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わかる瞬間が楽しい「5分でたのしむ数学50話」

5分でたのしむ数学50話 やりなおし数学の手引きとして愉しい。「?」 が 「!」 になる瞬間が心地よい。この快感は学生の特権かと思っていたが、なかなかどうして、5分で十分に知的好奇心を刺激させられる。thさん、面白い本をオススメしていただき、ありがとうございます。

 ただし、ちゃんと理解できたかあやしい。受験数学の極意(数学は暗記科目)が身に付いてしまっているので、分かろうとするより覚えようとする自分が悲しい。試験もないし、知ったかぶる必要もないから、「わかる快感」だけのために向き合えばいいのに。

 本書は、「5分間だけ数学について考えてみませんか」というテーマで、ドイツの全国紙に連載されたコラムの傑作50選だという。このテの入門書は、数学の普遍性により、似たようなトピックスが並ぶはずなんだが、着眼点がとてもユニーク。

 しかし、目のつけどころが面白い。「自分の並んだ列がいつも遅い本当の理由」や「数列の頭は"1"になりやすいことをGoogleで実験する」といった、数学っぽくない場所からアプローチする。もちろんすぐさま深いところまで連れて行かれるので、楽しめるところまでついていけばいい。

 たとえば、最初の「自分の並んだ列がいつも遅い本当の理由」なんて人を食ってる。その理由は――

たとえば郵便局で、あなたの並びうる列がほぼ同じ長さで5つできていたとしよう。そのとき、本当に一番早く進む列をあなたがたまたま選んだ確率は5分の1、つまり20%だ。別の言い方をすれば、80%の確率で、あなたは間違った列で待っていたことになる

こんなことを繰り返せば、自分は運命によってひどい仕打ちを受けていると考えるのだが、おあいにくさま、間違った列に並ぶ可能性の方が高いからね。この調子で待ち行列理論まで連れて行かれる。「レストランで待ち客のために椅子を何脚用意すればいいか?」というやつ。

 もうひとつ、確率計算のパラドックスである「ヤギ問題」。名前は笑えるが、難しすぎて理解できなかった。あるゲーム番組でのこと――

番組の司会者が、勝ち残った回答者たちに3つのドアのうちから1つを選んでもらう。1つのドアの向こうには、めざす賞品が隠れている。他の2つの背後には、はずれの印にヤギが置かれている。回答者はまずドア1を選ぶ。すると司会者はドア3をあけてみせる。そこにはヤギが置かれている。さてここからがみそだ。回答者には、もう一度変更のチャンスが与えられる。つまりドア1をやめて、ドア2に変更したいかどうか聞かれるのだ

 ドア3を開けたところで、「あたり」のドアが変わったわけではない。この見方だと「変更する必要なし」となる。しかし、ドア3が開かれたことによって状況が変わったと考えるのなら、「変更する必要あり」になる。さぁどっち?

 答えを先にいうと、変更したほうが有利なんだって。賞品獲得のチャンスは、変更しない場合は1/3にすぎないが、変更した場合は2/3になるという。その証明に12ページを費やしている(5分どころか30分かけたけれどギブアップ)。最初はこう考えてた→「変更するかしないかのどちらかしかない。変更しない場合の確率は1/3、だから変更する場合は1-1/3」。ところが、「司会者がヤギのドアを開ける」という状況の変化をどう考えるかによって、かなり複雑な計算になる。われこそはという方は、本書を手にする前にご自身で考えてみては(くれぐれもわたしに訊かないように!)。

 こうして脳をあれこれ動かすのは愉しいが、そうでない人もいる。「数学なんて、実際に役立たないではないか」という方にいいことが書いてあったぞ。ロト6の話だ。

 ちゃんと計算するなら、いかにボッタクリであるかよーく分かる→ 1/13,986,816という当選確率をイメージするなら→「4.37kmに積みあがったカードから一枚のあたりを引くようなもの」なんだって。それでも挑戦するならば、「誰も選びそうも無い数字の組み合わせを狙え」という。偶然は過去のことなど何も覚えていない。偶然は「あたりそうな」組み合わせを選ばない。だから、万が一、じゃなくって、1398万が一当たった場合、他の当選者と分け合わなくてもいい数字でいきなさいと。

 四次元をイメージする方法から「五次元のケーキ」を想像したり、√2が分数で表現できないことを名探偵ホームズのように証明したり、読み手を飽きさせない。分かるもの・分からないものをひっくるめて楽しめる一冊。

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コメント

どういたしましてです、Dainさん。

って言うよりも「えっ、もう読んだの!?」って感じです。こちとら「スゴ本」リスト、ここ最近一冊も読んでないのに…。劇薬系は論外なのに、それを差し引いても、このブログはわんさかとまぁ俺の気を引くものを次々へと…orz

相変わらずのお奨め上手、見事だと感服つかまつりました。良かった、Dainさんでも「理解できたか不安」と正直に書いてくれたおかげで、自信をもって解らないままで生きていけますw

投稿: th | 2008.02.22 01:34

thさんのおっしゃる通り、勧め上手ですね。早速近所の図書館で在庫を確認して、予約しました。5人待ちでした。
『ヤギ問題』は直感に反してますよね。有名な問題の筈なんですが、納得感が得られないと言うか。

投稿: 金さん | 2008.02.22 11:01

>> thさん

 おかげで知的興奮に満ちた5分×50話を楽しめました
 (5分以上考えたのがほとんどですが…)
 分からないことに悩むより、覚えようとする自分の習性が悲しかったり

>> 金さんさん

 「ヤギ問題」は、その周囲の論争も含めて解説してくれています。
 名前はアレですが、「変化した状況を考慮した戦略的判断」といえば、
 ビジネスにも応用できるような…

