プロジェクトは冒険だ!「仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本」
プロジェクトを「まわす」にあたり、本当に必要な内容だけを吟味してまとめてある。ある意味、いさぎよい。頁数を水増し→煽り文を追加→ハードカバーにして、2倍の値段で売っているそこらのビジネス本と180度違う。テクニックよりも心得を重視しており、トム・ピーターズのように読んだ側からソノ気にさせる。
プロジェクトは冒険だ、そして、キミは勇者だ。王さまの話を聞き、仲間を集めてパーティーを編成し、レベルアップに勤しみ、最高のクリアを目指す――なんのことはない、昔っからゲーム相手にしてきたことと一緒。
あのときの「ワクワク感覚」そのままに、プロジェクトの現場を捉えなおしてくれる。この視点はありそでなかった。いちいち激しく頷きながら読む。
本書のエッセンスは、デマルコの「マネジメントの4つの本質」に尽きる。「デットライン」に、こうある。
- 適切な人材を雇用する
- その人材を適所にあてはめる
- 人びとの士気を保つ
- チームの結束を強め、維持する
このマネジメントのキモを、ロールプレイングゲームになぞらえて説明してくれる。チームビルディングや企画・要件定義フェーズで使えるネタが盛りだくさん。
- セールスポイント「話題キー」は盛り上げのパラメータとして有効
- アイディアを「出す&&回す」ための正のフィードバックループ
- 出たい人だけミーティング!(アイディア出しの場と意思疎通の場を厳密に分ける。わかっちゃいるけど破壊屋は締め出せない)
- 求心力を増す「ホットミーティング」(わたしもやってきたが、確かに効能ある)
- 人を使うのではなく、キャラを出す→「メンバーマトリクス+キャラクターシート」
- インタビューをしよう!(←これはイイ!もの凄く感謝)
- 自分が「イエスアンド」する技術 ――提案を意識した返答
- 相手に「イエスアンド」させる技術 ――相談を持ちかける
- 「生きている問題」に取り組み、「死んでいる問題」は捨てる(今やっているのは、勉強か、勉強の準備なのか見極める)
- プロジェクトを右往左往させないための合言葉「コンセプトフレーズ」
実際のところ、本文よりも脚注の方がネタ満載で面白かった。どちらかというと、本文はスタンダードな物言い、脚注でゲーム色が濃いネタを広げている。
例えば、ゲームのアイディア出しの脚注で、「動詞」から発想する例が挙げられている。パックマンは「食べかけのピザ」→「食べる」だし、リブルラブルの「バシシ!」は大混みのディスコで邪魔なお客を「囲んで」追い出すという発想というわけ。このやり方、自分でもやってみたくなる。
さらに、ハラ抱えて笑ったのが「進捗率90%の謎」。ファミ通や電撃で「期待の大型RPG」として紹介されたものの、ある時期より進捗率が90%から動かなくなることを指している。「グ○ンデ○アII」とか「シ○ンムー」を思い出して腹筋が痛い痛い …いや、笑っちゃダメなんだけどね。
最後に、米光さまへ。献本ありがとうございます。わたくし、本は持たない主義ですが、本書は繰り返し使わせていただきます ―― というか、若手のために買いました。リーダーではない時代に読んでおいて、いざその立場になったら思い出すようにさせたいですな。

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