涼宮ハルヒの絶望
「絶望系 閉じられた世界」を読む。うわーなにコレ、すごくいいじゃないか。「ハルヒ」書いた人とは思えん。小説としての「ハルヒ」の出来はアレだけれど、これは良作、なんってたって、「この超展開、どうなるんじゃぁっ」と(ラストを予感しながらも)ページを繰る手が止まらなくなったから。
ラノベとハーレクインの読者はまさに「物語の消費者」といえる。期待するキャラやストーリーを効率よく吸収するためにページをめくる。けど、これ、ラノベか? 表紙や序盤の「不思議ちゃん+萌エロ」を期待して読むと、ラノベというフォーマットを突き破って唐突に残虐化する鬱展開に仰天するかも。移入すると心が痛い痛い。
またラノベっぽくないのが話し手。ラノベにおける状況説明は、エロゲ並みのモノローグで語られることが多い(キョンの長台詞が典型)。これは心地よいときもあれば鼻につくこともある。その"弱点"を、本書では実にスマートに回避している→サブキャラを狂言回しにすることで、エロゲの主役なる人物を「語られる側」に追いやる。
しかも話者を固定せず、サブキャラ→メインキャラ→神の目と、自由に視点が行来しているので、ダレることなく読める。狙ってやっているとするならば稚拙感あふれるが、これはおそらく書き手が欲求に従ったまでだと思う←その欲求は正しい。
わたしの場合、こいつを劇薬小説として紹介されたので、それなりに構えて読んだが、ああ、確かに劇薬かも。「谷川+のいぢ」でハルヒのつもりで読むと地雷なので要注意。ハルヒが壮大なトートロジーなら、本書は絶望というシステムの話やね。あとmizunotoriさんちのランキング[参照]によると、ラノベ三大奇書でダントツ一位。
1 絶望系 閉じられた世界(谷川流) ←劇薬小説でもある
2 ミッションスクール(田中哲弥) ←わたしのレビューは[これ]
3 食前絶後(ろくごまるに) ←未読・興味津々
ハルヒとは真逆の、ネガ/ポジにしたような少女がでてくる。謎多き引きこもりの美少女、というレッテル貼って安心して読み進めていくと、自己言及のぐるぐる回しの果てに、結局ハルヒと同じような行動をしていることに気づいてガクゼンとする。これを書き手の想像力の限界とくさすのはたやすいが、素直にわたしは涼宮ハルヒの絶望のお話だと読み替えた。
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コメント
「私はキ〇ガイです」って人は面白いと感じるかもしれない。谷川氏の代表作のハルヒは小説として完成度も高く素晴らしいがこれの出来はかなり酷い。同人誌でやって欲しい内容。
この作品は小説としての出来はアレだがハルヒは面白い
投稿: | 2011.03.18 19:25
>>名無しさん@2011.03.18 19:25
そうですか、そんなに「酷い出来」でしたか。
これが「酷い出来」でハルヒが「素晴らしい完成度」という"大きな差"は、残念ながらわたしは気づきませんでした。
投稿: Dain | 2011.03.19 07:16
絶望系 閉じられた世界
読まれてましたか。
実は自分がハルヒで著者様のファンになり、
心に重いダメージを受けた作品でした。
誰も救われないし、誰も報われない話
最も自分が震えたのが
「永遠に同じ人物として生まれ、育ち、そして殺される」
このエピソード
ひっくりかえりそうになったのがこの劇薬です。
投稿: 間宮亮 | 2011.10.27 22:58
>>間宮亮さん
コメントありがとうございます。
実は、「自分」で居続けるのに飽きはじめているのも事実です。寿命があるから、あとン十年は我慢できそうですが…
だから、「自分」をリピートするのは、最大の罰になりそうですね。
投稿: Dain | 2011.10.28 00:12