この本棚がスゴい「本棚2」「本棚三昧」
スゴい本棚を見るとウラヤマシイが、素直に言えない俺ガイル。
「ふんだ、どうせ死ぬまでに読みきれないでしょうしー」とかツンデレぽく腐してみるものの、やっかみにしか聞こえないね。図書館パワーユーザーの看板はおいそれと下ろせないので、こうして人さまの本棚でガマンすることになる。
本を糧にして生計を立てている人たちの本棚は、やっぱりスゴい。物量だけでなく、その人の「色」がよく見える。図書館や書店は、よくも悪くも最大公約数的な選書をしているのと好対照を成している。
たとえば、どう見ても古本屋の倉庫にしか見えない岡崎武志の本棚群は必見。氏に言わせると、「捨て犬を連れて帰るって感じ」なんだそうな。「それでこんなふうになっちゃったんですね」と次ページの本の洪水を見ると、嫁子がかわいそうに思えてくる("逆"なのかもしれないが)。
それから、COCOさんとこのは危険だ。SFSFSFSFSFミステリミステリミステリミステリミステリで埋め尽くされている。好きな人が入ったら二度と出て来れない強力な磁力を発しており、見るのも毒な空間となっている(紹介してくれる"早川さん"がまたカワイイんだこれが)。
大爆笑なのは、都築響一のセリフ。
本の場合、本当にもってなきゃいけないものなんて、ほとんどないと思うんですよね。できれば本はゼロにしたいんですね。そのとき必要なものだけ買って、終わったらチャラにするのが理想。激しく同意だ正論だ、うなづきながらページをめくると――ちょwwおまっwwwっとなる。なるほどこれが現実か。あふれる本たちが、かろうじて棚にハメこんであるといった様子にハラ抱えて笑わせてもらった。
もちろん、ちゃんとコントロールできている人もいる。やくみつるや有栖川有栖の整然とした書庫は理想的だし、山崎ナオコーラの本棚はいい本を厳選しているのがよく分かる。
「本棚2」では、以下の人の本棚を覗くことができる。と同時に、本にまつわる近況報告・悲悲こもごもを味わうことができるぞ。夢枕獏のマイブームが「鋼の錬金術師」、菊池秀行は「彼岸島」にハマっているそうな。いかにも「いかにも」で笑える。
・ 有栖川有栖
・ 安西水丸
・ 岡崎武志
・ 神林長平
・ 菊地秀行
・ COCO
・ 立本倫子
・ 都築響一
・ 西加奈子
・ 藤本やすし
・ やくみつる
・ 山崎ナオコーラ
・ 山村浩二
・ 夢枕獏
ちなみに、同シリーズの1巻目「本棚」だとこの方の本棚になる。
コンセプトは、「人の本棚をお腹いっぱいになるまで見てみたい」だから。上で紹介した「本棚2」と異なり、ひたすら本棚写真が続く。
いちばん美しいのは、いしいしんじの本棚。「ほとんどいただきものですよ」と断りを入れているものの、微妙に統一感がある。あふれて床積みされた本も含め、つい手にとって見たくなる、わたし好みのラインナップ。
成功本好きっ子が必見なのは、和田秀樹の本棚。出力は入力に従う格言まんまの本棚。古今東西のビジネス本・成功本・タネ本がぎっしりと詰め込まれており、ここからつまみ食いされているのかーと感慨深い。あの膨大な著書は、一種の要約者・編集者としてのアウトプットなんだろうね。
なんとなく予想がついたのは辛酸なめ子さんとこ。「X51.ORG THE ODYSSEY」と中沢新一が仲良く鎮座しているのを見ても違和感わかない。新明解が絶対あるだろうなと思ってたら、ちゃんと隠れるように奥に納まっていたし。
「殺し屋1」の山本英夫のセリフが潔い。
本は読むものではなく、買うもの。なので、ほぼ読んでいないです
その本棚は推して知るべしなんだけれど、さすが漫画家。いいマンガばかり揃ってますな(バラバラだけど)。「ザ・ワールド・イズ・マイン」と「不思議な少年」、「国民クイズ」と「ハッピー・ピープル」が仲良く並んでいるのを見るのも興味深い。
・ 建石修志
・ 川口葉子
・ 和田秀樹
・ 山本英夫
・ 名久井直子
・ 梅津数時
・ ヴィルジニー・オスダ
・ 北村ケンジ
・ 伊藤悠
・ 玄侑宗久
・ 青木径
・ 吉武利文
・ イナキヨシコ
・ いしいしんじ
・ ニコラス・ミアリ
・ 酒井直行
・ パルコキノシタ
・ 山本知子
・ 穂村弘
・ 天辰保文
・ 辛酸なめ子
・ バログ・マールトン
・ 祖父江慎
・ 平朝彦
・ 喜入冬子
・ 高田純次
・ モーガン・フィッシャー
・ 米原康正
両方の本棚本を比べて見ると、共通していえるのは、「アウトプットはインプットに従う」こと。いい本・芸・味を出している人は、相応のインプットが本棚に現れているね。だから、次に自分が読む著者を、ここに出ている本棚から選ぶというのもいいかも(わたしの場合は、山本英夫の作品になる。いい本棚なんだこれが)
それぞれの本棚本の違いを少し。
まず、「本棚2」は、光の入り方とか空気の色を出そうとしている。つまり、本棚の「中身」よりも、本棚の"たたずまい"を写しとろうとしており、その人にとって本棚がどんな存在なのかがよく見える。反面、書名は潰れちゃっている写真多し。
次に、「本棚三昧」は書名をクッキリを出そうとしている。部屋の感じとか、その人を立たせてみるとかいった小細工をせず、本棚の「内側」だけを際立たせている。おかげで、文字通り「お腹いっぱい」になるだろう。
そうさ、「死ぬまでに読みきれない」なんて、みんな知ってる。それでも集めてしまうんだろうね。いや、集まってくるんだろうね、自分「を」好きになった本たちが。ジョン・ラスキンのいい警句がある。
「人生は短い。この本を読んだら、あの本は読めない」
本は選びたい。これは、わたしへの、戒め。

| 固定リンク
コメント