ココロにガソリンを「ビジョナリー・ピープル」
偽装された「成功」を、ずっと追いかけていたことに気づかされた。そして、エネルギー充填120%できた。やまざきさん、オススメありがとうございます!
まず、自分が恥ずかしい。「カネ」や「名声」、「地位」など、世間の通りの良い"SUCCESS"を「わたしの目標」にすり替え、手帳に書き付け悦に入っていた。ベストセラーの成功本をマネすれば「成功」できると信じていた。そもそも「成功とは何か」を本気で考えていなかったことが情けない。
その上で、自身と向き合うことができた。ビジョナリー・ピープルの「意義」「思考スタイル」「行動スタイル」と照らし合わせながら、わたしはどうなのか? をくり返し内省することができた。
■ 本書の「まとめ」
本書を「まとめ」るのは簡単だ。世間一般の「成功」を捨て、改めて「成功」を問い直す。自分自身で成功を定義し、最低20年以上その分野で永続的に影響を与えている人を「ビジョナリーな人」と名付け、直接インタビューをする(なんと202人!)。そして、彼/彼女らに共通しているエッセンスをまとめあげたものが、本書だ。
もちろん成功本好きにとっておなじみのスティーヴン・コヴィーやロバート・キヨサキもいるし、ビルならゲイツもクリントンも、ネルソン・マンデラもコントリーザ・ライスもジャック・ウェルチもクインシー・ジョーンズもいる(全リストは[ここ])。分野は脈絡なし、ただ一つ共通しているのは、継続して影響力を与えつづけている人に絞っていることだ。一発屋の成金はおらず、本質的な成功のエッセンス・オブ・エッセンスとでもいおうか。
もちろん、本書を「あたりまえのことばかりじゃねーか」と腐すのはたやすい。しかし、「あたりまえのこと」をここまで突き詰めて調べ上げたレポートは、ないぞ。そもそも、そんな風に腐す奴は知ってるだけで実行しないからな。どうして断定できるかって? そりゃわたしがそういう奴だから。だから、次の問いかけはグサリと刺さった。
なぜ今の今、私は自分の生きがいに打ち込んでいないのだろうか?
本書を読むことは、この質問を抱えながら自分にとっての「人生の意義」を注意深く検証する作業になる。お手軽にTips/Hacksをつまみ食いすることが「読書」だと思ってる人には、ちとツライ経験になるかも。さもなくば自己欺瞞でコーティングして読み干すのもアリ(一切消化されないだろうが)。
本書では、ビジョナリー・ピープルに共通するスタイルを、次の3つの観点から分析している。それぞれ相反することなく、表紙の3原色のように照らす。重なったところが白色、即ち自分にとっての成功で、ビジョナリーな人はそこを最大限にするため全力を尽くす。
- 意義―― なぜ、成功しつづけられるのか? その理由
- 思考スタイル――究極の変身は、頭の中から始まる
- 行動スタイル――生きがいのある人生を紡ぐ
■ 「意義」について
まず意義がくる。ピンとこないなら元の"meaning"、つまり「自分の人生の意味」を考える、しかも徹底的に。これをやらないまま、「カネ」「チカラ」「スキル」といった借り物の成功を目指すのは、間違った山に登ることになる。もちろん、金なんて不要だとは書いていない。代わりに、金そのものを目標にしてしまうとどういう結果になるかがセキララとある。
自分にとって「生きがいとは何か」を強く意識した後、自分の考えと行動を一致させて自分なりの意義を定着させる。この文に「自分」が3回出てきたが、冗長ではない。自分でやらなければ、意味がない。これを最初にやっておかないと、思考スタイルや行動スタイル「だけ」マネしても、永続的な成功はおぼつかない。目標それ自体が目標になってしまう恐れがあるからだ。
第一部を読んでいて、ずっとアタマの中を流れていたセリフがある。ビジョナリーな人は目標そのもののために目標を追いかけるようなことはない。彼らはまず、自分自身にとって大切な、意義のあるものを見出そうとする。つまり意義が一番先にくる。それによって残りのモデルが規定される。ビジョナリーな人は、適切な針路を維持し、生きがいとなるもの(意義)を追い求めるために真剣に行動しようとして、なんとしても自分の考えをまとめあげる
なにがきみのしあわせ なにをしてよろこぶ
わからないままおわる そんなのはいやだ
そう、ひょっとすると、「わからないまま終わって」いたかもしれない。いや、そもそも自問すらしなかったかも。借り物の「成功」に振り回され、そいつを微分した「目標」を追いかけているうちに、割当て時間が尽きていたかもしれない。
