いつか見た未来「虎よ、虎よ!」
SFって、すごいねぇ… もっともこの場合、"Space Fantasy" かも。
満員電車に残された最後の空間、頭上に向かって拳を突き出す。おどろおどろしい表紙を上に向けて、昇龍拳のポーズで読む。ぐいぐいストーリーに引っ張られて、そのまま天井に吸い込まれそうだ。「ジョウント!」と叫んだら、そのままテレポーテーションできそうだ。
デュマとヴェルヌを下敷きにして、石ノ森章太郎とスティーヴン・キングの道具立てを持ってきた感じ(後者2人は本書から拝借してるんだろうが)。説明抜きでじゃんじゃん投入されるアイディアは、出た当初(1956)相当面食らわせたに違いない。物語自体が強烈な迫力と磁力と理力を帯びたハリケーンみたいで、ぼんやり読んでると跳ばされる。男の情念の炎にゃ、読み手の「手」も焼かれること間違いなし。
すでにベスターの「ゴーレム100」を読んでいたので、[こんなブッ跳んだ感覚]に用心して読んだぞ。それでもラストはすげぇの一言。最初で提示された男を燃え狂わせる「動機」は物語全体を横切り、結末にぶつかって粉々になる。これ、原書で読んだらもっとすごいだろうね。韻律とか段組やフォントといった視聴覚を含めた面白い読書体験になるだろね。背表紙の惹句を引用しておくが、酩酊性が極めて強いため、途中からどうでもよくなるに違いない。
"ジョウント"と呼ばれるテレポーテイションにより、世界は大きく変貌した。一瞬のうちに、人びとが自由にどこへでも行けるようになったとき、それは富と窃盗、収奪と劫略、怖るべき惑星間戦争をもたらしたのだ! この物情騒然たる25世紀を背景として、顔に異様な虎の刺青をされた野生の男ガリヴァー・フォイルの、無限の時空をまたにかけた絢爛たる〈ヴォーガ〉復讐の物語が、ここに始まる……鬼才が放つ不朽の名作!

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コメント
私は浅慮なことに満員電車の喧騒の中、本を読むスペースなど無いものと決め付け両手で吊革を握り締める毎日です。
どうにかして本の世界に逃げ去りたいと何らかの本を常に持ち歩いていますが、鞄に眠らすだけでした。
今日Dainさんの昇龍拳という方法を見て、正直目からうろこです……
正直ハードカバーはかなり辛そうですがw
私もDainさんのように読書に対して貪欲で積極的な姿勢で臨んでいきたいです。
投稿: 豆山 | 2008.04.07 00:07
>> 豆山さん
おお、吊革があるのですか… それは恵まれていますね。運命の女神が微笑んで吊革ゲットした暁には、輪っかに潜らせた手で本を持ちます。吊革に恵まれず、ハードカバーのときはバンザイポーズでッ
投稿: Dain | 2008.04.08 23:44