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わたしの7つの「ふりかえり」

 [チームリーダーは「アジャイルレトロスペクティブズ」から盗め]の続き。わたしの「ふりかえり」をふりかえってみる。

■01 定期的に、ふりかえる

 実は、定期的なふりかえりは、したことがない。たいていは、プロジェクト終了直後や、さらにずっと後になって、「あんな時代もあったね」と語ることはあっても。ただし、「笑って話せる日」は絶対こない。笑わず小声で真剣に「あの二の舞だよ」、あるいは「まだ学習してへんのかッ」と刺す。

Agileretrospectives そういうチーム運営を定期的にふりかえる必要性に気づいただけでも、本書に感謝しないと

 まずいチーム運営は、トラブルという見えやすい形でフィードバックをもらっていた。メンバーの不満や、作業プロセスのボトルネック、品質チェックの不備は、プログラマの喧嘩や明白なサボタージュ、収拾のつかないバグズライフに化す。

 そして、「トラブルの対処」という形で皆の不満を吸い上げたり、手順書を見直したり、試験観点を追加していた。遅きに失する「ふりかえり」だが、やらないよりはやったほうがマシなことを、経験的に知っている(better late than never!)。

■02 わたしたち v.s. 問題

 のらりくらり言い逃れるクチをつまんで、「おまえのバグじゃボゲェ!」と怒鳴りたい。ヘラヘラ笑ってるか、逆切れしている顔を張り倒してその上でツイスト&シャウトしたい―― という非常に強い欲求に支配されることがある。

 こういうとき、わたしは何をするか?

 やおら背を向けて、ホワイトボードに書き出す。なければ巨大なクリップボード(いつも持ち歩いている)に絵を書き始める、「問題はこういう構図なのかなぁ?」といいながら。そして、「まずいところ」をギザギザ型にして、見せる。すると、どんなに逃げ回ってる奴でも、必ず見てくれる。

 「わたし v.s. あなた」の対決になるとどうしても感情的になってしまう。「攻撃 v.s. 防御」か、あるいは攻撃は最大の防御とばかりに、問題の押し付け合いになる。たがいに、「問題は相手が持っている」とみなすわけだ。

 これを回避する魔法の道具がホワイトボード。

    (問題)わたし   →→→ × ←←←   あなた(問題)

相手の向こう側に「問題」があるので、相手を口撃してしまうのが、ホワイトボードに書き出すことで、

    ホワイトボード(問題)  ←←←←← 「わたし and あなた」

アート・オブ・プロジェクトマネジメントに化ける。嘘だと思う方は、騙されたと思ってお試しあれ。火事場プロジェクトに落下傘部隊よろしく降下するとき、必ずこのやり方を使っている。だから、配属されて真っ先にする作業は、「ホワイトボードを確保して、自席の近くへ持ってくる」だね。(このへんの話は、アート・オブ・プロジェクトマネジメント」読書感想文に書いた)

 余談になるが、火を噴くプロジェクトは必ずといっていいほど、ホワイトボードがない。(あっても使っておらず、古い情報が消されずに残っている)。だから、配属された2番目の仕事は、「パリパリに乾いたインク跡を、丁寧に消す」やね。

■03 「問題」を持って、歩き回る

 「アジャイルレトロスペクティブズ」では、みんなが一緒の部屋で「ふりかえり」をしている。これも、あまり馴染みがない。みんないるところで、どんどん意見が出るものだろうか? 「アジャイル…」では、そうさせる仕掛けが紹介されているが、わたしのやり方は「問題を持って歩く」につきる。

 上の「■02 わたしたち v.s. 問題」で見える化したクリップボードを持って、ホットな人に会いに行く。メールも電話も×。直接会って「これについて、あなたの考えを伺いたいのですが、お時間をいただけますか」とお願いする。

 ポイントは、「これについてなんですけど…」と言いながら、問題の絵を見せるところ。チラっとでも見たらこっちの勝ち(人は字を読まないけれど、マンガは必ず見てしまう)。ホントに忙しかったら、空いている時を確保してくれるはず。しかも、人は「教えてください」に弱いもの。

 話が聞けたら、赤ペンでその「問題の絵」に書き足す。自分の意見が重視されるのは気持ちがいい。これを、チーム全員分する。わたしの場合、せいぜい5~6人のチームなのでこのやり方が可能だが、もっと大人数だったらどうしようかなぁ。