投稿: Dain | 2008.02.23 08:43

ヤギ問題には考えさせられました。
読んでいてすごく楽しかった。
司会者は必ず回答者の選んだドア以外の2つのうち、
正解ではないはずれのドアを開けてみせるなら・・・
(司会者が正解えらんだらゲーム終わっちゃう)

3つのドアのうち、
回答者が選ばなかったドア2、ドア3のどちらかに
賞品がある確率は2/3。
仮にあった場合、司会者が賞品ではなく
はずれを「意図的」に選ぶので賞品は必ずのこり、
ドア2、ドア3のうち1つに絞られる。

要するに回答者が選ばなかった
ドア2、ドア3のどちらかに賞品がありさえすれば、
そのうち残ったほうのドアが正解となるので・・・

「ドア2、ドア3のどちらかに賞品がある確率」
は2/3、この場合のこったドア2に賞品がある確率も
2/3になる・・・ような気がする

空気読まずに長文すんません

投稿: | 2008.02.23 16:43

>> 名無しさん@2008.02.23 16:43

フォローありがとうございます
司会者があけるドアについて言及がモレていました
あたりまえですが、司会者は「あたり」のドアを開けません

司会者がドアをあける「前」と「後」の状況がガラリと変わっているのがミソですよねー

 ■司会者がドアを開ける前なら、

   ドア1が「あたり」の確率 : 1/3
   ドア2が「あたり」の確率 : 1/3
   ドア3が「あたり」の確率 : 1/3

 ■司会者がドア3を開けた後だと、

   ドア1が「あたり」の確率 : 1/2
   ドア2が「あたり」の確率 : 1/2

になりますね(閉じたドアは2つで、あたりはどちらかにあるから)
悩ましいのは、最初に選んだドアを「変更するか」「変更しないか」ですね
一見、変更してもしなくても同じように見えるのですが…

投稿: Dain | 2008.02.23 18:53

ドア1を開けるか、ドア2とドア3を同時に開けるかってことですよね。ドア3を司会者が開けてくれちゃってるからややこしいのかなぁ。
見当違いでしたらスルー希望ですw

投稿: | 2008.02.23 23:10

「ヤギ問題」って色々呼び名がありますね。
数学苦手な知り合いは
http://ishi.blog2.fc2.com/blog-entry-182.html
の解説で判ったようです。
最初、感覚的に納得できなくても、扉の数が100で司会者が98の扉を開けた
って極端な状況を考えれば納得するんじゃないでしょうか。

投稿: nido | 2008.02.24 00:00

空気読まずに長文書いた者です。
なんかこう・・・難しいですよね。
つき合わせてしまってすみません・・・

「ドア1を開けるか、ドア2とドア3を同時に開けるか」
っていうのはわかる気がする。

最初に選んだドア1を1つのグループとして考え、
残ったドア2、ドア3をもう1つのグループとして
考えるんです。

ドアの数に違いはありますが、「ドア1のみ」の
グループは当然1/3の確率で正解となり、
「ドア2とドア3のグループ」には2つのドアがあるので
2/3の確率で「正解が含まれている」となります。

 ドア1のグループが「あたり」の確率:1/3
 ドア2とドア3のグループに
 「あたり」が含まれている確率:2/3

ここで司会者登場。最初に選ばれなかった
「ドア2とドア3のグループ」のうち、はずれを1つ
教えてくれます。
これによりもしも「ドア2とドア3のグループ」に
正解が含まれていた場合、ドア2とドア3のうち
はずれじゃなかった方が正解となります。
もちろん正解が含まれていなかった場合は
ドア2もドア3もはずれかもしれませんが。

「ドア2とドア3のグループ」に
正解が含まれている確率は2/3、正解が含まれていさえ
すれば例の司会者のおかげで絶対あたるので、
2/3の確率さえクリアできれば後は確実なんです。

「ドア2とドア3のグループ」ではなく「ドア1のみ」
のほうに正解がある確率は1/3、これを変更して
「ドア2とドア3のグループ」のほうにある
司会者に潰されなかったドアが正解である確率は2/3。

最後に迫られる2択ってなんか仕組まれてると思う
・・・んだと思うんですが・・・
2連の長文ほんとすんませn!
お忙しいだろうしスルーでもいいですよ?

投稿: 山羊 | 2008.02.24 01:06

>> nidoさん、山羊さん、名無しさん

  > http://ishi.blog2.fc2.com/blog-entry-182.html
  > の解説で判ったようです。

テラ分かりやすい!!
教えていただき、ありがとうございます!!

  > 感覚的に納得できなくても、扉の数が100で
  > 司会者が98の扉を開けたって極端な状況

この例も分かりやすいです
もともとは、「モンティ・ホールのジレンマ」だったんですねー
直感的な確率と、本当の確率が大きく違うことを実感しました

山羊さんの説明は、とても分かりやすいです(「司会者に潰されなかったドア」という表現がツボです)。あわせて読むと、最初のわたしの理解でよかったような気がします

つまり、

 (a) 最初に選んだドアが「あたり」の確率  … 1/3
 (b) 最初に選んだドアが「はずれ」の確率  … 2/3  (1-1/3だから)

で、司会者が最初に選んだドア以外のドアで、「はずれ」を全部開けてくれます。だから、(b) のドアは1枚だけです。そこで、

 ドアを変更しない → (a)
 ドアを変更する  → (b)

のどちらにする? という問題にすれば、(b)の方が有利ですね

投稿: Dain | 2008.02.24 17:19

この猫間違えたら無限ループw
なんか「ちがうにゃ」っておこられたw

投稿: 山羊 | 2008.02.25 02:24

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