じゃないかと素直に喜べないのがキリスト教圏なのだ。妊娠のため以外のセックスはすべて罪とされていたから、避妊のためのコンドームは、罪深い道具とみなされる。コンドームがどのように社会に受け入れられてきたか、あるいは受け入れられてこなかったかをたどると、どうやって規制がかけられてきたかがあぶりだされる。特に1873年の米国におけるカムストック法が酷く、個人の判断でもって包括的に猥雑判定ができ、なおかつ実力行使ができたという。青少年健全育成条例をゴリ押しする、現代のカムストックたちは、第8章が参考になるだろう。

 では、そうした性にたいする偽善的な態度は、どんな結果を招いたか?議論は常に繰り返される。子どもたちにコンドームについて教えるのは、コンドームの使用=セックスを推奨することになりかねないと批判する団体がいる。彼・彼女らは、避妊や性病予防といったメリットから目を背け、禁欲教育を主張して、コンドームを排斥する。現実から目を背けた結果は、梅毒からエイズまでの性感染症の蔓延の歴史になる。特にアメリカ合衆国において、バースコントロールやフリーセックスに対して、極端から極端へと議論がゆれていることが分かる。革新論者とガチガチの保守の両極しかいないのだ。両者は完全に水と油で、歴史のなかでこなれた、いわゆる「中庸」にまで至っていないのだろうか。

 このちっぽけな道具に詰まった大きな歴史をたどるのは、最初は楽しいんだが段々重くなってくる。エイズとコンドームの関係は、販売会社の脅し戦術の賜物だし、恐怖に麻痺した人たちには、「チャリティ」戦略で売ろうとする。単なる避妊具という以上に、心理的な影響を与えているのかもしれない。コンドームに頼りすぎる心情を、ボブ・ルービンはうまく言い当てている。曰く、「コンドームは完全に安全ではない。ぼくの友達はそいつをつけていてバスに轢かれた」。

サガミオリジナル 最後に。わたしの愛用品をオススメしておこう。舶来品を試したこともあるが、やはりこれはメイド・イン・ジャパンが最高だぜぇ~ウォーッ!コンビニで売っているフツーのラテックス製もいいけれど、サガミが段違いに素晴らしい。「つけてない」つけ心地は、装着後に息を吹きかけてみれば分かる。隔てるものはなにもない。下品ですまんが、ナマ入れ中出し感覚ならこれがピカイチ也。

 良いコンドームで、良い人生を。


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コメント

サガミオリジナルは、薄さもさることながら、ゴム臭くないのも良いですよね。

投稿: watman | 2010.04.02 14:55

>>watmanさん

そうですね、ゴム臭にコーフンすることがありますけれど(条件反射?)、ないほうがナチュラルでまた良し。

投稿: Dain | 2010.04.03 20:37

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