■04 人を集める

 ここまで下ごしらえした上で、メンバーを集める。全員分の意見・アイディアは書き出され、「○○というのがあなたのアイディアで合ってる? 足りないトコない?」という聞き方で進めるつもりで。

 開口一番は「○○の問題を解決するために、この場を設けました」で始め、かつホワイトボードにでっかく問題文(目的)を書いておく。また、全員の意見が書いてある「問題のマンガ」があるから、しゃべりすぎの奴にキッパリ「ちょっと黙って(ろこのタコ!)」と言える(丸カッコ内は心の中)。

■05 よい質問

 心がけている問いかけは、以下のとおり。

  • いま取り組んでいるのは、どんな問題なのかな
  • その問題が解決するとはつまり、○○ということになればOKなんだよね
  • 「○○になった」のは、どうやったら分かる?
  • それはいつ分かる?
  • それは誰が分かる?
  • あるいは、わたしが分かるためにはどうすればいい?
 ポイントは、問題を言い替え・分解すること。一言で「問題の対処」とはいっても、「原因を特定し、直す」ことと、「もう二度と発生させないようにする」ことと、「起きても無効化する」ことは、それぞれ分けて問いかける。超重要なのは次の二つ、
  • 他にない?
  • むかし、似たようなことがなかったっけ?
 この質問にどれだけ救われたことか。複数のインタフェースに跨るバグや、チームを横断する作業プロセスの改善は、似た事例が必ずあった。見たこともないような問題が立ちふさがり、スーパーな人があっという間に解決するのは例外で、でかい問題は昔から根を張っており、時間をかけて解きほぐす必要があるもの。

■06 お菓子は、重要なのかもしれない

 昔は、机の引出しにお菓子を常備している奴をバカにしたものだが、なかなかどうして、これは使える。議論が白熱してきたとき、お菓子(キットカットや一口チョコ、アメ)を出して、休憩にする。

 これはわたしの経験則なんだけど、一緒にモノを食べてると、敵じゃないという気になれる。なぜか説明できないが、食べながら話しをすると生産的になれる。口に甘いモノを入れていると、相手に寛容になれる。少なくとも喰ってる間は黙ってるし。

 昔は、赤ちょうちんで一杯やりながら同僚と「この仕事のやり方ではダメだダメだ」とサラリーマン模範生のようにクダ巻いてられたが、一杯やってるヒマすらない。そんなとき、この小道具は使える。

自分の小さな「箱」から脱出する方法■07 Getting out of the Box

 「ふりかえり」の際、一番陥りがちなのが、お互いが「箱」に入ってしまうこと。

 だから、まずわたしが、「箱」を意識して、その外に出ていること。「自己正当化の正当化」の罠にハマらないこと。自己欺瞞→自己正当化→防御の構え→他者の攻撃→他者のモノ化のルートに陥らないこと。

 メンバーを感情的な目で見るとき、どうしても「問題に対する自己防衛本能」が働き、その結果、相手の言動をそのまま受け取れなくなる。真意の底に悪意を探し始める。いわゆる「箱の中に入る」やね。

 その「箱」を意識することで、無効化させる。大丈夫、燃えるプロジェクトが飛び火して火だるまになっても、うんこプロジェクトの残糞を舐めとらされたりしても、死ぬわけではない。罵倒されようが無能呼ばわりされようが、構えない。

 なぜなら、わたしは、問題を解決するために、ここにいるのだから。

――「箱」って何のこっちゃ、という方は「自分の小さな「箱」から脱出する方法」を激しくオススメ(レビューは[箱1][箱2]

 以上が、わたしの「ふりかえり」のふりかえり。緊急度が比較的低く、チームで根気よく取り組む問題は、こんな風にやっている。もっと緊急度が高いトラブル(パターン青!使徒です!)の場合は、「最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか」で5原則を説明してある。

  • 原則1 : 情報を集める場所と、判断する場所を、物理的に分ける
  • 原則2 : 重大な問題が発生したとき、メンバーをどのタイミングで休ませるか? を最初に考える
  • 原則3 : トラブルの原因を探す/被害を最小限する/プロジェクト目標へ軌道を戻す目的を分ける
  • 原則4 : 「外の目」を取り入れる
  • 原則5 : 現場を責めるな!
 成果物に出る「問題」と、作業プロセスに生じた「問題」を混ぜて書いてしまったが、両者を分けられない。プロジェクト・メンバーの士気と、「ていどひくい」バグの発生率は、かなりの相関関係があると思うぞ、測ったことないけど。

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