■ 「思考スタイル」について
最も響いたのは、「楽観主義のほうが、最終的にトク」ということ。ポジティブ教だと腐す人はいるが、言わせておけ。永続する成功にとってプラスの方向に働いている事実を確認できる。
ただし、悲観主義がダメ、とは書いていない。必要に応じて悲観的な立場を取ることもあるが、それはリスクを秤にかけるときに限定されている。重要な選択をとるときは、「自分が大好きなほう」をその結果の良し悪しにかかわらず選べという。そのほうが、結果的に生き延びられる率が高いからだそうな。ウィンストン・チャーチルの「私は楽観主義者だ」は有名だが、重要なのはその続き「―― 楽観主義以外のものはどれも役に立ちそうにないからな」。
もう一つ。思考スタイルはスキルのようにトレーニングできることは知っていたが、むしろ、いつでもそのスタイルで思考することの方がが重要だ。スイッチのように思考スタイルを切り替えるのではない。成功本を読んで成功できるような気分になるのは愉しいが、気分だけだ。例えば、スティーブ・ジョブズの次の箴言はどこかで読んだことがあるだろう。
人に与えられた時間は限れられている
だから、誰か他人の人生を生きて、その時間を無駄にしてはならない
ここで重要なのは、怒りでアタマが爆発しそうなときでも、この文を思い出すことができるかだ。こいつを手帳に書き付けるのもいいが、最終的には、どんなときにもこのスタイルで考えられるようにならないと。
■ 「行動スタイル」について
ビジョナリー・ピープル202人は202通りの行動スタイルを貫いており、共通した行動スタイルは、ほとんどない。それでも奇妙なほど似通っているのは、「うまくいかないときの行動スタイル」だ。何か困難なことにぶつかったとき、ビジョナリー・ピープルは申し合わせたかのように、「こだわらない」。
もちろんビジョナリー・ピープルも人間だから、怒り狂い、悲しみくれ、非難をすることもあるだろうが、「すぐに忘れてしまう」。いつまでも泣き言をくりかえすようなことはしない。ノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツは、うまい言い方をしている。ビジョナリーな人がすぐに退けるものの一つに非難がある。彼らと話をするとき、明らかに抜け落ちているとわかるのは、他の人に対する非難や自分の抱えている問題などをくどくど並べ立てるような人間的な性向だ
「味わった敗北感」と「最終的に生み出したいもの」すなわち「意義」と比較しているところに注目。そのいっぽうで、自分で変えられることにはしっかりと目を向け、それに真正面から取り組むところが、これまた奇妙に一致している。「彼らは過去のツケを将来に回すようなことはしない」のだという。実際、いつまでも非難しているということは、問題に対処していることにもならないし、ましてや「意義」に向かって進んでいることにもならないからね。まさに「人事を尽くして天命を待つ」そのもの。「ものごとがうまくいかないとわかったとき、絶望的な気持ちになるのは当然だ」(中略)ツツは身を乗り出して、ささやくように言った。「それでもあきらめないことだ。感情は人生の中を駆け抜けていく嵐のようなものだ。味わった敗北感は、最終的に生み出したいものと比較すれば、取るに足りないものだ」と語っている
さらに、ビジョナリーな人にとっても落とし穴になりがちな「間違った山に登る」事例も紹介されている。シェア至上主義のジャック・ウェルチが陥った罠はかなり笑える。ウェルチの会社を見学した人は、罠をこう指摘した。
この失敗例は学ぶだけでなく、日々の行動に反映できる。すなわち、定期ふりかえりの際にこう自問すればいい、「持続させるべきものは何か」と。意義を理解し、自分の挫折ポイントから学習することに意識を集中させる。「ねばり強い持続性」はメリットとして見なされることが多いが、間違った目標に粘り強く頑張ることは悲劇だろう。なぜそれが「目標」なのか、どうやって確認したらいい?「あるマーケットの規模を小さく見せかけて、ナンバーワンになっていると言えてしまうだろう。もし先頭にいると言いたければ、うまくいっているという評価をひじ掛け付きの椅子で生産量がナンバーワンという観点からすればよいだけの話だ」
■ もういちど、「意義」について
ここで、最初の「意義」に戻ってくる。
