「フォーサイト」の次は、これに決めた!
新潮社のフォーサイトが休刊するにあたり、代替を探していた[URL]。たくさんの有益なアドバイスをいただき、とても感謝しています。リサーチと呻吟の結果、以下の雑誌を定期購読することに。
フォーリン・アフェアーズ・リポート
COURRiER Japon
まず、フォーリン・アフェアーズ、これはスゴい。アメリカの外交問題評議会によって創刊された外交・国際政治専門誌で、最も影響力のあるそうな[Wikipedeia:フォーリン・アフェアーズ]。「フォーサイト」でいうなら、巻頭リポートに相当するネタが3倍入っている。さらに、ホット・イシューに対応する「特集」が3-4本の論文、フォーラム、対談形式で集められている。マネジメント層(しかもかなり上の)での政策決定の材料として充分。
たとえば今号(2010年1月)の「中国の台頭の戦略的意味合い」を読むと、中国をステレオタイプに描く日経○○との差が際立つ。中国に対するパワーバランス形成を視野に入れつつ、エンゲージメント政策(軟)とリスクヘッジ政策(硬)を展開する米国、対日路線をソフトパワーにシフトさせている中国、国内問題に囚われ役割を果たせないでいる日本が、明快に語られている。
この大局観はかなり参考になる。「アメリカが関与しなければ、基本的にアジアは、中国が支配的な影響力をもつ一極支配構造になっていく」という主張は、好む好まざるとにかかわらず、実現性の高いシナリオだ。もちろん鵜呑みは禁物だが、影響力ある多くの人がこれを読んで判断・決定しているということを忘れないように。
ただ、悩ましいのが価格。2,200円/冊はフトコロに厳しい。近場の図書館にも置いてないし、通販オンリーなのもハードルが高い。わたしの仕事とはこれっぽっちも関わらず、単に好奇心とアンテナを満たす(磨く)ためだけに、これだけの出費は実に痛い。さも自分で発掘してきたかのような顔をして、このblogのネタにしようかなwww 書評とエロに満ちたこのblogに似合わぬ政治経済ネタが並ぶようになったら、元ネタはコレだと思ってほしい。
お次は、COURRiER Japon、悩んだがコストパフォーマンス的に一番有効なのだ。決め手は山形浩生のエコノミスト解説と、町山智浩のアメリカ評。これまで山形コラムを立ち読みでごまかしてきたが、この際ちゃんと買って読もう。
クーリエのいいところは、ワールドワイドのニュースソースを揃えて、「いいトコどり」をしているところ。フィナンシャル・タイムズ(英)、タイム(米)、レブブリカ(伊)、ガーディアン(英)、ディ・ヴェルト(独)、ジェニク(ポーランド)、エコノミスト(英)……ほぼニュースの数だけニュースソースがあると考えていい。これだけの多様性を束ねるメディアは面白い。
要するに、世界のクォリティ・ペーパーの寄せ集めなんだ。それも、ただ集めるだけではなく、号ごとにテーマを決めて、それに沿った記事を集めてくる。編集者の技量と、ニュースの蓄積がハンパではない。「ワールドワイドに展開しているメディア」ではないところが重要なのだ。世界じゅうに広がるメディアではなく、それぞれの地域・経済圏で影響力を持つメディアの「積分」が、クーリエの強みになる。
しかし、その一方で、「残念」もあった。昨年の何号か、著名人を招聘して「○○責任編集」と銘打った特集をしていたが、まさにこれが大便。名前はメジャーだが空っぽの芸能人のオヌァニーを、一誌丸ごと読ませるのかと思ってたら、局所的だったので許す。インテリ芸能人を呼ばないと雑誌が成り立たないのだろうか?またやるようなら、立ち読みに戻る。
これで、国内情勢を知る雑誌がゼロになった。一時期は「フォーサイト」「選択」「FACTA」の3枚看板だったが、これを機会に"卒業"しよう。つまり、国内の方向性を決める要因は無い、と割り切るのだ。マスコミは煽るだけで、なんの判断材料も取ってこれない。国内ニュースの速報や確度はネットで充分。この国には、パワープレイヤーやトリックスターはいない。いや、昔からいなかったというべきかも。この国の方向を決めるのは、昔も今もガイアツ。漂えど沈まず、なるようになっていくだけなのだから。
では、なぜ「日経新聞」なんて購読しているのかって?それはもちろん、上司と話を合わせるため。雑談の「あれ見た?」のネタのため。プロ野球の結果や流行りのドラマと同じように、一面や新製品情報に目を通す。いっぽう、ニュースの真相と深層を知るため、いわばニュースのオリジンをたどるため、フォーリン・アフェアーズを読む。これからは、人と合わせるための日経新聞、人を出し抜くためのフォーリン・アフェアーズとなるのかも。
Foresight の代わり、どうする?でアドバイスをいただいた方に、薄謝をしたいと思っています。はてなポイントをお渡しするのが簡単なのですが……教えていただけないでしょうか?「はてな入ってないよ!」であれば、指定してくださいませ。
Physさん
terrorism583さん
kdmsnrさん
eveninglandさん
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コメント
フォーリン・アフェアーズは一部掲載されていた朝日の論座が休刊して読めなくなって残念に思ってました。さすがに購読料が高いのでサイトの無料論文で我慢してます。クーリエはiPhoneで読めますね。
投稿: fatpapa | 2010.01.15 11:56
>>fatpapaさん
おお、「論座」で読めていたのですか……知りませんでした。とはいえ、「論座」も休刊したのでは元も子もありませんね。iPhoneで読めるクーリエは、有料版も無料版も、いわば「お試し版」みたいですよ。
投稿: Dain | 2010.01.15 21:50
雑誌ではありませんが、情報源としては「ル・モンド・ディプロマティーク 日本語版」(ttp://www.diplo.jp/)も面白いと思います。
ただし、更新が月一で、しかもフランス語版から三つ程度記事を抜粋し翻訳した程度なんですよね…。ボランティアが運営してるので全訳は今後も無理でしょう。
投稿: 名無し | 2010.01.16 18:24
名無しさん@2010.01.16 18:24
情報ありがとうございます、知りませんでした。RSSが登録されていないのが残念ですが、巡回先に入れておきました。
投稿: Dain | 2010.01.16 22:12
>フィナンシャル・タイムス(米)
(英)ですよね?
投稿: r | 2010.01.19 12:35
>> rさん
ご指摘ありがとうございます、(英)ですね。そして、フィナンシャル・タイム「ズ」が正解でした。
投稿: Dain | 2010.01.20 00:19
ウェブ版フォーサイトがこの夏から始まるようですよ。内容、価格等は追って連絡するとのこと。意見を受け付けているそうです。
http://www.shinchosha.co.jp/info/emergency/foresight2.html
投稿: pap | 2010.02.23 23:18
>>papさん
情報ありがとうございます。がっつりとアンケート送信しておきました。ただ、ネットでの有償化はかなりハードルが高いような気がしてなりません。雑誌としては超一流ですが、そこいらへんがシロートの危険な香りがしてきます。
投稿: Dain | 2010.02.24 01:02
>ディ・ヴュルト
ディ・ヴェルトが正しいようです。
重箱の隅でごめんなさい。
投稿: 北原博士に聞いてみよう | 2010.08.30 01:42
>>北原博士に聞いてみようさん
ありがとうございます、修正しておきました。
投稿: Dain | 2010.08.30 23:26