「料理上手の台所」でコックピットのような台所を目指す
昔、知人の家の冷蔵庫を物色しては、ヒンシュク買ってた。今じゃ代わりに食器棚や調理道具を眺めては喜んでいる。機能性を追求すると自然と美しくなる好例だね。
本好きの知性が本棚に現れるように、料理上手の台所は使い手の人品を感じ取ることができる。使い込まれたほうろう鍋や、磨いで小ぶりになった包丁の年季にびびる。中華料理のプロは数ヶ月で鍋をダメにするというが、そういった暑苦しさは微塵もない。肩に力のはいらない、等身大の"こだわり"を見ていると、だんだんと口が緩む。
共通しているのは、「台所が生活の中心にある」ということ。風が通り、日が入り、そこから生活空間を一望できる場所、それが理想。もちろん住宅事情により、都合よくいかないかもしれないが、棚や配置に工夫を凝らしている(←その凝りかたも人それぞれで興味深い)。必要なときに、必要な道具やストックが手の届く、"ちょうどよい狭さ"こそ重要なのかも。「小まわりのきくコックピットのような台所」を目指す山本祐布子さんの厨房は一見の価値あり。
さらに、どの台所もピカピカ。撮影が入るから掃除したのでなく、もともとキレイにしているようだ。マンガ「大使閣下の料理人」で、「プロフェッショナルのシェフの厨房はピカピカ」を知って以来、わたしの台所掃除への情熱は並じゃぁないが、年季の入り方が違う。見習うところ多し。
非常に参考になったものは、以下の三つ。
- 引き出しの調理器具の並び(刃物類と菜箸・トングの配置)
- 乾燥ストック・調味料の収納(同じものは同じ入れ物に)
- 水まわりの配置(とくに洗い物)
たとえば二つ目の調味料、特に「塩」にこだわる米沢亜衣さんは、食材にあわせて6種類の塩を使い分けているという。それぞれ、小ぶりの広口ビンに入れて、カゴに並べている(計量スプーンで量りやすい)。食卓塩やクレージーソルトを"ふりかける"ウチとは偉い違う。塩は量らないと。
ナットクしかねるのが三つ目の水まわり。ほとんどのシンクは小さい(狭い)。人数にも拠るが、食材さばききれるのか? あるいは汚れた食器や鍋パンで身動きとれなくなるぞ。「食材は小ぶりのボウルに取りおき」「洗えるものは調理中に洗っておく」といった小技はもちろんウチでもやっている。それでもムリあるんじゃないのー? とツッコミながら読む。おそらく、「料理上手」たちは、ひとりか、ふたり向けの小規模な食卓なんじゃぁないかと。個食傾向が出ていて面白い。
さて、残念ながら(?)わが家では嫁さんの料理センスが抜群なので、ダンナの出る幕がない。せいぜい、深夜に夫婦で呑む酒の肴を作る程度なので、台所での発言力は圧倒的に嫁さんが上。読ませてみるかー(でも、道具に頓着しないので、反応鈍いかも)。
本書で紹介される台所は、以下の通り。モデルルームのような「つくったような台所」もあるが、ご愛嬌ということで。
米沢亜衣(料理家)
ケンタロウ(料理家)
石井すみ子(主婦)
山本祐布子(イラストレーター)
高橋みどり(スタイリスト)
伊藤まさこ(スタイリスト)
渡辺有子(料理家)
深尾泰子(布小物制作家)
高山なおみ(料理家)
長尾智子(フードコーディネーター)
大橋利枝子(スタイリスト)
ホルトハウス房子(料理研究家)
高尾汀(主婦)
塩山奈央(パタンナー)
山崎陽子(エディター)
大谷マキ(スタイリスト)
松長絵菜(料理研究家)
柳瀬久美子(フードコーディネーター)
関貞子(ギャラリー経営)
稲葉由紀子(エッセイスト)
宮脇誠(古物商)
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コメント
嫁さんがつくる料理が美味しいというのは本当に
幸せなことですよね(しみじみ
うちの嫁さんも道具に頓着しないタイプなのですが
珍しく「買いたい」と強く希望したのがコレ↓
http://www.asahikei.co.jp/katsuryoku.html
彼女の直感どおりコレは買ってよかったです。
料理の味が大幅にレベルアップしました。
投稿: ラッキーマン。 | 2008.02.20 22:49
>>ラッキーマン。さん
活力なべは毎日使ってますよー
これでご飯を炊くと、ツヤツヤの「立った」飯になります
野菜は煮崩れしないし、ブロック肉も芯まで通りますし
道具に頓着しないものの、鍋だけは妥協しないようです>>わたしの嫁さん
投稿: Dain | 2008.02.20 23:44