例えば、コヴィーの「第8の習慣」の話。彼の「すべてのことは最終的な目標を頭において始めるべきだ」と言ったことが誤解されているそうな。本来コヴィーが訴えたかったことは、頭においておくべき目標をどれにするのか自分で判断しろ、ということ。目標が合っているのか、違っているのか、分かるのは自分しかいない。しかも、真剣に、注意深く考え抜いた上でしか、判断することができない。わたしの人生の意味をつけるのは、結局、わたし。あたりまえのことなんだけれど、あらためて突きつけられたのは、「第8の習慣」でのたとえ話のおかげ。
ここで間違えてはいけない。真剣に目の前の仕事と取り組むことと、真剣に自分に取り組むことは、ひとまず別のものだと考えてみる。その上で、両者の重なるところと膨らませるところに注力すればいい。「仮に読者が心臓発作に襲われたとしよう。生命の危機を前にしてどんな目標を最優先に設定するか。自分に残された時間の中で、何をするのが最も大切なことなのか。なぜ、自分が傷つかないかぎり、自分の将来を考えるのと同じ真剣さで、意思決定をしようとしないのか」
読むとココロを掻き立てられる。トム・ピーターズのような「尻に火をつける」感覚ではなく、ドラッカーのような「ゆるぎない意思をつかむ」気持ちになる。同時に、ココロにガソリンが注入されてくる。「人生に必要なものは、情熱、覚悟、能力」だと、コントリーザ・ライスは警告する。「この三つのうちどれをはずしても、いつまでも続けられる成功は得られない」。定期的に読み返して、これを「自分の情熱」「自分の覚悟」「自分の能力」で置換しよう。「7つの習慣」の刃を研ぐ(Sharpen the Saw)ように。
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コメント
お初です。。
いきなりなんですが、お礼を言いたいです!
いきなりすぎてすいません。Dianさんの
このサイトを発見してからまだ3か月弱しか
たっていないのですが、このサイトのおかげで
色んなモノの捉え方ができるように(なったと
思っているだけですが…)なりました。
ありがとうございます。
19歳の無知な僕にとってのこれからの糧に
なりそうなスゴ本ばかりでした。僕も自分
なりに本は読んでいるほうだとは思ってい
まましたが、偏った本の読み方をしている
ことに気付かされました。。
僕も自分なりのスゴ本を見つけたいと思います。
えらそうな事を長々と書いてすいません!
乱文失礼しました!
投稿: Landon | 2008.01.25 01:56
愛と勇気だけがともだちさ
そうだったらどんなに強くいられることか、
と思います。
日々の忙しさに紛れて、自分と向き合うなんて
なかなかできないですよね。
Dainさんのオススメをきっかけに
したいと思います。
投稿: ぴよ | 2008.01.25 12:42
>> Landon さん
ありがとうございます、面映いです
ここ「も」偏っているので、ご注意を
スゴ本を見つけたら、ぜひ教えてくださいませ
(19ですか…わたしがその頃は、オンナのことばかり考えてた気が)
>> ぴよ さん
> 愛と勇気だけがともだちさ
アンパンマンは、ともだちいないんだね…
冗談さておき
本書を読むのは、自分と向き合う勇気が必要かもしれません
(でなければ凡百の自己啓発本の一つとして読み飛ばすッ)
投稿: Dain | 2008.01.26 08:43
既読かもしれませんし、あんまり本書と関係ないですけど「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」を思い出しました。
要約すると「短所ばかりじゃなく長所もみなさい」的な本でしたが、本についてるコードを使って、ネットで一回きりの才能診断ができるのが特徴的で、なかなか的を射ていました。
すくなくともエゴグラム診断よりは。
人生を楽しんでいるから成功できる。分かっちゃいるんですけど、難しいですね。
投稿: vol | 2008.01.27 22:20
>> vol さん
> 人生を楽しんでいるから成功できる
ああ~確かにその通りだと思います
「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」は立ち読みで済ませてしまいましたが、
ネット診断はちょっと惹かれました
短所を克服するための時間は、あんまりないから
本書のビジョナリーな人は、短所をプラスにするよう仕向けていましたね
投稿: Dain | 2008.01.27 23:01