赤ちゃん売ります「ベビービジネス」そこに市場がある限り
- 健康なグアテマラの子 $25,000
- 代理母との契約 $59,000
- 一流の卵子 $50,000
- あなたの赤ちゃん priceless
お金で買えない価値が有る―― はずじゃなかったのか。
「ベビービジネス」における著者の主張はこうだ ――「赤ちゃん市場はそこにある。まず第一に、その事実に目を向けろ。次に、市場であるにもかかわらず野放し状態となっていることを理解せよ。最後に、この市場は、市場として歪んだ状態であるからして、政府の規制が必要であることに気づけ」―― そいつを裏付けるための事実を徹底的に報告してくれる。
- 遺伝的に劣位な胚を除外する生殖補助サービス
- 「あなたに似た人」をカタログ販売する、国際養子縁組業者
- キャリアを優先し、妊娠可能時期を逃した人が、大金で代理母を求める
- 肌・目・髪の色や遺伝特質を予めセットアップされた、「デザイナーベビー」
- 不妊治療に失敗→養子縁組でゲット(不妊治療+養子縁組の相互補完)
- 難病の我が子の治療に必要な髄液のため、生物学的に同じ「子」をつくる
- フランシス・フクヤマが描いた人類の二つの亜種、gene rich と gene poor
上に示した現状と未来は、嫌悪感をもよおすかもしれない。赤ちゃんを作る試みは道徳的なジレンマの最も激しい深いところにふれるため、政府を始めとして、マスゴミ連中も実情を看過するか、単なる学術研究の規制として扱ってきたからだ(韓国のクローン胚研究成果の改ざんは記憶に新しいが、学術研究にとどまる。いっぽう子宮を失った娘のために50代の母が代理出産した日本の例は、決して、研究ではない)。
そうではなく、ビジネスとしてここまで育っていることを知って、嫌悪というよりも素直にビックリした。例えば、アメリカの市場規模は、以下の数字から推し量ることができるだろう(2001~2003年のリサーチデータ、本書より引用)。
- 体外受精41,000人
- 提供卵子から生まれた子ども6,000人
- 代理母によって生まれた子ども600人
- 海外養子縁組21,616人
金に糸目をつけず、子を切実に求める需要がある限り、そして、それを供給できる医療技術やサービスがある限り、市場は成立する。テクノロジーの恩恵は医療のみならず、国際養子縁組にも波及する(ひとつの例として、RainbowKidsがある。あなたにピッタリの子どもをネットで簡単検索。養子一覧を見てるさっきからイロイロな意味で涙がとまらない)。
確かに法で縛る国もある。しかし、市場にとってみれば、それは「規制の厳しいところとゆるいところがある」ことに過ぎない。子どもが欲しくても得られない人は、規制の無い国や州へ「旅行」をするだけだ。法外な料金のかかる旅行から帰ってくるとき、「親」になっているという寸法だ。
人として、親として、子どもを経済的なモノと見なすことはできない。子どもはお金ではなく、愛の賜物であり、どんな市場の影響も及ばないところにある、文字通り priceless なものだ―― そういう主張は、ここ30年ほどの間に、生殖医療の発達によって支えられてきた赤ちゃん市場の現実に圧倒されるだろう。
止められない流れとなっていることが、こわい。既成事実は、わたしの想像よりもずっと先にあった。亡くした子どもの代わりにつくられた、生物学的に同一の赤ちゃんをのことをレプリカントと呼ぶのはやめてくれ、と思った。
日本の実情は、「赤ちゃんの値段」で知ったつもりでいるが、日本はまだまだ遅れてるなぁ、と安心するやら不安になるやら。「赤ちゃんの値段」によると、かつては韓国、今は中国が輸出大国だそうな。棄児といって、身元が完全に分からない子どもが人気で、大きくなっても実親を探そうとしないからだという。
"Do Androids Dream of Electric Sheep?"や"Never Let Me Go"は、Science Non Fiction になろうとしているのか。あるいは、マイクル・クライトン御大や、ロビン・クック大先生のご登場といったところだが、事実は小説を大きく引き離して、もう見えないところまで行ってしまっている。
だけど、どっちへ向かおうとしてるんだ?
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