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志村、後ろ後ろ!「ロウフィールド館の惨劇」

Roufirudo
 「読後感サイアクの小説を教えてください」でオススメいただいた「ロウフィールド館の惨劇」を読む。

 このテの小説を紹介するとき気を使うのが、ネタバレ。肝心なトコを明かさないように、かつ、興味を持っていただくように書いているが、本書はその心配が一切いらない。

 なぜなら、冒頭で全てを明かしているから。

 最初の2ページで殺人の動機、殺害方法、犠牲者、共犯者を記している。思わず「刑事コロンボ」を思い出す。こんなにバラしちゃってもいいのかしらん、という心配をよそに、作者は自信満々だ。ちなみに、こう始まっている。

ユーニス・パーチマンがカヴァディル一家を殺したのは、読み書きが出来なかったためである

 では、分かってしまって面白くないのかというと、全く違う。むしろ、なぜ「読み書きができない」ことが一家惨殺になるのかを問いかけながら、ひきずり込まれるように読む。

 わたしの「問いかけ」が分かるのか、作者は節々で応えてくれる。上手いんだ、これが。「もし、○○だったなら、惨劇は起こらずにすんだであろう」なんて思わせぶりな書き方をしてくる。

 この思わせぶり、トマス・H・クックを思い出す方なんていらっしゃるかと。しかし、クックは、種明かしをファイナルストライクのお楽しみにとっておく作家なので、フラストレーションが違うね。

 さらに、一家を皆殺しにする家政婦、ユーニスがすごい。外見は冷たいオールドミス、中身は怪物。人倫を解さないのはモンスターたる所以なんだけど、その出来上がり方が違和感なく読めてしまう(←読後怖いと思ったのは、ここ)。

 このキャラ、「ミザリー」で"足なえ"を実行したアニーや、「黒い家」で○○をビニール袋で持ってきた幸子を思い出すね… 心の基本的な何かを最初から持ち合わせていないような…

 倒叙ものの傑作だな、と思いなつつ、ラストの惨劇に向かってまっしぐらに読み進んでいく―― が、ちょっと待て。「その後」があるぞ―― でもって、惨劇後の方が興味深い。彼女が警部にチョコレートケーキを振舞った直後の場面なんて、焼き付くように"見えた"。

 …というわけで、美味しく読ませていただきやした。「読後感サイアク」なのは、彼女のキャラと救いようの無いラストを指していたんでしょうな。

 劇薬小説ベスト5を読める方なら、無問題。楽しんで(?)読めるナリ。

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