人と人をつなぐ技法「チームビルディング」
「チームはできるものではなく、つくるもの」。この視点はありがたい。チームをまとめる立場なら、この視点+技法は必須。プロジェクトチームから町内会まで使える。
好むと好まざるとにかかわらず、社畜でいるかぎり、三十路も後半になると、一匹オオカミでいさせてくれない。「面倒みてやれ」という暗黙のメッセージとともに、何人か付けられる。たいていは、数回の毎朝ミーティングでチームらしくなってくる。
これが10人、20人のプロジェクトチームになると話が違ってくる。さらに、「思惑」「肩書」パラメータが追加されると厄介だ。以前のわたしは、アイスブレイクをいくつかと、赤ちょうちんぐらいしか知らなかった。仕事を通じてチームは形成されるものだと思っていた。
ところが、本書では、チームをつくる方法があるという。短期間で活性化したチームとして機能させるためのメソッドが紹介されている。[アジャイルレトロスペクティブズ]がチームの「ふりかえり」とすると、これは、チームの一体感の「予習」のようなもの。仕事に揉まれる前にチームをonにできるのは嬉しい。
- 「人組み」と「場づくり」の方法(グルーピングやレイアウト、タイムチャート)
- アイスブレイク(時間・人数・道具ごとでケーススタディ付き)
- チームエクササイズ(合宿や研修でビジョンを共有する)
- 硬直した空気を「かきまわす」
- 問題児への対処法
- チーム文化を継承する
チェックインや他己紹介、トラストフォール(目をつぶって倒れる一人を皆で受け止める)は経験済みだが、わたしがモノにしてみたいものをいくつか紹介してみよう。全てホワイトボード必須なり(めざせ白板マスター!)。
増えるもの/減るもの
チームの中で「これから増えるもの(more)」と「これから減るもの(less)」を列挙して、Tチャートにまとめる(例 : 競争が増える、顧客が減る)。チャートを見ながら将来のチームの姿を話し合い、問題や課題に対しどう対処していくか、そのとき何を大切にするかを議論して、ビジョンにまとめる。数が多い場合は、重要度によるランク付けや内部/外部といったグルーピングをして議論する。
SWOT
分析のためのSWOTというよりも、チームや環境認識の共有のツールとして使う。強み(strength)、弱み(weakness)、機会(opportunity)脅威(threat)のマトリクスを描き、一項目ずつ順番に意見を出し合う。「機会を使って、強みを強化/弱みを克服できないか?」「強み使って、脅威に打ち勝つには?」と問いかけながら、チームのビジョンをまとめていく。強み→資源/長所、弱み→課題/短所、機会→追い風、脅威→向かい風と言い換えると吉。他のフレームワークとして、「will/can/must」の3つの重なる円や、3C(company/customer/competitor)が有効。
タイムマシン法
未来から現在に戻ってくるつもりで。まず、N年後の自分たちの姿を想像して、そのときどうなっていたいか、どういう状態が望ましいかを出し合う。次に、それを実現するためにはN/2年後にどうなっていればよいかを、さらにN/4年後にはどうなっているべきかを出し合う。これをつなげて、明日からすぐ動けるアクションプランにまで落とし込む。ビジョンをつくりながら、そこへ至るロードマップまででき、しかもビジョン実現への責任感が強まる優れた方法。必ず将来を先に決めてから、現在に戻るところがミソ。おそらく、最初は気楽に語り合っていたのが、年限が近づくにつれ現実味を帯びてきて、チームの中に葛藤や抵抗が生まれるはず。そうなっても、できるだけ元のビジョンを修正せずに、決意を高める方向へ促す。
説得のための分析技法が、チームのビジョンを共有するツールになることに気づいたのは収獲。課題を抱え込んだりせずに、チームで揉めばいいわけね。
ただ、チームをつくる際、「まずゴールの共有」と考えているわたしにとって、いいヒントがあった。逆説的だが、「やってから考えろ」という。つまり、目的やゴールはさておき、まず作業にとりかかり、しばらく進めていくうちに、目的に意識を向けるように促す。
やる前にゴールやプロセスを議論しても、観念的で散漫になりがち。だから、具体的な作業を経てから、ゴールを共有してみては、という提案は腹に落ちるものがあった。そういや、PMBOKでも「WBS作成はチームメンバーで共同化しろ」とも言っていたなぁ。「プロセス作成はマネジメントだけで」と凝り固まっていたのかもしれん。
試してみる。

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