ささやかな物語のチカラを感じる「キノの旅」
夢中になって「おはなし」だけを味わう30分、こういうの好きよ。
バイクで旅をするキノの物語。各話はとても短く、一話に一つ寓意が込められている。読みきりショートというよりも、拡張させるようなネタで勝負してこないつもりだな。おかげで、読み手は、どの巻のどの話から読んでもよいような仕掛けになっている。
小説の世界と、そいつを読んでいる自分がいる場所を比べることで、「今」「ここ」を相対化できる。共感しつつ「おはなし」にのめりこみ、いっぽうで「キノ」の行動に違和感を抱くわけ。
「キノ」が走る路は、レトロな雰囲気漂う懐かしい世界なのよ、んでもって、かかわる人々は「どっかで聞いたことがある世界」の典型なんだ。さらにもって、「キノと世界とのかかわり方」が、その国で巻き込まれる事件を通じて、少しずつ読み手に分かるように書いてある。
あいまいな言い方をしてすまぬ。ネタバレは反転で。
キャラとテクノロジーは異なれど、銀河鉄道999に乗った星野鉄郎の旅と、行く先々で出会う人とのかかわりを激しく思い出す。第六話「平和な国」なんて、いつ「惑星エル・アラメイン」になるかヒヤヒヤしながら読んだ―― 幸いにも(?)、もっとブラックなオチになったのだが…
本書を絶賛している人には、おそらく著者が愛読しているものと思われる、星新一のショートショートをオススメする。「キノ」世代は、おそらく読んでないだろう。そして、夢中になれることを請合おう。

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コメント
ショートショートみたいなテンポとはキノは違うかも。
ショートショートはタンタンタン・・・といくのに対し
キノはタン、タカタカタタン♪と途中でリズムを挟んでいる感じ
だと思う。
ただ、ショートショートは数があるのでその中にはキノと同調する
物語りもある。でもショートショートといえばタンタンタン・・・と
進んでいくものと勝手に定義してしまっているw
頭の大きなロボットなんて特に。
投稿: KokoGD | 2007.04.07 23:29
>> KokoGD さん
ああ、確かにテンポは異なりますね
キノの旅の方がリズムを見出しやすく、その結果、オチも見当しやすいですね
ショートショートというよりは、オーソドックスに短編集、しかもO.ヘンリーなやつなのでしょうか
投稿: Dain | 2007.04.11 00:04