最後は、どうか幸せな記憶を「おもいでエマノン」
もともと、某ゲームのモデルだという噂に惹かれて手を出した「おもいでエマノン」。ストーリーは違えども、生命誕生から現在までのすべての記憶を持つ彼女は、わたしの中に永くいつづけてきた。
すんなり伸びた肢体、長い髪、おおきな瞳、そばかす――ちょっとエキセントリックな彼女には、くわえ煙草が似合う。鶴田謙二氏が「SFオールタイムヒロイン」というのもむべなるかな。ちなみに、わたしにとってSFオールタイムヒロインのベスト3はこれ。
- エマノン(おもいでエマノン/梶尾真治+鶴田謙二)
- コーティー・キャス(たったひとつの冴えたやりかた/ティプトリーJr.)
- 芳山和子(時をかける少女/筒井康隆)
彼女とのわずかなひとときと、その「おもいで」をずっと大切にして生きること。
傷心をかかえた「ぼく」と怖いくらい共鳴しながら読む。物語を消費するのではなく一体化する感覚。思い入れが強すぎて、レビューよりも、思い出話をしたくなる。マンガ読んでこんなに切ない気持ちになったのは久しぶり。
ずいぶん古いSF小説だから、未読の方も多いかと。鶴田版「エマノン」が出たおかげで、マンガ→小説の順が鉄板のオススメルートになる。なぜなら、小説にはマンガの続きがあるのだから。そして、小説のエマノンがこれ以上ないほどの「彼女」になっているから。
そして、小説を既読の方は、あのラストでせつなさMaxにまで至るべし。
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コメント
久々に出たツルケンさんの新刊とあって、書店で見かけて即買いしてしまいました。空気の冷たさまで肌で感じ取れるような画力に脱帽です。日本のSFは人が持つ過去への憧憬に訴えるような、良い意味でこじんまりとした話が得意ですね。生活感を強調した「電脳コイル」等とある意味和製SFの血脈として通じるものがあると思います。
関係ない話ですが最近話題のガガガ文庫から出ている「とある飛空士への追憶」が素晴らしかったです。機会があれば是非。
投稿: jackal | 2008.05.28 19:55
時代背景が自分とリンクしないため
どこか父親の恋物語を聞くような
近しい人の気分で進んでいたら
最後にガツンと殴られました
僕には苦しく胸詰まる感覚でなく
どこかビールのような爽やかでほろ苦い
ttp://jp.youtube.com/watch?v=Ar-vkJAKMXo&feature=related
今の僕はこんな気持ちです。
投稿: TH | 2008.05.29 21:32
>> jackalさん
> 空気の冷たさまで肌で感じ取れるような画力
ああーたしかに。
吹きさらしのフェリーのデッキとか、降りしきる雪にはさまれたプラットフォームに、空気の冷たさを感じました。
その分、彼女の唇のあたたかさとか、「さよなら」のコトバがくっきりと感じ取れたり――もうマンガを読む感覚ではないですな(^^;
「とある飛空士」はえらい人気を博しているみたいですね、「王道」との噂を聞きます。
>> THさん
!!!
思わず泣けるトラップ!ですな。
「失った夢だけが 美しく見えるのは~」でホロリときました。
投稿: Dain | 2008.05.30 00:20