「雷撃☆SSガール」はスゴ本
めずらしいことに、maname王子がスゴ本認定していたので食指をのばす。ああ、これはスゴい。いい本を教えていただき、ありがとうございます >maname王子
これは、ビジネス書。ツンデレ、妹キャラといったラノベ風味でコーティングされた、苦い苦い現実を飲ませる、れっきとしたビジネス書なので、ご注意を。
中身を一言で語るなら、涼宮ハルヒが本気で世界征服を目指す話みたいな――とはいうものの、超次元的な存在ではなく、ごく普通の人間の女の子。といったら裏拳が飛んでくるかも。
このヒロイン、超美麗+超優秀+超ツンデレのハタチの小娘。零細企業の経営者がキャバクラで出会う設定や、「この私が特別に来てあげたわ。光栄に思いなさい!」なんてセリフまわしで、あいたたたた…と呻いたものの、なかなかどうして、ビジネスアイディアてんこ盛りで、ラノベのお化粧をした生々しい金融経済のリアルを堪能できる。
最初は電波系かと思いきや、「ねぇ、まさか、この世界が真っ当でだなんて思ってるの?」が質問ではなく、真っ正直な反語であることが明らかになる瞬間、心底びっくりする。彼女は、この異様な金融システムに"きわめて正しい方法で"勝負をかけて、勝ちつづける。
著者は経営を生業としてきた方らしく、ヒロインに憑依しては自説を開陳する。そのいちいちに、激しく同意しながらザクザク読める。次の部分に著者のホンネがズバリ現れている。で、そいつをサラリといってのける彼女がカッコイイんだ。
「そうね。この人間社会、昔も今も、お金の大本が世界の頂点。ほとんどの大衆は、お金を創るのは政府の造幣局だと誤解してる。でも実際には、頂点に君臨する一握りの金融資本家がお金を創るのよ。もし人類が後1000年文明を維持することができたらな、後生の歴史教科書にはきっとこう記述されるはずだわ。『産業革命以降300年に渡って人類は、貨幣システムを媒介にした持続不可能な奴隷制度を採用していた』ってね」

では、なぜ、彼女(リンちゃんっていうんだ)はお金を儲けようとするのか?それはもちろん、お題にあるように、SS(世界征服/Sekai Seifuku)のためなんだが――その方法を知って三たび仰け反るに違いない。やり方が型破りだからではなく、じゅうぶん実現可能だから。ここではヒントすら言わないので、本書を読む人は、楽しみにして欲しい。
もう一つ。巷にあふれている「成功哲学」について。全否定するつもりはないが、踊らされている人をかわいそうに感じる瞬間がある。「本人がよかれと思っているから」などと自分を納得させるのは難しいが、ヤメロというのもおこがましい。せいぜい、自分の周りの人に優しく警告しておこう――というメッセージが、ここではズバリ断定口調で言い切られている。曰く、「成功哲学は、西欧列強の宣教師と一緒」だってw
もちろん、「グロオーバルスタンダード」の化けの皮は剥がされ、アメリカンスタンダード(しかもダブスタ)なことは掌を指すより明らかだ。だが、リンちゃんは容赦なく言う、「努力したら何でも叶う。チャレンジすれば夢が叶う。今が不幸なのは、努力していないだけ…素晴らしい幻想ね。大衆がその夢を見続ける限り、アメリカは強大な国家でいられるわ」というセリフは言ってはいけないだろう、本当のことだから。この発想を利用できる人こそが成功するんだ――夢を見続ける人を食い物にすることで、ね。
これは別に皮肉でもなんでもない。いわゆる「成功体験」で有名な人を見る限り、「成功したこと」そのものよりも、「いかに成功したか」を売るほうに熱心だ。あとは、演出やニッチ探しの話になり、マタイ効果を目指すシノギになる。くりかえすが、成功することと、成功体験を売ることは別だ。情報商材に騙される前に、リンちゃんの話を聞くべし。そして、成功哲学を逆に利用してやれ。
ラノベでコーディングした経済小説。しかも身もフタもない暴露っぷりを味わうべし。ただ、キャラの性格上、どうしても平野綾から離れられなかった。そういや○スシーンや血のつながらない妹も堪能できる。シリーズ化希望!著者のブログは、[ここ]をどうぞ。微妙にネタバレしているので、ご注意を。
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