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親になったら読むべき3冊

 敬愛するまなめさんから[御依頼]がッ、テーマ自由で3冊レビューせよという[企画]とのこと…ラジャー。「読むだけでモテる3冊」や「自慰の回数が確実に変わる3冊」あたりが浮かんだが、ここはひとつ、マジメに「親になったら読むべき3冊」でご紹介。

 子どもを育てる最終目的は「わが子を大人にすること」。それ以上も以下もない。自立し、自律できる「大人の男」あるいは「大人の女」になり、自分の人生を生きてもらうこと。そのために、きっと役に立つ3冊を選んでみた。

子どもへのまなざし(佐々木正美)

子どもへのまなざし 鉄板。特に男親は読め(強調)。子育てで悩んだり、苦しい思いをしたりすることは、必ずある。そのときに、この書名を思い出してほしい。本を読むことで、つらさや心配を消すことはできないが、苦悩する自分を丸ごと肯定してくれるだろう。

 どのように子どもと接するかのハウツー本ではない。そんなものは巷に溢れている。これは、親をやっていくための、根っこの考え方が伝わってくる。親として人生を生きていく「覚悟」のようなものが腹に落ちてくる。

 人間として生きていく上で最も大切なことは、信じることだ。自分を信じること。他人を信じること。社会を信じること。心の根っこのところでこれがあるのと無いのとではまるっきり違う。自分すら信じられなくなったら、おしまいだね。そして、親が子どもにあげられるもので最も大切なものは、「信頼」だ。それはどうやって育まれるのか?

 赤ちゃんは自分でオムツが替えられない。食事も着替えも、身の回り一切ができない。だから泣く。親がくる。世話をしてくれる。機嫌が悪い。だから泣く。親がくる。あやしてくれる。繰り返す「泣く」→「来る」→「面倒みてくれる」のサイクルの中で、赤ちゃんは学習する。「泣いたら誰かが来てくれる」と。これが親を信じることの基礎となり、親を信じることを通じて自分や他人を信じることができるようになる。

 では、放っておかれる赤ちゃんはどうなるか? 一部の育児誌で「夜泣きがひどいようなら、放っておいてもかまいません」などとある。根気よく泣き続けても、いずれは泣きつかれて眠ることになる。これが毎晩繰り返されれば、いずれ泣かなくなるだろう。だが、「泣いても誰も来てくれない」サイクルが繰り返されると、赤ちゃんは「あきらめる」ことを覚えるのだ。「泣いても無駄なのだ」と。AM3:00 泣き喚く赤ん坊をあやしながら、朦朧とした頭でこの箇所を何度も読んだ。

 読まずに済まそうとする横着者のために、本書のエッセンスを凝縮した一節を紹介する。

子どもは親を見て学ぶ。「幸せ」を学ぶ為には、親が幸せになっていないと、子どもには何が幸せなのか分かりません。

だから、まずお母さんが幸せになって下さい。お母さんが幸せでないのなら、子どもはどうやって「幸せ」を知ることができるでしょうか。事情により幸せな感情を持ちにくいようでしたら、せめて、子どもと接するときはゆとりをもって安らいでいられるようにしてください。旦那さんをはじめとするご家族は、このことを胸において、お母さんをサポートしてあげてください。

 子どもを宿す、大きくする、産む、育てる。ものすごいことだ。男親ができないことは、母親を全力でサポートする。それこそ身を粉にして、嫁子のためにがんばる。あたりまえなんだけれど、それを沁みこませてくれる。親である勇気がもらえる一冊。

「親力」で決まる ! 子供を伸ばすために親にできること(親野智可等)
「親力」で決まる ―― とはいうものの、根本だけしっかり押さえておけばいいかというと、心配なのが親だもの。「木の上に立って見ている」のが「親」だとしみじみと思う。そんな気持ちに付け込んで、それこそ山のように「親本」が出ている。育児誌、教育サイト、育児ブログ… 情報収集だけで終わってしまうだろう。

 だからこそ、最初の原則「子育ての目的は、わが子を大人にすること」に則って選んでいくと、これに落ち着く。なんといっても、本書の本質はズバリ「まず親自身が育て!子はそれを見て育つ」に尽きる。これまでの育児本は「子どもを伸ばす方法」だったが、本書は反対に「親としてのチカラ=親力をつける」ことを主眼としている

 もちろん、テクニカルなTipsが沢山ある。例えば「歴史マンガに親しませろ」とか「テレビのそばに地図帳を置け」といったやつだ。しかし、それは「まず親が歴史に親しめ」「親がニュースの地名を地図帳で調べろ」という著者のメッセージの裏返しなんだ。

 親が変われば、子は変わる。子どもに対してなんとかしたい点があるのなら、それは親が変わるポイントなんだ。「子は親の鑑」を実践で示してくれる一冊。類書不要というか、本書を実行するだけでもかなりのボリュームなので、一冊で充分。

 本書は究極のハウツー本を装っているため、もともとは「子どもをなんとかする」目的で親は手するはず。ところが、読み進むにつれ、「親の心を入れ替える」ことになり、つまるところ、親から子へ伝染するという仕掛け。

ドラゴン桜(三田紀房)

ドラゴン桜 日本の親レベルの底上げが図られたと断言できるマンガ。念を押すが、「子ども」ではなく、「親」の方だ。「オチコボレを一年間で東大に」という分かりやすくもスリリング(?)なテーマで引っ張ってきて、はや4年。モーニング連載ではようやく最終ステージ(二次試験)に到達している。

 ポジティブシンキング、ロジカルシンキング、マインドマップ… といったノウハウだけでなく、「親/教師としてどうあるべき?」的な問答は、読者に子どもがいようといまいと、「親力」に響いてくる。「子どもを東大に入れるために」は、そんなに重要ではない(ただの惹句)。むしろ、「どうすれば子どもが自分から取り組みだすか」の方が肝心だったりする。取り組み先は、生徒のときは勉強かもしれないが、大人になったら別のものになる。したり顔のオトナは「今の勉強の努力は将来かならず役に立つ」と言うが、本書は「役に立つ努力」にするためのマニュアル本だろう

 「ブラックジャック読んで医者になれました」が冗談でないように、「ドラゴン桜読んで東大合格しました」が出てくるかもしれない。純粋に受験対策だけのエッセンスなら、この受験本をオススメする→「キミにもできるスーパーエリートの受験術」[参考]。「わが子を東大に」というよりも、放っておいても自分で学んでいけるような子になってほしい。そのために、まずわたしが学ばなくちゃ、ね。

■関連エントリ

 3冊と銘打ったが、沢山ある。関連エントリをおさらい。新聞を開くと、親の苦労を知らない人がニッポンの教育云々を語っている。お寒いやつらだ。こういう連中に翻弄されないような大人にするのが、わたしの「親としての」目的なのかもな。

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コメント

自慰の回数が確実に変わる3冊がヒジョーに気になります。
簡単にでもいいのでぜひ紹介してください!

投稿: konai | 2007.05.04 08:13

>> konai さん

関谷あさみとClone人間と「少女セクト」になるでしょうか… 昔モノでもいいなら、「森の妖精の話」や森山塔とか。

ちゃんとしたレビューなら、↓あたりがオススメです

ロリ漫画を淡々と評価するブログ
http://lolicomi.blog85.fc2.com/

ロリ以外のエロ漫画も淡々と評価するブログ
http://lolicomi0.blog93.fc2.com/

投稿: Dain | 2007.05.09 00:13

ありがとうございましたっ!どれも絵がきれいで凄そうです。片っ端から読んでいきます!

投稿: konai | 2007.05.09 06:16

3冊とも素晴らしい本です。

でも、そうやって育てちゃダメって政府が命令してるんだもん。

拘束9+残業4+睡眠8+通勤2=23時間。
残業は政府の大推奨する「みなし労働」で最小でも2時間が不払い奴隷。
労働者が無知な会社なら5時間以上でも不払いOK。
朝食、着替え、夕食、風呂、育児、しつけは1時間で済ませないといけない。

私も放置されて育った世代だけど、だからこそ別に赤ん坊が泣いてるのを放置しても罪悪感無いですー。
そんなの当たり前でしょって感じ。

虐められて自殺しようと思ったけど、親にだけは相談しなかったです。
だって、残業残業で顔を合わせない他人だしー。
他人に何を話しても無駄でしょー?

だからなのか、親の世代になった今も、子供に対して全く何も感じませんねー。
欲しいとも思わないし、国がお金を援助してくれても全然欲しくないしー。
だって、他人になるってわかってるんだもんー。そう育てられたから。

諦めるのを覚えるように育てられたから、特に残業奴隷制度に反発もしませんー。
その代わり、ニートでも自由に伸び伸びと生活させて下さいー。
生まれてから、子供が苦しい時や悩んでる時に残業残業で放置してきたんですから、
今度はそうやって育てられた私たちがニートとして強制放置させて復讐する番なんですー。

投稿:   | 2007.05.16 13:29

>> 名無しさん

そうですか
死なない程度に折り合いをつけていきたいですね

投稿: Dain | 2007.05.17 22:43

「読むだけでモテる3冊」の企画も是非お願いします!

投稿: K | 2019.07.18 18:08

>> Kさん

「読むだけでモテる3冊」<<それは私も知りたいwww リアルみを考えて選ぶとフェミニズム十字砲火を食らいそうです。

投稿: Dain | 2019.07.20 08:22

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